マツコ・デラックスの“人心掌握術”が若者たちから圧倒的な支持を得ている理由

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2017年11月29日 01:00  citrus

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なんのバラエティだか情報番組だったかは忘れてしまったけれど、マツコ・デラックスが「平成生まれの若者が選ぶ“平成のカリスマTOP10”」ってやつで、嵐や安室や小泉進次郎やHIKAKINを抜き、堂々の1位に輝いていた。

 

「カリスマ」ってえのとは少々ニュアンスが違うような気もするが、老若男女問わず幅広い層からの支持を現在もっとも受けている一人がマツコ・デラックスであるのは、さすがに異論を挟む余地もない。そして、その絶大なる人気の秘密をかいま見る、とあるオンエアーでの、とある女性タレントとのやりとりを、私はとうとうネタりかで発見した。

 

それは、悩殺ビキニ姿でステージに立ち続ける「シンガーソンググラドル」なる藤田恵名(27)というヒトが、マツコがMCを務めるバラエティ番組『アウト×デラックス』(フジテレビ系)に出演した際の出来事──私は正直、この藤田恵名というヒトのことをまったく知らなかったのだが、どうやらこういうヒトであるらしい。

 

元々は歌手志望で上京。最初に所属した事務所から「グラビアやらないと仕事がない」と言われ渋々水着になるが、ライブ活動は地道に併行。しかし「このままでは埋もれてしまうと思って、水着でライブを始めてしまい、服を着るタイミングを見失ってしまった」……のだそう。で、そんな「本来の意にそぐわない方向へと行き着いてしまい迷走中」の彼女に対するマツコのアドバイスが圧巻なのである。とりあえずは、その一部を抜粋してみたい。

 

マツコ:(本当はMISIAや絢香を目指していたという藤田に向かって)もう遅いわよ。それとミス東スポとか辞退しなきゃだめよ。

 

藤田:でも、なにか肩書きが欲しくて…今となっては肩書きが重いです。

 

マツコ:どんな音楽やってるの?

 

藤田:ロックです。椎名林檎さんとかブルーハーツさんが好きなので、わりと社会派でやらせていただいてます。

 

マツコ:ある意味パンクよね。

 

藤田:でも見る人から見たらメタルとかパンクだっていう人もいます。

 

マツコ:それが嫌なの?

 

藤田:なにが本望かわからなくなってきてて、今は求められるがままにやっています。ギャラが良いだけの理由でパチスロのお仕事も始めてしまいまして…。

 

マツコ:パチスロもパンクよ。だからそういう世界でトータルコーディネイトしてみたらいいじゃん。おっぱい・スロット・麻雀・ロック……よくない?

 

藤田:「なにやってるんだろう?」がいつも頭の中にある…。

 

マツコ:なにやってるんだろう、なにやってるんだろうなと思いながら人間って堕ちていくのよ。堕ちているっていうことを表現したらいいのよ。今のその気持ちを歌詞に乗せて歌っちゃえばいい。

 

この直後、藤田は「それでいいんだよ、と言ってくださったのがすごく嬉しくて…」と大粒の涙を流し、泣きじゃくったという。ここで私が注目したいのは「マツコ・デラックスというヒトは、もはやマスの象徴的存在となっているにもかかわらず、全然マスに向かって話をしていない」という愕然たる事実である。

 

たしかに、藤田恵名というヒトにはいちいち響きまくる金言の連続だったりする。が、逆に言えば、藤田恵名というヒトにしか響かない、かなり特殊な暴言との見方もできなくはない。

 

深夜とはいえ、くさっても地上波の番組だ。何万、何十万もの視聴者が観ているのだ。なのに、マツコは対面している出演者一人だけに物申す。他の誰か(=視聴者)なんてどうだっていい、まずは目の前にいる相手、この場合は藤田恵名だけに届けばいい。もし、視聴者のなかに、藤田とはまた別のかたちで「本来の意にそぐわない方向へと行き着いてしまい迷走中」なヒトがいれば、勝手に私の言葉を応用するなり反面教師にすればいい……と、こういったマスメディアの本質と逆行する、じつは相当にインディペンデンスなスタンスの希少性を、平成生まれの若者たちは、マツコ・デラックスを通じて、敏感に察知しているのではなかろうか。

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