宇宙船でもエコな3Dプリンターでリサイクル

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2017年09月26日 16:22  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<宇宙船の物資も現地調達の時代。打ち上げ費用とプラスチックゴミを減らす新技術に注目>


ロケットの打ち上げには、重量1ポイント(約453グラム)につき1万ドルの費用がかかる。だから、宇宙に行くときは荷物を可能な限り軽くしたい。


だが、NASAとしては不測の事態に備えてあれもこれも積み込みたい......。そんな悩みを3Dプリンターで解決しようという研究が進んでいる。


18年春に国際宇宙ステーション(ISS)に設置される「リファブリケーター」は、小型冷蔵庫サイズの装置だ。プラスチックを投入すると、3Dプリンター用の材料に再生して、必要な物資を「印刷」する。


3Dプリンターが初めてISSに設置されたのは14年秋のこと。昨年春には2代目の「アディティブ・マニュファクチュアリング・ファシリティ」が設置された。いずれも民間のベンチャー企業メイド・イン・スペースが開発したものだ。


ただし、これらの3Dプリンターは新品のプラスチックを材料とするため、その分だけ打ち上げ費用がかさむ。そこで、リサイクル機能を持つリファブリケーターの出番だ。


一般的なリサイクルでは、プラスチックを細かく粉砕してから、別の装置を使ってペレットなどのプラスチック原料に再生させる。だが宇宙ステーション内は微小重力空間のため、何らかの粉末が発生して空中を浮遊すれば宇宙飛行士に深刻なダメージを与えかねない。


リファブリケーターは、プラスチックを粉砕するのではなく溶融し、フィラメントと呼ばれる3Dプリンター用の素材を生成する。この方法だとプラスチックが受けるダメージが少なく、何回か再利用を繰り返せるというメリットがある。新品のプラスチックを混ぜて、素材の純度を調整する必要もない。


地上でフィラメントを生成する際は、混入物などの理由で廃棄する分が大量に出る。一方、リファブリケーターは「投入されたプラスチックを全て再生する」と、開発元のテザーズ・アンリミテッドの研究開発部門を率いるレイチェル・ミュールバウアーは言う。


ほぼ全工程を地上で操作


宇宙ステーションでもう1つ重要なのは、できるだけ宇宙飛行士の手を煩わせないことだ。「宇宙では時間はとても貴重だ」と、NASAの「宇宙ものづくり計画」の責任者ニキ・ワークハイザーは言う。リファブリケーターは、ほぼ全工程を地上から出力データを送信して操作するため、宇宙飛行士は完成品を取り出すだけでいい。


リファブリケーターが再生処理できるのは今のところ、ウルテムという強度に優れたプラスチックだけ。ただし宇宙空間でリサイクルできる種類が増えれば、地上と同じように、処理を始める前に素材を分別する必要が生じるだろう。


長期的にはプラスチックだけでなく、金属や印刷された電子基板なども混ぜて再生したいと、ワークハイザーは考えている。宇宙ステーションで対処すべき問題の4分の1以上は、電子部品関連の調達や補給だからだ。


ワークハイザーによると、米国防総省もNASAの研究に注目している。軍は微小重力状態で作業するわけではないが、狭い空間で、使える手法が限られたなか、安全に十分考慮しながら制限時間内にミッションを完了させる点は共通している。


ミュールバウアーも次のように語っている。「宇宙ステーションで安全に作業できるようになれば、地上での作業もより安全になる」


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[2017.9.26号掲載]


メガン・バーテルズ


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