【今週のカレイライフ】「認知症対応」の民間保険は役立つ? そもそも認知症介護のお金は誰が払うの?

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2017年08月09日 19:00  citrus

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認知症に特化し、保障する生命保険が登場し、話題になっています。2016年3月に、業界初の認知症対応保険として登場した「ひまわり認知症治療保険」(太陽生命) は、生まれてはじめて所定の認知症になり180日間続くと、認知症治療給付金300万円が給付されるというもの。認知症以外に、がんや糖尿病などの「7大疾病」、子宮筋腫、骨折などにも保険金が支払われます。

 

同年4月に発売された「あんしん介護 認知症保険」(朝日生命保険) は、介護保険制度と連動。給付条件は「要介護1」以上と判定され、かつ「所定の認知症」の基準を満たすと給付金が支払われます(一時金タイプまたは年金タイプがある)。さらに、メットライフ生命保険も今年7月に、認知症を保障する特約がある「フレキシィ エス」を発売しました。こちらは契約後に180日間の待機期間があるものの、そこさえ過ぎれば、認知症だという診断が確定され次第、一時金が給付されます。

 

気になるのは保障内容がどれぐらい、認知症介護の実情に合っているかどうか。認知症介護経験者に聞いてみました。

 

 

■認知症介護スタート直後の「お金の不安」はカバーしづらい?

 

認知症介護経験者に聞くと、介護費用に悩むタイミングは人それぞれではあるものの、全体として多かったのは「介護が始まった直後」「認知症が進み、施設入所を検討し始める時期」の2つでした。前者に関しては「介護が始まったばかりの頃は、どんな援助が必要で何にどうお金がかかるのかわからない」(60歳女性)というのが一番の理由。「介護保険を使い始めると、要介護度によって限度額が決まってるので、メドが立ちやすくなる」(55歳男性)と言います。

 

介護保険は自己負担1割(所得が多い場合は2割)。要介護度によってサービスの利用限度額が決まっています。例えば、要介護1は自己負担額1万6692円(1割の場合)。あくまでも上限額なので、すべて使い切らなくてはいけないわけではありません。

 

要介護認定が下りるまでの期間は、申請から約1ヵ月。それをふまえて、これらの保険の給付条件を見てみると、そもそも朝日生命保険は「要介護1以上」の認定が下りるのが前提。太陽生命は《「時間」「場所」「人物」いずれかが認識できなくなる状態が180日間続く》必要があります。要介護認定待ちの期間のお金の不安に対応できるとすれば、認知症の確定診断だけで給付されるメットライフ生命保険の一択でした。

 

一方、認知症が進み、施設入所を検討し始める時期であれば、いずれも役に立つ可能性があります。ただし、ここで考えておきたいのは「介護費用は誰の財布から出すのが望ましいのか?」ということです。

 

 

■「お金の悩み」は腹を割って親子で話し合うチャンスでもある

 

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは著書『親の介護で自滅しない選択』(日本経済新聞社)の中で、親の介護にかかる費用は「原則、親が負担」するものだと説いています。公的年金と蓄えのなかから、どのような介護を行えるのかを考えるのが大前提。それでは不十分だと考える場合は、子どもが支援することになりますが、《親が100歳になったら自分が何歳になるかを考え、自身の老後資金の算段をした上で援助しないと、自滅しかねません》と言うのです。

 

もっとも、いざ介護が始まってみると病院での支払いやタクシー代、こまごまとした雑費など立て替え払いが頻発します。「親から『立て替えてもらった分払うよ』と言ってもらえれば言いやすいけど、こちらからは言いづらかった」(66歳女性)、「きっかけがつかめずにいるうちに、父親の認知症が進行してしまった。実はきちんと老後資金として準備してあったと知ったのは亡くなった後でした」(60歳女性)いう声も。

 

現状認識の違いや介護に対する考え方の違いで、親子や兄弟、親族間での軋轢が生じやすくなる中、お金の心配が加わるストレスは相当なもの。こんなとき、生命保険で一時金がもらえれば、当座をしのぎやすくなりそうです。しかし、介護にまつわるお金の悩みは、腹を割って親子で話し合うチャンスでもあります。

 

親にお金の話を切り出すのは勇気がいるもの。でも、「目前に介護の問題が迫っている以上、背に腹は変えられないからこそ、思い切って切り出した」(62歳女性)という経験談も多数。まとまったお金があれば気が楽になる反面、親との話し合いや経済状況の把握をつい先送してしまう原因になる可能性も考えられます。保険を検討する際は、“いざというときの一時金”というメリットに飛びつかず、こうしたデメリットもふまえて、慎重に検討する必要がありそうです。

 

【参考書籍】

『親の介護で自滅しない選択』(日本経済新聞社)

 

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