アラジン実写版に北欧の王子が登場 「白人のために作られた役」と批判殺到

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2017年09月11日 19:52  ニューズウィーク日本版

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<マイノリティーの役者がキャスティングされにくいハリウッド。製作会社の責任を指摘する声も>


『美女と野獣』のヒットに続けとばかりに現在、ディズニーアニメ『アラジン』の実写版が撮影中だ。クランクインは8月。しかしここにきて、白人キャストが登場することが明らかになり、物議を醸している。


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今回、論争を呼んでいるのは主要4役のアラジン、ジャスミン、ジーニー、ジャファーではなく、実写版独自の新たなキャラクター「アンダース王子」。ディズニーによるとアンダース王子は、北欧出身で、アラジンの恋敵としてヒロインのジャスミンに思いを寄せる。演じるのはアメリカ出身の俳優ビリー・マグヌッセン。母方の祖父母はリトアニアからの移民という。


アンダース王子という役柄のバックグラウンドを説明されれば、キャスティング自体に納得はできるものの、世の疑問は解消できていない。ネット上では、中東を舞台にしたストーリーに白人キャラクターを登場させる必要性が論点に。「白人俳優を出すためにわざわざキャラクターを作った」と批判するコメントもあった。


THEY WILL BEND OVER BACKWARDS TO INSERT A WHITE CHARACTER OUT OF THIN AIR.#Aladdin #BillyMagnussen https://t.co/hnSmTfOSTb pic.twitter.com/WkzQP12pI5— Jenny Yang (@jennyyangtv) 2017年9月6日


(ビリー・マグヌッセンがアンダース王子役に抜擢されたニュースを批判するツイートも)


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ジャスミン役も違和感が残る


ガイ・リッチー監督のもと、撮影にこぎつけた同作品はアニメ版の人気が高い作品だけに、実写版の製作が発表されると注目を集めた。ただ、残念ながら注目される所以は、つい最近までジャスミン役のキャスティングで揉めていたところにもある。


ことの発端は今年3月に、ツイッタ―上で実写版『アラジン』のアラジン役とジャスミン役を探しているという告知が拡散されたこと。条件には年齢のほか「キャラクターは中東系」と明記されていた。


ところが、最終的にジャスミンを演じることになったのは、イギリス出身で母親がインド系の女優、ナオミ・スコット。これに対し「なぜ中東系の女優でないのか」と、批判の声が上がった。中東情報サイト「stepFEED」は、「(ディズニーは)ジャスミンを演じる中東系女優を見つけることができなかったという事実から目を逸らしている」と指摘する。


so they "couldn't find" a middle Eastern Jasmine but they can add a completely new made up WHITE GUY https://t.co/YqYUQ8OLBF— tori (@rotshayden) 2017年9月6日


(中東のジャスミンを見つけることはできなかったけど、新しい白人キャラクターをつくることはできる)


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主役のアラジンのキャスティングも難航。stepFEEDによれば、製作サイドは7月、中東系キャストのブッキングが予想以上に難しいと明かしていた。


ハリウッド情報誌「The Hollywood Reporter」によると、アラジン候補は、オランダ人俳優のアクラフ・コウテット、カナダ人俳優のメナ・マスード、アメリカ人俳優のジョージ・コストゥロスなど、様々な憶測が飛び交っていたものの、最終的に新人でエジプト出身のメナ・マスードに決定した。


Blessed and excited. #strangebuttrue #film #deadline http://deadline.com/2017/06/mena-massoud-strange-but-true-jessica-allain-vengeance-hassie-harrison-the-iron-orchard-1202119330/ Mena Massoudさん(@menamassey)がシェアした投稿 - 2017 6月 27 3:17午後 PDT


(主役アラジンに抜擢されたメナ・マスード)


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問題は、ハリウッドの乏しい人種多様性


ハリウッドの映画界が白人ばかりという点は以前から問題視されている。2016年2月に公開された、南カリフォルニア大学(USC)アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部による調査報告からは、「白人優位なハリウッド」が単なる言いがかりでないことがわかる。


2014〜2015年に発表された映画やテレビ番組414本のうち、白人以外の監督作品はわずか13%で、演者にも同じことが言える。2016年の第88回アカデミー賞の演技部門にノミネートされた20人は、すべて白人だった。


ハリウッドの人種問題に厳しい態度を貫くことで知られる、アフリカ系アメリカ人のスパイク・リー監督は、「アカデミー賞を狙えるような役柄にマイノリティーの役者がキャスティングされないのは映画会社の責任」だと言いきった。


マイノリティーの役者のキャスティングが長らく難航した一方で、すんなりと決定事項として発表された白人キャラクター「アンダース王子」。公開前からいろいろな意味で話題になってしまった彼が感じるプレッシャーは主役級だろう。


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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


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