教師が男子生徒を殴って「丸刈り」に…教育現場に根深く残る「体罰」の法的問題

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2016年11月03日 09:11  弁護士ドットコム

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山梨県教育委員会は、県内の県立高校で、50代の男性教諭が男子生徒を平手で殴り、バリカンで頭を丸刈りにする体罰を行っていたと発表した。


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報道によると、男性教諭は10月24日、側頭部を刈り上げた髪型で登校した3年生の男子生徒のほほを約10回殴り、バリカンで頭を丸刈りにした。別の50代男性教諭も同席していたが、止めなかった。また、男性教諭は、同じ日、男子生徒と同じ運動部に所属していた他の男子生徒3人を呼び出し、「連帯責任」として、バリカンでお互いの頭を丸刈りにさせた。



山梨県教委は処分を検討しているが、平手打ちや頭を丸刈りにする、お互いに丸刈りさせるような行為は、そもそも教育として許容される余地はあるのか。何らかの刑事上の罪に問われる可能性はないのか。高島惇弁護士に聞いた。



●「身体に対する侵害」を理由とした体罰にあたる


「平手打ちや頭を丸刈りにする行為は、体罰に該当すると考えます。



文部科学省の通知によれば、身体に対する侵害を内容とするものや、児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなものは体罰にあたります。



平手打ちについては、生徒が内出血など外傷を受ける危険があるため、身体に対する侵害として、通常は体罰に該当するでしょう。



頭を丸刈りにする行為についても、『丸刈りにする行為は侵害と評価できるか?』といった議論の余地はありますが、身体の完全性を損ねている以上、身体に対する侵害を内容とするとして体罰と評価するのが妥当だと考えます」



●「教育上多少の体罰はやむを得ないという考え、未だ現場にあるのでは」


「体罰は、学校教育法上絶対的に禁止されており、懲戒処分の対象になります」



処分の重さはどの程度になるのか。



「山梨県教育委員会の懲戒基準は不明ですが、東京都教育委員会が公表している『教職員の主な非行に対する標準的な処分量定』が参考になるでしょう。



この基準よると、一般的に体罰を行った場合は『戒告』が相当するでしょう。



悪質または危険な体罰を行った場合や、体罰により傷害を負わせた場合は、停職または減給が相当すると考えられます。



今回の場合、『連帯責任』と称して、無関係の男子生徒3人も丸刈りにさせているため、悪質な体罰であるとして重い処分になる可能性はあります。



また、刑事上も、平手打ちや丸刈り行為について、傷害罪または暴行罪が成立する余地はあるかもしれません。



もっとも、毛髪の切断や剃去については暴行罪にとどまると解するのが判例であるため、体罰に該当するという理解を前提としても、傷害罪が成立する蓋然性は低いと考えます。



体罰については、いわゆるスクールセクハラと異なり、懲戒処分が全体的に甘くなる傾向があります。



このような傾向の背景には、『教育上多少の体罰はやむを得ない』という教育現場の考えが、未だに根強く存在しているからかもしれません。



法律と教育とが今後議論すべき問題ですが、少なくとも学校教育法上体罰が絶対的に禁止されており、児童生徒に対し悪影響を及ぼしかねない事実を考慮すれば、体罰をなくす形での教育を模索するのが正しい方向ではないでしょうか」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
高島 惇(たかしま・あつし)弁護士
退学処分、学校事故、いじめ、体罰など、学校内におけるトラブルを精力的に取り扱っており、「週刊ダイヤモンド」にて特集された「プロ推奨の辣腕弁護士たち」欄にて学校紛争問題が得意な弁護士として紹介されている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp


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