ウィスラーで親子スキー ――子どもの成長が親の趣味の視点を変える

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2017年04月17日 12:03  MAMApicks

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子どもが興味を持ったことが親にも身近になることはままあるが、一方で、子どものおかげでかつて自分が好きだったものを思い出させてもらうこともある。

筆者の場合、スキーがそれだ。昨シーズンに息子がスキーを始めてハマッてから、ほぼ毎週末は雪山に向かっている。

子どもの頃の冬休みはスキー好きの父に連れられて長野県でスキー、シアトルでの学生時代も冬はスキーをしていたのだが、夫が特にスキーに興味がなく、私までやる気が失せてしまったらしい。気づいてみれば10年以上も遠のいていた。

しかし、雨の多いシアトルの冬に、「アウトドアでアクティブに」となると、定番はやっぱりスノースポーツ。車で約1時間も走ればスキー場だし、子ども向けのスキー教室もある。いつもかなりアクティブな息子に聞いてみると、「やってみたーい」とのこと。何でも親子で一緒にやるクセがついてしまっている我が家は、私はスキー、夫はスノーボードを、再開することとなった。

となると、市内から一番近い「サミット・アット・スノコルミー」が一番手軽だ。おしゃれでも何でもない、ゆる〜い雰囲気で、ほとんどの場合、山頂からリフト乗り場まで見通せる、スキーを始めてまだ2年の息子には安全安心のスケール。そんなわけで、土曜は午前中はスキー教室、午後は親子スキー、そしてできれば日曜もまた親子スキーというリズムがワンシーズンでできあがった。

子どもの上達は早い。ゆるやかなスロープで自信がつきすぎて、向こう見ずなことをしないか心配になったりするが、6歳らしく冒険家でもあり慎重派でもあるようだ。2年目の今シーズンは、私の後にぴったりつきすぎることもなく、たまには私を追い抜くようになっている。

すると気になるのが、カナダにあるウィスラー/ブラッコム。シアトルから車で国境を越え、バンクーバーからさらに北上したところにあり、ウィスラーとブラッコムという2つの山が並ぶ、世界中からスキーやスノーボード好きが集まる北米最大のスキーリゾートである。


「2010年冬季オリンピックの会場になったところだし」「プロ級なわけじゃないし、このあたりで十分」と、なんだか自分には敷居が高く感じていたが、「あんなところで滑れたら、息子はもっとスキーが好きになるかも」と思うと、親子でぜひ行ってみたい場所になった。

幼いころからサイクリング好きの夫に提案すると、「何か目標を持ってやる趣味もあるし、いいかもね」。彼自身、長距離サイクリングにハマッたのは16歳の時にカナダのロッキー山脈を走ったのがきっかけで、それからアメリカだけでなく、カナダやフランスや日本で1,200キロを90時間未満で完走するイベントに参加しているが、息子への影響も考えているようだ。息子も、「大きくなったら、ダディと一緒に走るから」と、ストレートに感化されている。

というわけで、3連休にウィスラー・デビューしてしまった。


ウィスラーでの息子の最初の言葉は、「でかっ!」

と言うのも、ウィスラー・ビレッジのホテルから歩いて向かったゴンドラ乗り場は、人、人、人。数百人を超えるスキーヤーが行列しているのを見たのも初めてなら、スキーで大きなゴンドラに乗るのも初めて。「1時間で約6万5千人の人たちをリフトやゴンドラでさばけるらしいよ」と、大人は頭で理解するが、小さな6歳の目線からは人混みで空もよく見えないほどで、息子は驚いたのか無口になってしまった。

ゴンドラは滑るように山を登り、約15分後に山頂に到着。ステーションを出ると、いつものスキー場とはスケール感がまったく違う。雪をかぶった山並みが遠くまで続き、当然ながら町は見えない。何種類ものコースがあり、滑っても滑ってもまだまだ続く。山頂から別のゴンドラ「Peak 2 Peak」で隣山のブラッコムに移動すれば、また違ったスロープを楽しめてしまう。大人でも数日だけでは滑りきれないスケールなのだ。

ちなみに、ふもとのゴンドラ乗り場には、「ビギナーは必ず最初のステーションで降りること」と注意書きが書かれている。滑ってみてわかったのだが、最初のステーションは山の中腹にあり、そこから下はスキー教室を開催しているほどスロープがゆるやか。


しかし、終点の山頂から滑る場合、「グリーン」でも幅20〜30メートルほどしかないところをターンを繰り返しながら滑り続けなくてはならないコースが多いのだ。さらに、どのコースも距離が長いので、山頂から中腹のあちこちにあるチェアリフトまで滑ってまた山頂に戻るという、山頂と中腹の間で滑るのが一般的。山頂からふもとまで滑って降りるのは一日の最後の滑りだけにしたほうが、またあのゴンドラの長い列に並ばなくて済む。

スノーボード初心者の夫が順調に滑っているのを確認し、息子は大丈夫かと振り返ると、しっかりついてきている。針葉樹林の景色はワシントン州と変わらないが、冷たい空気、ぴかぴかの雪、美しい空、どこまでも続くようなコースを滑っていると、心がどんどんすっきりしてくる。


しかし、親になると、それまで自分がやりたいからやっていた趣味に対する視点も変わる。今の私は、ただスキーをしたいのではなく、息子と一緒にスキーをしたいのだ。

"You are doing very well there!"(=上手に滑ってるね!)と、滑ってきた息子に声をかけてくれる人もいる。照れ屋の息子は小さな声で "Thank you"。アメリカでもそうだが、大人が子どもを気軽にほめ、子どもも素直にそれを受け止めるのは、とてもいい文化だと思う。

さて、ウィスラーではリフトの営業が午後3時〜午後4時(時期によって変更)にお開きになる。その頃まで滑っていると、まるでラッシュアワーのように何百人もが一気に山を滑り降りてきた。ホテルが立ち並ぶビレッジまで戻るには、そのラッシュアワーのような波にちゃんと乗って滑り降りる必要があり、幅が狭いところではぶつかりそう。

息子は「ママと離れないようにする!」とぴったりとついて滑っていたものの、急なスロープで私の姿が一瞬見えなくなったらしく、ふもとで合流した時は「これからは絶対離れないで!」と、少し泣きべそをかいていた。

しかし、あなどれないのは、6歳児のエネルギー。朝から何キロも滑っていたのに、夜は夜で「ビレッジを探検しようよ〜」と歩き回り、朝は早起き。これについていくのは大変だ。

でも、

「楽しかったあ。またウィスラーに行きたいね」

子どものこんな一言で、疲れも吹き飛び、「また行こうね!」と言いたくなってしまうのが、親というもの。親子でハマる趣味を見つけ、大人になっても一緒にそれを楽しむ時間を作れたら、未来がまったく違ってくるかもしれない。

大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。

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