新作ウルトラマン『ウルトラマンジード』放送直前! 特撮における“親子関係”とは

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2017年06月03日 20:02  おたぽる

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おたぽる

『ウルトラマンジード』公式サイトより

 こんにちは、モノブライトのベース、出口です。
 昨年の『ウルトラマン』50周年の盛り上がりは記憶に新しいですが、今年は『ウルトラセブン』50周年を迎えます。半世紀以上にもわたってファンに愛され、日本特撮のオリジネイターでありながら現在でも新作がコンスタントに制作され続け、今や親子3世代にわたって愛されている円谷プロのウルトラシリーズから、新たなヒーローの情報が発表されました。



 その名も『ウルトラマンジード』(以下、ジード/7月8日よりテレビ朝日系にて放送開始)。前作の『ウルトラマンオーブ』と同様に単独作品ということもあり、「ウルトラシリーズがまたテレビで見られるぞ!」という至上の喜びに包まれております。そして、何より一番期待が高いのは『ジード』の設定でしょう。ウルトラマンジードはウルトラシリーズ稀代のアンチヒーローにして特異な存在感を放つ「ウルトラマンベリアル」の実子という設定なのです!



 これまでの日本特撮の歴史を振り返っても親子関係にあるヒーローは存在しますが、ここまで明確に敵(とは言えベリアルは元・光の戦士、ヒーローではあるが)の息子が主役になるパターンはほとんどないと思います。新しい血を巡らせ新陳代謝を促し次世代にシリーズの魂を継承していくチャレンジ精神は、斬新な設定だけではありません。シリーズ構成・脚本に、小説・ライトノベルを中心に活躍し、幅広いファン層を持つ乙一さん。これまでに見たこともない新しいウルトラマンの物語が紡がれることが約束されているのです。



『ジード』は「血縁関係が明確に言及されているヒーロー」ということになりますが、そもそも特撮ヒーローの血縁関係が明確に言及され始めたのはどこからなのか。そして、その影響はどのように現在の作品に受け継がれているのか。今回の特撮自由帳では、その辺りについて色々と振り返りつつ考察してみたいと思います。




・血縁関係もののパラダイムシフト



 特撮作品で血縁関係を大々的に打ち出し二世ヒーローカテゴリの礎となる作品と言えば、やはり『ウルトラマンタロウ』(73〜74年)でしょう。ウルトラマンケン(ウルトラの父)とウルトラウーマンマリー(ウルトラの母)の間に生まれた息子がウルトラマンタロウ、というのは今では一般常識レベルで浸透しています。しかし、ウルトラの父が初めて私たちの前に登場したのはタロウの父親としてではなく、前作に当たる『ウルトラマンA(エース)』(72〜73年)第27話で、ヒッポリト星人の策略によりブロンズ像にされてしまったウルトラ兄弟のピンチを救うべく駆けつけた時です。この時ウルトラの父は「宇宙警備隊の大隊長」、いわばウルトラ兄弟の上司、上官的な立場でした。



 ここで注目すべきポイントは、実際の血縁関係を持たないウルトラ兄弟というつながりです。これは一体どういうものなのか。
 すべての始まりであるウルトラマン(以下、初代マン)では、ゼットンに倒されてしまった初代マンのもとにゾフィーが駆けつけますが、この時のゾフィーは「初代マンと同じ星から来た宇宙人」であり、それ以上でもそれ以下でもない存在。『ウルトラセブン』では初代マンと同シリーズでのつながりはあれど、セブンの世界に初代マンが登場することはありません。



 時代は70年代に入り、『帰ってきたウルトラマン』(以下、帰マン)(71〜72年)で初代マン、セブンの客演があり、ここで彼らのつながりを「兄弟」という言葉で表現し始めます。兄弟という世界観は帰ってきたウルトラマンから始まり、エース以降では完全に兄弟の序列関係が定着していきます。



 で、ウルトラの父です。前述の通り、ウルトラ兄弟のピンチに駆けつけたウルトラの父。
しかし待てよ、父って、誰の父だ?
 宇宙警備隊という大きな組織を考えると、大隊長の呼び名は「キャプテン」などが妥当だと思うのですが、まあナナメに見ると「ウルトラ」で「キャプテン」は使えないよな、と思い至ります。



 兄弟という関係性を持つ者たちをまとめる大きな存在、そうなればもう父しかいません。その道で多大な功績や発展を収めた人物を敬意を持って「○○の父」と呼ぶように、「ウルトラの父」も兄弟からの最大級の尊敬が表れた呼び方であり、その関係性は実の親子と同じと言っても過言ではありません。



 ここからは個人的な解釈になりますが、
 任侠の世界にも通じる血を飛び越えた関係性がウルトラシリーズにもたらされたことによって、父の実子・ウルトラマンタロウが誕生したのではないでしょうか。



 これまでのヒーロー番組の醍醐味は、敵の驚異や恐怖との戦い、その戦いを通して主人公が心身ともに成長する物語、仲間との友情と決別、などなど。シリアスで骨太な手触りが多く、そのどれもが根底に「孤独感」があり、帰る場所もなく人知れず戦うヒーローの姿に私たちは胸を打たれます。
 しかし、『ウルトラマンタロウ』は真逆の環境にいます。なんたってお父さんは宇宙規模に展開する組織の大隊長という超キャリアだし、お母さんは誰よりも深い愛でいつでも見守ってくれるし、そんな両親の元を離れ息子が頑張る。いわゆる親しみやすいホームドラマの構造なんです、『タロウ』は。親しみやすさは大事ですが、行き過ぎるとヒーローの神秘性がなくなってしまうリスクもあります。



 では、なぜ『ウルトラマンタロウ』はきちんとヒーロー番組の面白さを体現しているのか。それは血縁関係を越えたウルトラ兄弟たちとウルトラの父の存在があるからです。
彼らが培った関係性は、隊長(ウルトラの父)の実子・タロウの特別扱いを良しとせず「兄弟の末っ子」として自分らの序列に組み込み、ひとりの戦士としてタロウとともに戦い、彼の成長を手助けします。タロウもその期待に応えるべく、持ち前の才能を開花させ一人の戦士として覚醒していきます。



 家族設定にきちんと説得力があると、シリアスな展開からホームドラマ風の優しい展開まで作品の世界観を崩さずに幅広い物語を描くことが可能になるのです。そういった意味で、ウルトラマンタロウで提唱したヒーローの血縁関係は、以降の特撮作品に多大な影響を与えることになります。




・次の時代に受け継がれる親子の物語



 特撮作品での「家族もの代表」は『ウルトラマンタロウ』ですが、親子もので考えると忘れてはならない作品があります。それは『ゴジラ』です。ゴジラが親父になる、そんな瞬間が映画『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(67年)で見られます。



 ゴジラと言えば、善悪を超越した圧倒的なカタストロフィと人類への警鐘といったシリアスな作品性が特徴ですが、一方ではゴジラをヒーロー怪獣として扱う作品もあり、家族で楽しめる明るい活劇映画としての面も持ち合わせています。



 ゴジラの息子・ミニラの誕生は、シリーズ全体を見ると異質な作風です。よちよち歩きのミニラに特訓をつける姿や、大きな怪獣にいじめられているところを助けたり、ゴジラらしからぬホンワカした雰囲気は、ともすれば時代の徒花となる作品の可能性もあったと思います。いわゆる「珍作」的な扱い。しかしミニラは怪獣島決戦から以降、『怪獣総進撃』(68年)、『ゴジラ・ミニラ・ガバラオール怪獣大進撃』(69年)、『ゴジラFINAL WARS』(04年)などに出演を果たし、今ではゴジラシリーズには欠かせない存在になっています。



 ゴジラに息子がいるという概念は、作品全体にわたりゴジラの性格を大きく変える要因となっているのと同時に、ゴジラは完全一個体ではなく、その都度なんらかの原因で生まれ、代変わりしている、という新しい方向性を生み出しました。これにより作品ごとで起こるゴジラの造形や性格の違いは「別個体のゴジラ」と見ることができるのです。
つまり、よちよち歩きのミニラが立派に成長した姿が、のちの作品のゴジラである可能性も十分にあり得るのです。



 その証拠に平成シリーズで登場するゴジラジュニアは、登場回数を重ねるたびに姿と名称を変え、最終的に「新しいゴジラ」に成長する過程が描かれています。厳密に言うとゴジラジュニアはゴジラの息子ではなく、あくまで「同種族」の個体ですが、先代ゴジラが死亡し、そのエネルギーを受け継ぎジュニアがゴジラに変貌していく様は、親の名前を襲名する儀式とも見えます。
 ゴジラシリーズは破壊と戦いだけではなく、広い意味で親子の物語も内包されているのです。この懐の広さが「怪獣映画の金字塔」と評される一つの要因となっているのです。




・対照的な家族の描かれ方



 圧倒的な登場人物の多さを誇る『スーパー戦隊』シリーズでは、さすがに多作だけあり家族戦隊や兄弟戦隊といった血縁関係があるヒーローが多く存在します。戦隊がひと家族の『魔法戦隊マジレンジャー』(05〜06年)では、追加戦士が娘(小津麗/マジブルー)と結婚するなど、大家族ものの様相を呈しています。明るく楽しいを基本的な方向性とするスーパー戦隊シリーズにおいて家族や兄弟などの血縁関係は、登場人物の関係性の説明を簡略化した上でギャグからシリアスまで幅広い作劇を可能にします。



 一方で『仮面ライダー』シリーズでは、血縁関係のヒーローはほとんど見られません。親や兄弟は登場しますがそれはあくまでサブ的な立ち位置であって、親子変身や兄弟変身は数えるほどしかありません。『仮面ライダー』は苦悩や悲哀を持ったヒーローの代名詞であることから、シリーズにおいて親兄弟など血縁関係の描かれ方は、おしなべて「過酷な運命」や「凄惨な結末」になることが多いです。兄弟間、親子間でのバトルはあまりの過酷さに直視できない場面もありますが、逆に言うとそこが魅力にもなっているのです。



 いかがだったでしょうか?
 ヒーローの血縁関係について色々と思いを巡らせましたが。何はともあれ『ウルトラマンジード』に期待大! 一体どんな親子の物語が見られるのか。ベリアル親子と言うことで、壮大な親子ゲンカとかになりそうだなー。
 他にも兄弟ヒーロー、親子ヒーローは存在するので、『ウルトラマンジード』の予習として見返してみるのも良いのではないでしょうか。



■モノブライト公式サイト
http://www.monobright.jp/



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日時:8月5日(土)・6日(日)・11日(金・祝)・12日(日)
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