「下流老人」「子どもの貧困」に起きた分断…藤田孝典さん「みんな助かる政策が必要」

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2016年10月03日 10:51  弁護士ドットコム

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『下流老人』などのベストセラーで知られる藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)をゲストに、貧困問題について考える講演会(主催・NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)が9月29日、東京・文京区で開かれた。藤田さんは『下流老人』出版後、ほかの支援団体の関係者から言われたある言葉を引き合いに、「分断」されずに社会問題に取り組むためには何が必要かを語った。


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「下流老人」は高齢者の貧困問題を捉えた藤田さんの造語で、具体的には「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびそのおそれがある高齢者」を指す。下流老人は700万人ほどいるとみられ、今後も増えると予想されている。


貧困にあえいでいるのは高齢者だけではない。藤田さんは2016年3月、今度は若者の貧困を描いた『貧困世代』を出版。NPOでの支援事例をあげながら、ブラックバイトや奨学金の返済などの問題を改めて提起した。


藤田さんは「貧困の問題は全世代に広がっています」と話す。にもかかわらず、予算不足を理由に、政治の現場では社会保障費をいかに削るかが議論されているように見えるという。藤田さんはその背景の1つに、根強い自己責任論があると考えている。「海外では、貧困は『政治の失敗』と言われることが多い。一方、日本だと自堕落な生活をしている本人が悪いという問題にされてしまう。全て個人の問題に収斂されていく傾向があります」


●「賃金を上げるのが難しいのなら、支出を下げる政策を」

予算が限られているため、困窮者たちの間では「分断」も起きているという。藤田さんは『下流老人』の出版後、子どもの貧困問題に取り組む団体の関係者から、こんなことを言われたそうだ。「高齢者より子どもが大事でしょう」「予算をつけるなら子どもの方でしょう」


藤田さんは「どっちも生きていくのが大変だから、どっちも大事。多数決をとって『子どもが大事です』となったら高齢者は救われない、という(単純な)話ではない」と言う。老人と子どものほかにも、ワーキングプアと生活保護者、正規雇用者と非正規雇用者など、対立構造はいたるところにある。「景気が低迷していて、みんながしんどい社会の特徴。あるカテゴリーの人を救えと言っても、『私たちも困っている』『税金払うばかりなのか』となってうまくいかない」


では、どうしたら良いのか。藤田さんは「(低所得者だけでなく)みんなが助かる政策の提案が必要」と話す。例えば、藤田さんが政府に求めている政策の1つが、公営住宅の整備や家賃補助といった、「住」への支援だ。国土交通省によると、日本の公営住宅比率は5.4%。対してイギリスは17.5%、フランスは16.4%と高い。また、両国には住宅手当や給付金もあるという。「一番家計を圧迫しているのが住宅費。賃金を上げ続けるのは難しい時代だから、支出を下げるような政策が欲しい」


実現するには予算が必要になる。藤田さんは予算について「本当は税金を引き上げるしかない。ただ、予算は政策の優先順位次第。予算がないというより、優先順位をどう設定させるかという、私たち(有権者)の問題だ」として、有権者が声をあげることの重要性を語った。


(弁護士ドットコムニュース)


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  • 貧困ビジネス活動家の妄言に乗ってはいけない。日本はたった3%の消費増税に耐えられない社会。財源について明確なビジョンが無いのは貧困ビジネスと思って間違いない。
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