「体調を維持しないと」治療目的で大麻所持の末期がん患者、裁判への執念

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2016年06月06日 18:31  弁護士ドットコム

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「今日は体調が良くない。腹水がたまってきつい」。初老の男性がけわしい表情でつぶやいた。大麻取締法違反(所持)の罪に問われている末期がん患者、山本正光被告人(58)。現在、「大麻はがん治療のためだった」として無罪を訴え、刑事裁判をたたかっている。


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6月6日午後1時半から、第3回公判が東京地裁で開かれ、弁護側が陳述をおこなった。裁判の前に、弁護士ドットコムニュースの記者が山本さんに話しかけたところ、表情をやわらげて「裁判をつづけるには、体調を維持しないといけないね」と話しはじめた。



●「ほかの治療に効果がなかった」


山本さんは今から約40年前、オートバイ事故で輸血を受けて、C型肝炎ウイルスに感染したという。C型肝炎は初期症状がほとんどないが、慢性肝炎から肝臓がんへと進行していくおそれがある。山本さんの場合、インターフェロンの治療も受けたが効果はなく、2000年に肝臓がんが発見された。



摘出手術は受けたが、肺やリンパ節にがん転移・進行し、2014年には末期がんと診断された。ほかの治療の効果・選択肢がなかったため、山本さんはインターネットで海外の事例などを調べて「大麻が治療に有効かもしれない」と思い至った。その後、自宅で大麻を栽培、使用しはじめた。



がんの病状は劇的に改善したという。「抗がん剤を使っていないのに、『腫瘍マーカー』の数値が下がり、安定した。体調もすこぶる良かった」(山本さん)。山本さんは2015年12月、東京の路上で職務質問を受けて、大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。



●「世の中そんなに甘くない」


山本さんは現在、神奈川県内で一人で暮らしの生活を送っている。逮捕後の治療には、抗がん剤は一切つかわず、緩和ケアが中心だという。だが、入院と退院を繰り返しており、先日も病院に搬送された。「がん治療の麻薬系鎮痛剤を使うと身体に負担が大きい。寝たきりならないようになるべく避けているが・・・」



この日の公判で、弁護側は、海外で医療用大麻が解禁された事例をあげつつ、「生命・健康を維持することは、憲法上、最大限尊重されなければならない」「他人に迷惑をかけない限り、適切な医療を選択する権利がある」として、大麻の医療利用を禁止した法律が違憲にあたると主張した。



弁護側の冒頭陳述は、約1時間におよんだ。一方、検察側は、弁護側が申請した証拠のほとんどを不同意とした。弁護側はあらためて証拠申請するという。山本さんは「世の中そんなに甘くない。壁はでかい。一人でやれることは限られている」「まずは自分のためにたたかいたい。それが他の人にも役立てば」と話した。


(弁護士ドットコムニュース)


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