BABYMETALの世界的“熱狂”はどこまで広がる? 新作『METAL RESISTANCE』までの歩みから読む

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2016年04月08日 18:22  リアルサウンド

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BABYMETAL『METAL RESISTANCE』

 日本で生まれ、スタートしたBABYMETALの活動。やがてそのボーカルと合いの手、ダンス、そして、“神々”の奏でる音色は海外へと波及して、国境で隔てられた、各国の音楽的嗜好という固定観念すら打ち破らんばかりに、多くの人びとを熱狂の渦に巻き込みはじめた。


(参考:BABYMETALのライブアルバムを比較 彼女たちのパフォーマンスはどう進化した?


 今月2日(日本時間3日早朝)に行われた2016年の初陣、イギリス・SSEアリーナ・ウェンブリー(ウェンブリー・アリーナ)での単独公演はまさにその象徴だった。会場内を埋め尽くしたのは1万2000人の観衆。アリーナ席からスタンド席にいたるまで、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツをはじめ、枚挙にいとまがないほどの国旗が場内で揺れる光景には、日本でライブ・ビューイングを観ていた筆者も、涙を抑えきれなかった。


 “メタルレジスタンス第4章”として、本格的に世界の舞台へと歩み始めたBABYMETAL。今回の“初陣”とともに、その第一歩を象徴するのは、今月1日に世界同時発売された2ndアルバム『METAL RESISTANCE』だ。前作『BABYMETAL』は「1stにしてベスト盤」と評される。しかし、BABYMETALはその評価に甘んじることなく、元来あるメタルの様式美や伝統を踏襲していた前作の世界観から一変、今作は新たなメタルを構築するという決意ともとれる“冒険心”や“チャレンジング・スピリット”が如実に垣間みえる、さらに刺激的な一枚となった。


 ファンの視点からみれば、アルバムはユニットの現在と将来像をひも解く糸口にもなりうる。では、最新作で示されたBABYMETALの今と未来とは何か。前作からの活動を振り返りながら、その意義を考察していく。


 BABYMETALの活動はいくつかの局面に分けられる。2014年2月26日発売した前作『BABYMETAL』は、主にその”第2章”を象徴するものであった。


 当時、すでにリリースされていたメジャーデビューシングル『イジメ、ダメ、ゼッタイ』をはじめとする全13曲の構成。新規収録曲の一部、SU-METALのソロ曲「悪夢の輪舞曲(ロンド)」、YUIMETALとMOAMETALによるBLACK BABYMETALの「4の歌」がライブで初披露されたのは、2014年3月1日、自身初となる武道館公演2daysの初日『赤い夜 LEGEND “巨大コルセット祭り” 〜天下一メタル武道会〜』だった。


 初日のテーマに「ノンストップでアルバムを見せつける」という意図があったのは、客席からも十分に感じられた。それでは、このアルバムで示されたことは何だったのか。それは、本来のボーカルとバンドという編成だけではなく、ダンスや合いの手を組み込んだオンリーワンのスタイル、また収録曲「いいね!」にあるトランスとの融合に代表される、ヘヴィメタルと他ジャンルとの調和こそが“BABYMETALというジャンル”である、という強いメッセージに他ならない。


 BABYMETALの一貫したコンセプトに“メタルレジスタンス”というキーワードがある。”3人の少女たちが真に「本物のメタル」と向き合う”という命題、そして、かねてより掲げていた「世界征服」という野望は、1stアルバムの発売により、早くも具現化しはじめた。


 2014年3月2日開催の武道館公演の2日目『黒い夜 LEGEND“DOOMS DAY” 〜召喚の儀〜』では、“武者修行”と題した欧州ツアー決定を発表。1stアルバムの発売以前からYouTube上にアップされていた公式PVへの反響、そして、武道館公演後の3月13日にはイギリスの大衆紙『ガーディアン』のコーナー「MUSIC BLOG」でメタルファンである記者がBABYMETALへ言及するなど、振り返れば、現在の躍進につながる予兆はあった。


 そして、この年の夏。2014年7月1日のフランスを皮切りにした『BABYMETAL WORLD TOUR 2014』から、BABYMETALはその活動の軸を世界へ移すことになる。単独公演はもちろん、海外のプロモーターから招聘される形で大規模ロックフェスにも出演。国内メディアの関心を強く惹きつけるきっかけとなったレディー・ガガの世界ツアー『アートレイブ:ザ・アートポップ・ボール』のオープニングアクトとして帯同したのも、この年の7月末から8月にかけてのことである。


 ただ、BABYMETALが世界へと軸足を置き始めた2014年の当時、賞賛の声が高まる一方で、国内のファンにとっては、同時に遠く離れた地で活躍する彼女たちの姿に寂しさや切なさが感じられたのも事実である。


 その声が払拭されるきっかけとなったのは、2014年9月13日と14日行われた幕張メッセ2daysの最終日。終演間際、ナレーションにより伝えられた第3章の示唆、さらに「日出ずる国へと舞い戻る」というアナウンスに、国内ファンからは歓喜の声があがった。


 翌年、2015年1月10日のさいたまスーパーアリーナ公演『LEGEND “2015” 〜新春キツネ祭り〜』からスタートしたBABYMETALの第3章では、宣言通りに国内での活動に注力。2015年6月21日に行われた幕張メッセで行われた2万人規模のオールスタンディングライブ『BABYMETAL WORLD TOUR 2015 〜巨大天下一メタル武道会〜』では、終演間際に自身初となる全国のZeppツアーを発表し、さらに、今年9月19日開催の東京ドーム公演への最後の伏線となった、12月の横浜アリーナ2days開催も告知された。


 またこの年、ウェブで展開されているメンバーズプロジェクト「THE ONE」での限定公演が相次いで開催された。海外での単独公演やフェスへの出演、先の大規模な会場における公演を続ける一方、収容規模1500人〜3000人クラスのプレミアムライブでは、国内ファンとの距離を縮めていったのだった。


 そして、最新作となる2ndアルバム『METAL RESISTANCE』発売までに擁した期間は、じつに約26カ月である。前作からの間、アンセムとしてライブで定番になっている収録曲「Road of Resistance」や、「あわだまフィーバー」のライブ版が音源化されていたほか、曲名が公表されていない段階からライブでのみ披露されていた「KARATE」や「ヤバッ!」の収録も、ファンを喜ばせた。


 あえてすべてを公開することなく、情報を制限することで、ファンに謎解きにも似た快楽を与えるのが、BABYMETALならではの演出である。そして、本作の内容とアートワークから謎を解き明かすと、2ndアルバムにはじまった第4章からの命題――それは、これまでの活動を受けて、“暗闇に包まれたメタルの世界を照らす”ことにあるのではないか。


 『METAL RESISTANCE』の初回生産限定盤ジャケットでは、漆黒の背景に黒装束を身にまとった3人の姿、そして、対照的な金色に輝きを放つユニット名とタイトルが並ぶ。通常盤も同様にまぶしいほどに金色に輝くBABYMETALのロゴが光るが、これは、メタルの世界を知るために挑んできたこれまでの軌跡を経て、「自分たちが光をもたらすんだ」という決意に思えてならない。


 その象徴となるのが、最終曲の「THE ONE」である。新たな物語のはじまりにも、逆にひとつの物語の終焉にも捉えられるミステリアスな楽曲だが、遠く彼方へ旅立つような壮大なメロディに乗せて歌われるのは、人びとがひとつにつながる光景。メタルで「世界をひとつに」というのは、BABYMETALが掲げてきた命題でもある。事実、2016年の初陣を飾ったウェンブリー・アリーナ公演では、Zepp DiverCity Tokyoでのライブ・ビューイングの光景が現地に生中継され、まさに国境を超えてファンがひとつになった。


 誇りをもって世界へと羽ばたいたBABYMETALは、どこまでその熱狂を広げていくのだろうか。その未来はメタルの世界を司る神“キツネ様”のみぞ知るところではあるが、少なくとも、3人の少女と神バンドによるステージを求める声は、もはや日本語や英語だけでなく、世界中の多様な言語で発せられている。国内外からは、東京ドーム公演での”終焉”を危惧する声もあがっているが、メタルの世界を超高速で駆け抜けてきた彼女たちのステージに、そもそも刹那的な輝きを見出しているファンも少なくないだろう。常に、ある種の“覚悟”を胸に秘めてステージを見届けることが、BABYMETALの魅力を最大限に味わう方法かもしれない。(カネコシュウヘイ)


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  • 演奏陣が超絶だからなあ…
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