【そのサイト、本当に信じられる?『地味にスゴイ!校閲ガール』4話レビューの画像・動画をすべて見る】
『シン・ゴジラ』はじめ話題作への出演が続く女優・石原さとみが、ドラマの題材としてはなじみの薄い「校閲者」を演じることでも話題の本作。26日に放送された第4話ではまたしても主人公・悦子が暴走、校閲部に波乱を巻き起こした。
本記事では実際に新米校閲者として働く筆者が、実際の業務内容の紹介や現場の実情、業界に対する愚痴を交えつつ、前回に引き続きドラマの見どころをレビューする。
文:結城紫雄
ちゃんと見抜ける人でないと(Wikipediaを使うのは)難しい
人気女優・杉本あすか(南沢奈央)の自叙伝の校閲を担当することになった悦子(石原さとみ)。しかし杉本に隠し子がいることがゴシップ誌記者によって明るみに出てしまい、自叙伝は発売中止の危機に陥る。校閲の過程で、杉本が娘に注ぐ愛情の深さを知った悦子は、釈明会見の現場に駆けつけるのだが──!?
珍しく、悦子が作家に呼び出されなかった(際どいシーンはありましたが)第4話。校閲にあたり、作者である女優・杉本あすかのプロフィールをWikipedia(がモデルと思われるWebサイト)で調べる悦子に、校閲部の先輩・藤岩りおん(江口のりこ)はこう忠告します。
インターネットの情報を鵜呑みにするのは危険です。現実問題インターネットをすべて排除しろとは言いませんが、情報が信頼に値するサイトかどうか細心の注意を払うことが必須です。
『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』4話 藤岩の台詞より
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本当にそうなんですよねー! 特に筆者は、(2ちゃんねるが生まれた)90年代後半にインターネットと出会ったこともあり、基本「ネットに書いてあることは疑ってみる」というスタンスが抜けません。
ただし現在はインターネットで新聞も読めますし、テレビ番組を見返すことだって可能。ネットが玉石混淆なのは相変わらずですが、以前に比べて「玉」=「信頼に値するサイト」が増えてきた、というのも事実です。正しく使えば、ライターや編集者、そして校閲者の強力な味方になることは間違いありません。
特に「Wikipedia」は曲者で(正しい使い方をすれば非常に便利なのですが)、出典が明記されていない記事などは要注意です。例えば下記、プロ野球・広島カープ所属の内野手、菊池涼介選手の記事を見てみましょう。
記事内(画像中央部分)に「ベストナインに5回選ばれるなど」という出典が明記されていない一文がありますが、正しくは6回。ドラフト候補としてピックアップされた時点の選出回数が、訂正されずに残っているものと思われます。
しかしネット上の記事では、いまだ「大学時代に5回のベストナインに輝く」と記載されているものが多数存在します。Wikipediaと同じ間違いを犯すと「ははーんWikiだけ見て書いた記事だな」と勘ぐられることもあるので注意が必要です。
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景凡社校閲部にある大量の書籍はなんのため?
逆に筆者のような新米校閲者からすると、「ネットがない時代の校閲はどうやってたの?」と疑問に思いますが、当然書籍で事実関係を調べていたんだそう。
劇中の校閲部でも、『角川類語新辞典』をはじめとするスタンダードな辞書から、『日本史辞典』や『角川日本陶磁大辞典』、『漆工事典』といったマニアックな事典まで確認できます。
筆者の勤務する校閲事務所でも、各種国語辞典から地図(昔はGoogle マップもありませんでしたから)、時刻表(時刻表トリックをネットなしで校閲すると思うと気が遠くなります)、助数詞を調べるときに使う『数え方の辞典』(鎧は◯領、神様は◯柱などなど)、『差別語辞典』なんてのもあります。
必ずしも「書籍が正しい」「ネットは怪しい」というわけではありませんが、ネット記事と異なり刊行に莫大なコストがかかる書籍は、それだけ手間暇かけられている≒その分信頼に値する、といえなくもないでしょう。
裏を返せば、筆者も書籍に携わっている新米校閲者として「たとえ恋に浮かれていようともひと文字たりとも気を抜けないな」と改めて実感した4話でした。自分の携わった本が、藤岩さんが言うところの「信頼に値する」情報源になる可能性が多分にあるのですから。
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が、無難に業務をこなしつつある悦子の知らないところで、景凡社の同僚・森尾(本田翼)と憧れの折原幸人(菅田将暉)の仲が急展開! 5話以降、こんな複雑な恋模様の中、まともに校閲業務ができるのか。他人事ながら非常に心配です。
本記事では『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』オンエア開始以降、全話にわたってレビュー記事をお届け予定です。本作は毎週水曜22時より、日本テレビ系列にて放送中。
今週の校正ギア!
定規「直尺 ステン 15cm 赤数字入 JIS」(シンワ測定 / 税抜310円)
ゲラを読むときに、原稿の行に沿って置き“目が滑らない(単純な誤字を見落とさない)”ようにしたり、袋とじを破くのに使用したりといった使い方がメインです。
よって本来の「定規」として使用することは少ないのですが、本体の端から目盛りが振られているため、細かなものの計測にも便利。ペンギンのマークがキュートです。
参考:『広島ラッキーボーイ菊池の足で4位浮上 - プロ野球ニュース : nikkansports.com』『毎日新聞・校閲グループ (@mainichi_kotoba) | Twitter』