カタルーニャ独立の住民投票、その先は?

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2017年09月08日 23:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<バルセロナを州都にもつスペインのカタルーニャ自治州が10月1日に独立の是非を問う住民投票を実施することを決めたが、スペイン政府は投票も独立も阻止する考え>


スペイン北東部カタルーニャ自治州の州議会は9月6日、スペインからの独立の是非を問う住民投票を実施する法案を賛成多数で可決した。10月1日に実施する予定だ。


カタルーニャ州の独立に向けた動きは、長年ヨーロッパにくすぶる最も厄介な火種の1つだ。投票が行われる前に知っておくべきことをまとめた。


■カタルーニャはなぜ独立したいのか


カタルーニャは最初からスペインの一部だったわけではない。15世紀後半までは、アラゴンと呼ばれる王国の一部だった。アラゴンがスペインに統合されてからも、カタルーニャは広範な自治権を認められ、独自の議会を持っていたその後1714年にスペイン王フィリペ5世に自治権を廃止されたが、現在は独自の議会や政府、教育や警察などの権限も認められている。


税金を納める一方


スペイン第2の都市バルセロナを州都にもつカタルーニャは、独自の文化を持つ。言語も、スペイン語と並びカタルーニャ語が広く使われている。スペインの国民的娯楽とみなされる闘牛を国内で初めて禁止するなど、スペインの伝統とも距離を置く。


カタルーニャは昔から経済活動が活発で豊かな地域で、他の自治体より相対的に多くの税金をスペイン政府に納めている。税金を多く払っている割に公共投資が少ないことも、独立派の不満の1つだ。逆にスペイン政府からすれば、金の卵のカタルーニャは決して手放したくない。


■住民投票の進め方は


カタルーニャ州は2014年にも住民投票を実施した。独立賛成派が圧勝したが、投票率が非常に低かったため憲法裁が違憲判決を出した。


スペイン政府は2014年と同様、カタルーニャ州による住民投票を認めない立場だ。9月6日に州議会が投票実施の州法を成立させると、「憲法と民主主義に対する暴挙だ」と激しく批判した。


そのため住民投票の実施可能性には疑問符がつく。リスクコンサルタント会社、テネオ・インテリジェンスの分析によれば、スペイン政府が州政府関係者を訴追したり、警察に投票所の閉鎖を命じたりして住民投票を阻止する確率は70%だ。


住民投票が実施された場合、独立派は2014年の投票率37%を上回る投票率を確保し、独立賛成を勝ち取りたい。そうすれば投票の合法性を全面的に主張できる。


■住民投票後はどうなる


もし独立派が勝てば、カタルーニャ州政府は独立を宣言すると言っている。まずやるべきは独立のための法律を成立させることだが、憲法裁はそれらを片端から無効にするだろう。


最終的には、スペイン政府とカタルーニャ州政府が長期的な解決策で同意する必要がある。カタルーニャとしては何としてもスペイン政府を交渉の席につかせたいはずだ。


もしスペイン政府が投票箱を撤去するなどして住民投票を止めようとすれば、「市民に行動を呼びかけて抵抗する」と、独立派政党の1つ、カタルーニャ共和主義左翼のマルタ・ロビラ議員は言う。大規模なデモに発展する可能性もある。


バルセロナを訪れたことがある人なら、選挙中でなくでも、大通りのあちこちに独立派の旗や垂れ幕が飾ってあるのを見たはずだ。そんな街でひとたびデモが起きれば、すぐに規模が拡大し、世界から大きな注目を集めるだろう。


だがデモになれば、カタルーニャ州のカルレス・プチデモン首相が描こうとしてきた穏やかで理性ある独立派のイメージは崩れてしまうかもしれない。


(翻訳:河原里香)



ジョシュ・ロウ


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