母の死後、父違いの「姉と兄」3人発覚! 相続はどうなる?【小町の法律相談】

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2016年06月17日 09:52  弁護士ドットコム

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母が死んだら、ひとりっ子だと思っていた自分に、実は3人のきょうだいがいることが発覚した。遺産相続はどうなるの? という相談がYomiuri Online「発言小町」に寄せられました。


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母親が亡くなった後、トピ主さんが戸籍謄本を取り寄せたところ、父親と結婚する前に、別の男性と協議離婚していたことがわかったそうです。しかも、前夫との間には、娘1人と息子2人がいたのです。母からは一度も聞いたことのない話に、ビックリ。父親違いの3人の子どもには、母の死についてまだ連絡していません。


母親には800万円の預貯金がありました。トピ主は、「私が全部相続しようとは思っておりませんが、1人で両親の世話をしてきて金銭的にも援助もしてきたので、半分はいただいて、残りをあちらで分けてもらったら、なんて、考えているのですが、そんな事ができるのか」と質問しています。


レスには「うちの場合は、父親。亡くなってから、私にもう1人の姉がいた事がわかりました。(中略)その姉は割と裕福な生活をしていたので、相続を放棄してくれました」といった経験談も寄せられます。「誠意を示さずに当然であると要求だけすると感情問題になる」、「通常の遺産相続と同じく、4人で均等にわけるのが妥当」など、様々な意見が並びます。


母親の面倒を見ていたトピ主が、他のきょうだいよりも多く遺産を受け取ることはできるのでしょうか? 山岸 陽平弁護士に話を聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「母の死後、一人っ子のわたしに兄弟が・・・」はこちら(http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0519/762800.htm?g=15)



 ●「相続問題の解決には、法律だけでなく相手の立場も考えて」


相続においては、法律がどのようになっているかよく把握するだけではなく、相手の立場を踏まえて行動を始めることが重要です。最初の働きかけ方を誤ると、後に響きます。


今回のケースの場合、相談者にとってみれば、突然降って湧いたように父親違いのきょうだいが登場してきたわけです。何もしていないきょうだいが相続分を主張することに、苛立ちを感じても仕方がないかもしれません。


ところが、相手方となるきょうだいにしてみれば、実の母親と別れたくて別れたわけではありません。実の母親に対しては、きょうだいその人ごとにいろいろな思いがあるでしょう。その思いを無視して、頭ごなしの言い方で連絡すると、反発される可能性があります。そもそも、援助や介護をしていなくても法律上は相続権を主張できます。


結局は事案ごとに解決策を考えていくほかないのですが、一般論としては、まずは、相談者から父親違いのきょうだいに対し、「いくらかの代償金を支払い、相続放棄をしてもらう」という提案をすることが妥当だろうと思います。分割協議に入る前に、相続人の地位を譲り渡してもらうということです。


この場合の代償金の金額は話し合って決めていくものであり、基準などはありません。ただし、今回のケースにおける目安としては、「遺留分」の金額が考えられます。


「遺留分」というのは、法定相続人であるにもかかわらず遺言で相続分をゼロにされるとか、かなり少なくされたような場合、そうした法定相続人の期待を保護するために、受け取ることのできる遺産を一定程度確保する制度です。配偶者や子が法定相続人にいる場合の遺留分の対象となるのは、相続財産の2分の1です。


今回のケースでは遺言はないのですが、母親は亡くなるまで、相談者を唯一の子のようにして扱っていたようですので、代償金を決めるにあたっては遺留分の金額を参考にするのがよいと思います。今回のケースにおける遺留分は、それぞれの子につき、相続財産全体の8分の1です。


なお民法には、「寄与分」といって、「被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合」は、その相続人の遺産の取り分を増やす制度があります。母親の面倒を見ていた相談者が、寄与分の主張をすることも1つの方法ではあるのですが、最初からそのようなことを父親違いのきょうだいに投げかけると反発を受けるおそれが大きいでしょう。まずは、きょうだいの相続人としての立場を尊重し、代償金の支払いの提案をしてみてはいかがでしょうか。


このように、相続問題の解決のためには、法律を知ることだけではなく、相手の立場を考えることが重要になるのです。




【取材協力弁護士】
山岸 陽平(やまぎし・ようへい)弁護士
金沢弁護士会所属。富山県出身。京都大学法学部・同法科大学院を経て弁護士登録。相続、離婚、不動産、交通事故、会社法務などへの取り組み多数。高齢者の財産管理、資産承継、身上監護について取り組むことも多い。

事務所名:金沢法律事務所(2016年6月下旬頃開設予定)
事務所URL:http://bengokanazawa.jp/


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