原田知世&三上博史の「JR SKISKIキャンペーン」で辛いバブル時代を思い出す50代の悲しさ

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2017年12月22日 01:00  citrus

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もう皆さんもテレビCMなりポスターなりでご覧になっているだろうが、2017年〜2018年の「JR SKISKIキャンペーン」は、JR東日本発足と映画『私をスキーに連れてって』公開から30年を記念した特別企画として、同映画に出演した原田知世と三上博史を起用し、大々的に展開されている。

 

テレビCMは、映画のワンシーンを使いながら松任谷由実の『BLIZZARD』をBGMに使用。キャッチコピーも「私を新幹線でスキーに連れてって」と、映画が公開された80年代をそのまま30年後に持ってきたかたちで、ポスターは原田をモチーフに、手描きの映画看板のような風合いの仕上がりだ。

 

あと一つか二つ、仕掛けとして“どんでん返し”が控えている予感もなくはないが、とりあえず現段階では30年前、すなわち1987年当時にただよっていた“空気感”をタイムスリップ的に平行移動させた、いわゆるノスタルジックモノである。

 

はたして、当CMを制作したヒトたち(DサンだとかHサンだとか?)が、このレトロ感をどの層に向けてアピールしたいのかは不明ではあるけれど、まずおそらく10代20代の男女は正直なところ、あまりピンと来ていないのではなかろうか。だって、彼ら彼女らにとって三上博史と原田知世は、もはやトレンドじゃないタイプのハンサム&ベッピンな、正体不明のアンチャン&ネエチャンでしかないのだから。実際、20代の女子に「三上博史と原田知世を知っているか?」と聞いてみたら、「誰それ?」という逆質問が返ってきた。若い世代のスキーやスノボ人口も間違いなく激減してきているわけだし。

 

……となれば、ターゲット層は(辛うじて)30代後半あたりから、まさに30年前にスキーやテニスサークルで恋愛を謳歌していた我々50代ってことになるんだが、私個人としては、今回のこれら一連の広告キャンペーンを目にするたび、ものすごくダークな気分に陥ってしまう。

 

1987年と言えばご承知のとおり、時代はバブル真っ盛りである。そして、そのころの私は画材屋に就職して2年目だか3年目──つまり、安月給でイラストレーターを目指しながら、2DKのアパートを先輩社員と二人でシェアした会社の寮で、ただしこしこと絵とマスだけをかいていた、人生でもっとも貧乏かつ、くすぶっていた時期である。

 

もちろん、「私をスキーに連れてって(ハートマーク)」……なんて台詞をかけてくださる奇特な女子もいなかったし、万一かけてくださっても、そんなとこに連れてってあげるお金もなかった。だから、映画の『私をスキーに連れてって』を観て、そのロマンチックなシチュエーションと恋愛の機微に憧れ、せめて三上クンの、知世チャンの3割だけでも模倣しようとする男女(=模倣することが可能な彼女or彼氏あるいは意中のヒトがいる男女)が、とにかくひたすら羨ましい……を軽く通り越し、忌々しくてしょうがなかった。苗場まで機関銃でも持っていって皆殺しにしたかった。

 

そう! 誰もがバブル絶頂期に“イイ思い”をしていたとはかぎらないのだ。むしろ、あのころ20代前半〜半ばだった二等兵、新米社会人でしかなかった男性の意外に多くは「先輩社員や一部の早熟な青年実業家やとんねるずやらが札ビラ切ってチャラついているのを横目で見ているだけ」(※反して我々と同世代の女性は、可愛きゃ“この世の春状態”だったゆえ、そういったギャップも我々をいっそう苦しめた)ではなかったのか? 

 

つい先日、「JR SKISKIキャンペーン」の原田知世のポスターに悪意たっぷりな落書きがされているのを目撃した。犯人は絶対に50代! しかも「バブルでイイ思いをし損なった男」だと私は確信している。

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