限定公開( 3 )
──好きだったアニメが終わる時の寂しさにはいまだに慣れません。クラス替えで仲良くなった友達と離ればなれになる切なさに近いものがあります。倫也たちも3年生に進級して最終回を迎える『冴えない彼女の育てかた♭』(フジテレビ系)。かーずSPの全話レビュー。詩羽と英梨々のサークル離脱。傷心の倫也は救われるのか。
■#11 再起と新規のゲームスタート 恵とのデートで倫也復活
「今から、デートしよ。デート、してみよ、わたしたち」
前回のラストで安芸倫也(あき ともや/演:松岡禎丞)をデートに誘った加藤恵(かとう めぐみ/演:安野希世乃)。電車の中で恵が「もう、遅いよ」と語っていた、恵と澤村・スペンサー・英梨々(さわむら・スペンサー・えりり/演:大西沙織)が口論する一幕。原作では
「安芸くんが悲しむってわかってたんだ」
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「なのに、出て行くって決めちゃったんだ」(7巻204ページ)
と、グイグイ英梨々を問い詰めます。英梨々と霞ヶ丘詩羽(かすみがおか うたは/演:茅野愛衣)の行動は、クリエーターではない恵には承服できないんでしょう。
六天場モールで二度目のショッピングデート。一期でも恵と一緒に来たものの、詩羽先輩を見つけた倫也、最後はそっちに行っちゃいましたからね。それを根に持っているわけで、恵の粘着キャラも立ってきたなあとしみじみ。「キャラが立ってない」と倫也にディスられつづけて一年。ようやく得た属性がソレってのも本人はうれしくないでしょうけど。
「オタクが服を選ぶことがどれだけ大変なことか、お前わかってんのか?」
めっちゃわかるっ! イマドキのオタクはオシャレにもパラメータを割り振ってますけど、安芸倫也のような旧タイプのオタクは趣味に全振りしてます。身に覚えありすぎて胸が痛いっす。学生の頃、加藤恵がそばにいてくれたらなあ……。『冴えカノ』はギャルゲーっぽい画面作りをしているので、ことある毎にTVに出ているヒロインに惚れてしまう。特にデート回だと、そういう妄想が止めどなく湧いてきちゃいます。恵の手を握る倫也がかっこよく語りかけるこのシーン。
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「あと、離すなよ」
「安芸くんがしっかり握っててくれれば大丈夫、だよ」
これ、サークル活動にも掛けているんですよね。気の利いた演出。帽子を買ってあげた恵が、最初に出会った坂道で問いかけます。
「物語を作るきっかけに、なれたかな?」
本当の目的は、デートイベントを演出して、理想のギャルゲーを作る倫也の背中を後押しすることでした。ギャルゲーフォーマットの作品内で、ギャルゲーを作るために、ギャルゲーを模したデートをするという入れ子構造になっている面白さ。こういう複雑な読み解きを必要とする仕掛けは、美少女ゲーム出身の丸戸史明ならでは。だから視聴者の側にも、ギャルゲーを遊んできた素地が必要となってきます。玄人向けのギミックなんでしょう。
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恵の意思を受け取った倫也が、改めて同人ゲームを作る決意を固めます。
「わたしをまた、誰もが羨むような、メインヒロインに、してね」
『冴えカノ』を代表するこの名セリフをここで重ねてきます。見事な伏線回収。
倫也の号泣。ようやく、英梨々と詩羽先輩の離脱に本気で泣けるくらい向き合えたわけです。ここで恵が抱きしめようとして、やめるんですよ。恋人だったら、好きな人相手だったらそうしたんでしょう。しかしあくまでも恵にとって、倫也は友人であって、仲間、サークルの同志。その一線は越えないということを、無言の10秒間で表現しているわけです。この演技には鳥肌モンでした。
■大団円のどさくさで倫也が初キス奪われた件
吹っ切れた倫也。関西のゲームメーカーに打ち合わせに行く英梨々と詩羽先輩の見送りに間に合いました。かっこよく一歩を踏み出……そうとしてずっこける二人。しんみりを続けない緩急のついたコミカル演出。ジト目いいわー。
英梨々と恵がケンカした件。着ボイスで恵が、英梨々に激励のメッセージを伝えることで和解しました。この件は原作ではフォローなし。英梨々と恵は少し気まずいまま新学期を迎えます(8巻46ページ)。アニメの最終回としては、わだかまりを残さない爽快感重視なのでしょうか。
いやーそれにしても、キスですよ。接吻。ちゅー。倫也のファーストちゅーを奪う詩羽先輩。めっちゃ発情顔じゃないですか! 倫也の股に足まで入れて……やっぱり初めては年上が良いよね(何が?)。詩羽先輩、最後までエロ担当を貫き通しました。対して英梨々のブチ切れ。さんざん別荘で倫也とのフラグを積み重ねておいて、ラストに男を取られる噛ませ犬属性の英梨々に幸あれ。
■最後まで『冴えカノ』はギャルゲーアニメでした
エンディング後のCパート。桜舞う始業式、倫也を慕う後輩の波島出海(はしま いずみ/演:赤崎千夏※崎は本来右が立)が入学してきました。英梨々が抜けた穴を埋めるにはこの子しかいない。その様子を影から覗いていた英梨々と詩羽先輩、そして氷堂美智留(ひょうどう みちる/演:矢作紗友里)。後半出番のなかった美知留にツッコミを入れる英梨々がおかしい。
「今更存在感をアピールしようとしたって遅いわよ、もう最終回のCパートなのに」
これも昔のギャルゲーではたまに見られたメタなギャグです。ゲームクリア後にお疲れ様会として、キャラクター同士が本編の内容について語り合う打ち上げみたいな悪ノリ。『ひぐらしのなく頃に』なんかが有名ですね。
『冴えない彼女の育てかた♭』はギャルゲーの枠組みをアニメに落とし込んだ見事な作品作りでした。出海たちが活躍する新生 『blessing software』が見てみたい。3期やってくれないかなあ。いつまでも待ってますよ! スタッフならびに声優の皆さん、丸戸史明さん、深崎暮人さん、亀井幹太監督、楽しい時間をありがとうございました!
(文/かーずSP)
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