ニジェールでの米兵襲撃は「トランプのベンガジ」に?

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2017年10月27日 16:32  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<遺族への無神経な発言に批判が集中。対応の遅れと曖昧な説明に不信が高まる>


「この事件は『トランプのベンガジ』になるかもしれない」


10月4日に西アフリカのニジェールで米特殊部隊の兵士が武装勢力に襲撃された事件について、民主党のフレデリカ・ウィルソン下院議員はメディアにそう語った。


犠牲となった米兵の遺体の引き取りに向かう遺族にトランプ米大統領が電話をしたとき、遺族に付き添いリムジンに同乗していたウィルソンはその無神経な言葉に激しい怒りを覚えたという。死亡した兵士の妻に「彼は軍に入った以上、覚悟していたはずだ」と言ったというのだ。


事件が起きたのはマリとの国境地帯。地元有力者らとの会合を終えた米兵の少なくとも8人が非装甲の小型トラックで移動中、待ち伏せしていた武装勢力に襲撃された。武装勢力は総勢50人ほどで、テロ組織ISIS(自称イスラム国)の関連組織とみられる。現場では約30分間銃撃戦が続いたが、フランス軍がヘリコプターで支援に向かい生存者を救出したという。


トランプ政権は当初、死者は3人と報告したが、そのほかに戦闘中に行方不明になった兵士が1人いて、約48時間後に遺体で発見された。この兵士が行方不明になった経緯や殺害された状況は明らかにされていない。米軍が50人規模の襲撃計画を事前に察知できなかったことなど、この事件については多くの疑問があるが、トランプ政権は「調査中」の一点張りだ。


共和党のジョン・マケイン上院議員は18日、トランプ政権は事実を率直に伝えていないとして、議会が調査に乗り出す可能性を示唆した。


渦巻く不信はオバマ前政権時代のベンガジ事件を彷彿させる。


クリントン元国務長官の側近でリベラル系シンクタンク、アメリカ進歩センターのニーラ・タンデンは、「ベンガジ事件では議会で何度も公聴会が開かれた。ニジェールでの米兵の死については1回もないのはなぜか」とツイート。ニュース専門局MSNBCのジョイ・リード記者も「ベンガジ事件はあんなに騒がれたのに、ニジェール事件についてはなぜ誰も何も言わないのか」と問い掛けた。


オバマより誠実だと主張


12年9月、リビア東部のベンガジで武装勢力が米領事館を襲撃し、駐リビア米大使らが死亡した。オバマ政権は当初、CIAの誤った情報に基づいて事件を説明したため、責任逃れのための隠蔽工作ではないかと共和党に攻撃された。


当時、国務長官だったクリントンは領事館の警備強化を怠った責任を問われ、16年の大統領選まで「ベンガジ疑惑」にたたられることになった。16年6月の最終報告書でクリントンの嫌疑は晴れたが、保守系メディアはいまだに「ベンガジの欺瞞」を批判している。


トランプはニジェールの事件について沈黙し続けていたが、17日に記者に問い詰められてようやく亡くなった兵士の妻に電話をした。しかも、その際バラク・オバマ前大統領は戦死した米兵の遺族に電話などしなかったと、でたらめな主張をした。


電話で兵士の遺族を傷つけたとの批判に対しても、トランプはウィルソンの捏造だと主張。しかし兵士の母親はトランプが「私の息子と義理の娘、私と夫の尊厳を傷つけた」とメディアに語っている。


事件当時ニジェールには約800人の米兵が駐留。中部の都市にドローン(無人機)の基地を建設中で、死亡した4人は対テロ作戦でニジェール軍兵士の訓練を担当していた。


<本誌10月28日発売最新号掲載>


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ジョン・ハルティワンガー


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  • 言い方が悪かったかもしれないけど、そんなにトランプ大統領を責めなくても。
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