「スカパラ」新シングルジャケットの差しかえ騒動、「オマージュかパクリか」の判決を下すのは誰?

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2018年02月03日 01:00  citrus

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出典:「ハシヅメさんのインスタグラム(@yuyahashizume)」より

J CASTニュースによると、音楽バンド「東京スカパラダイスオーケストラ」の新シングル『ちえのわ feat.峯田和伸』のジャケット画像が、インターネット上で話題を呼んでいる……らしい。事の経緯は、大雑把には

 

ジャケットはアーティストのハシヅメユウヤさんが、漫画家の藤子・F・不二雄さん(1996年死去)の作品を再現した画風で描かれたもの。そこに「藤子・F・不二雄プロと小学館にきちんと許可取ってる…んだよね!?」と、イラストレーターの中村祐介さんがツイッターで疑問視したことで、ネットの注目を集めるように。これら一連の騒動を受けて(か?)、スカパラの公式サイドは後日、ジャケット写真の変更を発表した。

 

……といったもので、とりあえず「(ハシヅメさんの作品は)藤子F作品の一場面をそのまま拡大コピー(トレース)して、髪型、ファッション、色を変えただけのようなものも多く見受けられます」と指摘する中村さんの言い分は、こうである。

 

「『オマージュ?パロディ?パクリ?』という曖昧な論議の向こう側であるこの一線を越えてしまうと、日本はコピー商品を売っても良いということになります」

 

対して、藤子F作品を敬愛し、藤子Fタッチを彷彿させるイラストをすでにインスタグラムなどで公表しているというハシヅメさんの言い分はこうである。

 

「最終的に僕の絵が売れても売れなくてもどっちでもいいんです。きれいごとに聞こえるかもしれないけど、僕の作品をきっかけに、藤子先生の作品の魅力に気づく人が増えて欲しい」

 

まことにもってナーバスな問題ではないか。まず「どちらの言い分が正しくて正しくないか」の“判定”は置いておいて、単純にジャケットの出来を見てみると……すごくいい! 差し替えられた後の「ちえのわ」という文字が描かれているだけのモノより全然完成度は高い、と私は個人的に思った。

 

だが、「藤子・F・不二雄さんへのオマージュを込めた“トリビュート作品”ですら、この出来なんだから、もし本物の藤子F先生…はもう死去されているから無理にしても、せめて藤子プロがコレと同じイラストを描いたら、もっと素晴らしいジャケットになったはず…」っていうのは、ちょっと違う……とも思う。

 

仮に、中村さんがおっしゃるとおり、このイラストが藤子F作品の一場面をそのまま拡大コピーし、トレースする手法で描かれていたとしても、その「コンマ数ミリのズレ」は“原画”との微妙な違和感を紡ぎ集め、結果としてハシヅメさん独自の世界観を充分にかもし出している……と、私の目には写るのだ。そして、「いくら精密にトレースしようと努力してたって、どうしても生じてしまうコンマ数ミリのズレ」こそが“個性”だと私は考える。さらに、「トレースに値する“本家”と出会い、それをチョイスするセンス」も、また“個性”──一種の“才能”として分類されるのではなかろうか。

 

ただ、アンディ・ウォーホルが著名人をモチーフとするシルクスクリーンを大量生産していたのどかな時代ではない、著作権や肖像権などの法律で表現活動がガチガチに縛られている現在、この手のトレース作品に寛容な姿勢を示しすぎると、「日本はコピー商品を売っても良いということになります」といった中村さんの言い分もわからなくはない。

 

ならば、ここは多少の手間は覚悟で、作者本人なり版元なりが藤子プロにおうかがいを立てて、なんらかの金銭が派生するならそれもきっちり支払って、すっきりしたかたちでこの“幻のジャケット”を世に出して欲しい。いや、出して欲しかった。そこさえクリアすれば、たとえ外野がネットでどう騒ごうと、「これはオマージュです!」と、作者側は言い切っておけばよい。「オマージュかパクリか」に真の最終判決を下せるのは、天に召しました藤子F先生しかいないのだから。

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