主人公はサラリーマンの憧れだった…! 漫画家「国友やすゆき」引退という“一つの時代”の終わり

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2017年12月05日 01:00  citrus

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citrus読者の皆さまは「国友やすゆき」という漫画家のことをご存じだろうか?

 

『JUNK BOY』『100億の男』『幸せの時間』『ダブル〜背徳の隣人〜』……など、1980年代半ばから30年以上ものあいだ、おもにサラリーマンを主人公にした作品を、青年漫画誌やオヤジ系週刊誌で描き続け、そのうちのいくつかはスマッシュヒットとなり、アニメ化やドラマ化までされている。

 

ところが、『HARBOR BUSINESS online』によると、そんな安定感抜群の量産型作家である国友やすゆき・御年64歳が、現在『週刊ポスト』に連載中の『愛にチェックイン』を最後に筆を置く、すなわち引退してしまうのだという。たとえ国友氏の作品は一冊も買ったことがなくても、上述した代表作はすべて、なんとなく(おそらく漫画喫茶とかで)流し読みして、なんとなく内容は把握している(に違いない)私ら世代の“それなりな漫画好き”からすれば、どことなく淋しい話だったりする。

 

国友氏の作風を、誤解を恐れず一言で行ってしまえば、

 

「一見は普通なのに、なぜか次から次へとセックスができてしまうサラリーマンの物語」

 

……といった感じだろう。ちなみに、このジャンルで一世を風靡した他の漫画家としては、弘兼憲史氏(島耕作シリーズ)や柳沢きみお氏(特命係長・只野仁シリーズ)が挙げられる。

 

もちろん、国友氏・弘兼氏・柳沢氏が描く「一見普通のサラリーマン」は、設定も性格もスキルも三者三様まったく異なっているのだが、「なぜか次から次へとセックスできてしまう」のだけは、どの主人公にも共通している。そして、イケメン俳優でもなくジャニーズアイドルでもなくイケイケの青年実業家でもなくホストでもなくAV男優でもない「普通のサラリーマン」が「ヤリまくり」という、本来ではなかなかあり得ない日常は、成人日本男児の大半を占めるサラリーマンにとっての憧れ、夢だったのではなかろうか。

 

だがしかし、近年の若いサラリーマンは、そういう“ハーレム状態”を「なかなかあり得ない」から「絶対にあり得ない」と見切りを付け、「いいなぁ〜」と羨望の念を抱くことにすら背を向け始めている。「セックスなんて面倒臭い」といった空気さえ蔓延し、“不特定多数の女性とのセックス”に向けるエネルギーを「円満な家庭」だとか「趣味」だとか「友人付き合い」に注ごうとする。

 

国友氏が筆を置き、弘兼氏は会長になった島耕作や『黄昏流星群』に登場するシルバー世代を動かす作風へと移行し、柳沢氏が仙人化してしまった今、あきらかに“一つの時代”が終った……。

 

たとえば、近年大ヒットを飛ばしたジャズ漫画『BLUE GIANT』の主人公・宮本大は、(少なくとも10巻までは)童貞だった。これからはヤリチンではなく、むしろ女やセックスには目もくれず我が道を突き進む童貞(的)なキャラが受ける時代なのかもしれない。いや、童貞云々ではなく、男女の深いまぐわりの匂いを一切排除した作品じゃなければ、大ヒットは狙えないのではないか? 青年誌であるにもかかわらず……だ。電車の中で読んでいても中途半端にムラムラしてしまう、国友氏が描く妙に生々しい濡れ場も、それはそれで困りモノだったのだが……。

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  • おはようございます。ボクもかつては「百億の男」毎週読んでました。あれは燃えましたね。ついでに言うなら、獸神サンダーライガーの若手時代を描いた「スープレックス山田くん」も良かったなあ
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