即興的な演出や定型のシナリオを作らない手法で知られ、『ユキとニナ』『不完全なふたり』『M/OTHER』といった作品を発表してきた諏訪敦彦監督。1月20日から公開される約8年ぶりの新作映画『ライオンは今夜死ぬ』では、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』などヌーヴェルヴァーグの監督の作品に多く出演したジャン=ピエール・レオを主演に起用していている。
『ライオンは今夜死ぬ』の公開を記念して行なわれる今回の特集上映では、自主制作時代の8ミリフィルム作品から35ミリフィルム作品、近年のデジタル作品まで、DVD化されていないものも含む9本を上映。さらに諏訪監督による5日連続のトーク『映画のレッスン―諏訪敦彦映画を語る』も開催される。
上映作品に西島秀俊が出演したデビュー作『2/デュオ』や、三浦友和主演の『M/OTHER』、ベアトリス・ダル、 町田康らが出演した『H Story』をはじめ、『不完全なふたり』、『ユキとニナ』などがラインナップしている。スケジュールの詳細は会場のオフィシャルサイトでチェックしよう。
■諏訪敦彦監督のコメント
今年完成した『ライオンは今夜死ぬ』を含めて、6本の長編映画といくつかの短編。気がつくと、それらを制作するのに30年以上を費やしてしまっていた。
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これらは私の作品であるけれど、私は映画の作者が監督であるということを疑っている。誰も頷いてはくれないが、映画を作ったことがある者なら子供でも知っていること。これらは私の指図だけで作られたものではなく、みなで作ったもの、様々な偶然、出会いや別れ、愛や抵抗、喜びや苦しみが織り合わされて、たまたま一つのフィルムとしてまとめられた出来事に過ぎない。そして、それらが存在するのは誰かに見られているその瞬間、別の人生を生きるその見知らぬ人によって作られて消えてゆく。私の映画は実はどこにも存在しない。
しかし、これらの作品が時を経て今また誰かによって見られ、さまざまな映画として新たに生まれるのだとしたら、私はそれを傍で感じながら、未知の映画について考えてみたい。これは私のための「映画のレッスン」である。