セ・リーグのCSファイナルステージで、横浜DeNAベイスターズがまさかの4連勝で広島東洋カープをくだし、1998年以来、19年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。
雨を味方につけ、2位のトラを食って優勝したコイを食って、史上最大14.5ゲーム差からのウルトラ下克上である。ちなみに、優勝チームがCSで敗退するのは、2014年の巨人以来3球団目なのだという。
個人的には、あれ?(下克上パターンって)3球団しかなかったっけ……といった印象だが、リーグ制覇したチームがCSで下位球団に敗れたときの、悔しそう……と表現よりは、なんともいえない悲しそうで複雑な表情や、優勝していない球団がしれっと日本シリーズに出ている光景を観たら、ついいつも「CSってどーなのよ!?」と疑義の念を抱いてしまう。朝日新聞も「2位と10ゲームもの大差をつけての長い戦いの意味はなんだったのか?」みたいな記事を書いていた。
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とは言え、CSの、シーズン中とは比べものにならない緊張感溢れる真剣勝負が、野球好きからすれば圧倒的に面白いのもまた事実で、我が愛する阪神タイガースが、優勝できずにCSに進出した際には「一日でも長く猛虎の試合を観ていたい…」なんて想いこそ馳せど、その想いが馳せすぎて2014年に優勝した巨人を破ってしまい、日本シリーズに出場が決まってしまったときは、「本当にコレで良かったの?」と、単なる一ファンなりに自問自答を繰り返したものである。まあ、そういう制度をNPBに所属する各球団が受け入れてしまったのだから、しょうがないっちゃあしょうがないのだけれど、上位球団とのゲームに一戦一戦ごと勝ち抜いている選手や監督のコメントは、
「日本シリーズに出場できるよう頑張ります!」
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ではなく
「ファンの皆さんに一試合でも長く観てもらえるよう頑張ります!」
……あたりが“正解”なのではなかろうか。
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さて。そんな大どんでん返しが成立してしまったなか、ウルトラ・カープ・レコーディングスより広島カープ公認アルバム『CARP SOURCE〜ヴァイオリン・ポップス風味〜』が発売された。
去年もちょうどこの時期、カープ公式応援歌にジャズを基調とするお洒落なピアノアレンジが施されたアルバムが発売され、どれくらい“大ヒット”したのかは定かじゃないが、その紹介の原稿をここcitrusにアップした瞬間、たしか相当数の「いいね!」をいただいた記憶がある。
熱烈なカープファンのサウンド・プロデューサーやエンジニアらが,1953年から歌い継がれてきたさまざまな応援歌を、カープ愛をもってしてアレンジした全9曲で、今度はヴァイオリンをメインとするポップス風味である。前回同様、なかなかにハイクオリティな完成度で、私のような“カープ愛に満ち溢れていない音楽ファン”でも充分に楽しめる仕上がりとなっている。
あくまで“応援歌”のアレンジゆえ、必然的にマイナー調の曲は一曲もなく、どの曲も勇ましさが前面に出る元気系ばかりだったりするのだが、ヴァイオリンの音色って、どんなにハッピーな曲を演奏しても、どこか切ない物寂しさがにじみ出てしまう性質があるためか、ジャズピアノバージョンと比べ、完全に「陽」の方向へと弾けきっていない……気はしなくもない(純粋に音楽面のみについて論じるなら、この「弾けきらなさ」は決してマイナス要素ではないではないのだけれど)。
ただ、この「どこか切ない物寂しさ」──なんか煮え切らないアンニュイ感は、お叱りを覚悟で申し上げれば、今の鯉党の心情にまさにピッタリなのかもしれない。結果として「慰みもあって励ましもある」絶妙な着地地点へと作風が降り立っているのだ。もちろん制作サイドも、こんな展開までを予測してヴァイオリンをメインに持ってきたわけではないのだろうが……。虎党の私も、嫌みや社交辞令じゃなく「広島×ソフトバンク」……今年の日本シリーズでは観てみたかったんですけどね……。残念!