死刑囚の元組長が「過去の殺人」告白…新たに「刑罰」が科されるのか?

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2016年04月25日 11:31  弁護士ドットコム

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殺人などの罪で死刑判決が確定した元暴力団組長が、別の殺人事件に関わったこと告白したことを受けて、警視庁と神奈川県警は4月19日、神奈川県伊勢原市の山林で、捜索を始めた。


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報道によると、組長が殺害に関与したとされるのは、東京都新宿区で不動産業を営んでいた男性で、1996年8月に自宅を出たまま失踪し、家族が警察に捜索願を出していた。遺体が見つかればDNA鑑定などで身元を特定し、死因について詳しく調べる方針だ。



死刑が確定している死刑囚であっても、新たな犯罪が発覚した場合は、裁判にかけられることになるのか。もし、その裁判で有罪になった場合には、死刑との関係はどのように考えればいいのか。刑事手続に詳しい伊藤諭弁護士に聞いた。



●死刑が確定している場合、「没収」以外の刑罰は科されない


「死刑が確定していたとしても、別の犯罪に関わったことが疑われる場合、検察官はその人物を起訴することができ、裁判所は、その犯罪について有罪・無罪の判断をすることになります」



伊藤弁護士はこのように述べる。既に確定している死刑判決との関係は、どう考えればいいのか。



「今回関与を告白した殺人事件が仮に有罪だとすると、既に死刑が確定した事件の裁判の前に犯した罪ですから、『併合罪』(刑法45条後段)として扱われます。



『併合罪』というのは、簡単に言えば、複数の罪の刑罰を決めるための処理方法のひとつです。



まだ裁判を受けていない事件(今回のケースでは、元組長が告白した殺人事件)は、確定した事件(元組長が死刑判決を受けた事件)に対する『余罪』としてさらに処断される(刑法50条)ので、この件について起訴されれば、裁判員裁判により、別個に判決が言い渡されます。



もっとも、死刑判決が確定している場合には、新たな裁判でどのような刑が言い渡されても、没収以外の刑罰が執行されることはありません(刑法51条1項ただし書)。



そのため、今回のケースでも、仮に起訴されて殺人の罪で有罪判決を受けることになっても、没収以外の刑罰を受けることにはなりません」



伊藤弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。

事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/


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