「妻子を置いて出て行け!」と義父に一喝された「マスオさん」…退去しないとダメ?

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2016年03月26日 08:22  弁護士ドットコム

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結婚相手の親族との「同居」をめぐるトラブルは、何も「嫁と姑」に限った話ではありません。妻の実家で義父母と同居している、「サザエさん」でいうところの「マスオさん」状態の男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みを寄せました。


「先日、ささいなことで妻と口論になり、つい声を荒げてしまいました。その様子を義父に見られ、『妻子を置いて家から出て行け!』と怒鳴られたんです。たしかに、この家は義父の持ち物ですが、夫婦喧嘩くらいで出て行けと言われることに納得できません」


相談者は、義父の言う通り、妻の実家を出て行く必要はあるのでしょうか。石川和弘弁護士に詳細な解説をしていただきました。


A. 退去命令に必ずしも従う必要はないが、夫婦の関係が破たんしている場合は別


結論から言うとご相談者は、義父に「家を出て行け」と言われたからといって、必ずしも従う必要はありません。  


ご相談者は妻の実家に住んでいるということですから、家の所有者は義父だと仮定します。その場合、入居した際に、義父(貸主)とご相談者(借主)との間で、家について「使用賃借契約」が成立していたと考えられます。  


「使用賃借契約」は、家賃を払ってアパートなどを借りる「賃貸借契約」とは異なり、「無償」で建物を借りることです。親子や兄弟、友人などとの間で、お互いの信頼関係にもとづいて結ばれることが多いですね。ご相談者は義父の家に無償で住まわせてもらっていたと思われ、「使用賃借契約」が結ばれていたと考えられます。  


では、この「使用賃借契約」にもとづいて、義父はご相談者に対して「家を出て行け」と言う権利があるのかというと、そうは言いきれません。「使用賃借契約」が成立して、無償で建物を貸していた場合でも、貸主が借主に、いつでも「貸したものを返せ」と求められるわけではありません。義父はご相談者に対して、「今すぐ出て行け」と、一方的に退去を命じられる立場にはないといえます。  


ただし、退去を命じられる場合もあります。一つは、貸し借りの当事者間で、「返還する時期」を決めていた場合です。法律ではそのような場合も想定して、貸し借りしたものの「使用の目的」を定めていた場合には、その目的にそった使用が終わった時点で、返還をしなければならないと定められています。  


今回のケースでいえば、相談者は、結婚を機に、義父宅での同居を始めています。目的は、夫婦で一緒に暮らすためでしょう。  


夫婦には、「同居する義務」があると法律で定められていますので、「別居」はこの義務に反する行為です。また、離婚を決めるなど「婚姻関係が破たんした」と言える状態であれば、「夫婦で一緒に暮らすため」という家の使用目的が終了しているといえます。そのような場合、家の貸主である義父は、借主であるご相談者に返還つまり退去を命じられるということです。  


しかし、ご相談者のケースは、「ささいなことで口論になった」ということですから、夫婦間に一時的な不和が生じているに過ぎないようです。ご相談者と妻の婚姻関係が破たんしているといえない場合、義父がご相談者に対して、家からの退去を命じることはできないと考えられます。




【取材協力弁護士】
石川 和弘(いしかわ・かずひろ)弁護士
平成9年弁護士登録。主たる取扱い分野は、建築、不動産、交通事故、相続。モットーは、「分かりやすい説明と迅速な対応」
事務所名:弁護士法人札幌・石川法律事務所
事務所URL:http://ishikawa-lo.com/


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