C型肝炎治療、次世代薬の有効性と安全性の両面からみる治療選択

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2016年12月02日 18:01  QLife(キューライフ)

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MSD、新たなC型肝炎治療薬の発売セミナーを開催


虎の門病院分院長の熊田博光先生

 肝がんの原因の80%といわれるC型肝炎ウイルス。日本国内には、症状のないキャリアを含めると150万〜200万人の患者さんがいると推計されています。ウイルス感染により持続的な炎症を起こす慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行していくため、ウイルス感染の有無を早期に検査し治療することが大切です。MSD株式会社は、9月28日に製造販売承認を取得した経口C型肝炎治療薬「エレルサ錠」(一般名:エルバスビル)と「グラジナ錠」(一般名:グラズプレビル水和物)の発売セミナーを11月29日に開催。虎の門病院分院長の熊田博光先生を招き、「C型肝炎治療の新たな選択肢」と題した講演が行われました。

 ジェノタイプ1型C型肝炎の治療は、1989年C型肝炎ウイルスが発見され、さまざまな治療法が開発されてきました。1992年にインターフェロン(INF)を使ったINF療法が保険適用され、2014年にはINFを使わないダクルインザ(一般名:ダクラタスビル)とスンベプラ(一般名:アスナプレビル)を併用するINFフリー療法の登場により、これまで治療を受けられなかった患者さんやINF治療で効果のなかった患者さんも治療ができるようになりました。

 2015年には、ハーボニー(一般名:ソホスブビル/レジパスビル)、ヴィキラックス(一般名:パリタプレビル/オムビスタビル/リトナビル)が発売されるなか、2016年9月に承認されたエレルサ・グラジナは、第2世代のジェノタイプ1型のC型肝炎薬として登場。年齢、性別、前治療歴、遺伝子型(IL28B)、耐性変異という患者背景に関わらず、ジェノタイプ1型C型慢性肝炎患者さんとまだ肝機能が働く代償性肝硬変患者さんにも優れた著効率(抗ウイルス薬投与による治療を行った際に認められる効果)を示す治療薬です。虎の門病院で行われた試験では、治療効果は良好で、副作用も軽いもののみで重大な副作用も出現しませんでした。

C型肝炎治療薬4つの使い分けと治療戦略とは

 ダクルインザ・スンベプラ、ハーボニー、ヴィキラックス、エレルサ・グラジナという4つの治療選択肢は、薬剤耐性がなければいずれも治療効果は高く大きな差はありません。しかし、薬剤耐性がある場合は、エレルサ・グラジナを除いた3つは、治験成績と市販後成績(虎の門病院での成績)を比べると治療効果の成績が悪くなっています。副作用の観点からみるとダクルインザ・スンベプラは、肝機能障害リスクを示すALT上昇と発熱の割合が高く、ハーボニーは脳出血、動悸、徐脈、腎障害などが注意すべき副作用としてあげられます。ヴィキラックスは、黄疸症状をみるT-Bilの上昇と腎障害、エレルサ・グラジナはALT上昇と下痢を注意すべき点としてあげられています。

 「今までは、有効性の点からみれば、耐性があってもなくても著効率の高いハーボニーが使われていました。しかし、ハーボニーは腎障害があると使えません。その一方で、ハーボニーは肝臓への影響はありません。また、ハーボニーとヴィキラックスは心臓への影響があります。これまでは、『耐性があればハーボニー』でしたが、高血圧や心臓系の疾患がある患者さんには、耐性があっても使えるエレルサ・グラジナが安全かもしれません」とこれからの1型C型肝炎の薬剤選択に関して熊田博光先生は語りました。

 新しい治療薬の登場は、これまで使えなかった患者さんの有効な治療法につながるため、さらなる開発が期待されます。(QLife編集部)

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