東京国立近代美術館フィルムセンターは、1952年の国立近代美術館設置時にフィルム・ライブラリーとして発足。1970年に京橋でフィルムセンターとして開館した。現在は相模原にも分館を持ち、8万本に近い映画フィルムやそれぞれ4万冊を超える映画関連資料、シナリオなどを収蔵している。
■日本唯一の国立の映画専門機関が誕生 アドバイザーに山田洋次、河瀬直美ら
日本唯一の国立の映画専門機関となる国立映画アーカイブ。日本における映画文化振興のためのナショナルセンターとしての役割を強化すべく、俳優や監督、制作者らをアドバイザーとして迎えるほか、産学官の関係者やアドバイザーから構成される戦略会議などを行ない、運営方針に反映。また民間資金も活用していくという。
館長には現・東京国立近代美術館フィルムセンター特定研究員で、2009年から国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)第12代会長を務めた岡島尚志が就任予定。
アドバイザーには日本映画製作者連盟会長の岡田裕介、俳優・映画監督の奥田瑛二、映画監督の河瀬直美、日本映画製作者協会代表理事の新藤次郎、株式会社イマジカ・ロボット・ホールディングス代表取締役会長の長瀬文男、東京藝術大学名誉教授で映画館ユーロスペースの代表・堀越謙三、女優の松坂慶子、映画監督の山田洋次の8人が名を連ねる。
|
|
河瀬直美は「『映像』という文化遺産を国の保護のもと、国内外問わず活用されていくことはこれからの人類の発展の為にもとても有意義なことだと感じています」とのコメントを寄せた。
■ミッションは「映画を残す、映画を活かす。」 3つの拠点機能
国立映画アーカイブが掲げるミッションは「映画を残す、映画を活かす。」。
東京国立近代美術館フィルムセンター主幹のとちぎあきらは「国立映画アーカイブになってからも多くの映画や資料を収集し、保存していくという方向性に変わりはない」としながら「これまで日本映画の多くの作品がなくなっている。映画は今ここにあるということが当たり前のことではない。また残っていたとしても多くの人に活用する道が開けていなければないも同然」。
「適切な保存に支えられることで映画や資料を資源として活用していく方法をもっと探していく必要がある。収集・保存・活用を一体として考え、強化・推進していく姿勢」とこのミッションに込められた思いを明かした。
|
|
■ロゴデザインは鈴木一誌、山村浩二による新たな先付け映像もお披露目
ロゴのデザインを手掛けたのはグラフィックデザイナーの鈴木一誌。
さらにこれまで静止画だった先付け映像が新たに10秒間のアニメーションとなる。この先付け映像は『頭山』『カフカ 田舎医者』などで知られるアニメーション作家・山村浩二が制作した。
またこれまで「大ホール」として使用されてきたスペースは4月1日から「長瀬記念ホール OZU」に改称。これは同館に民間から寄付を行なう長瀬映像文化財団の名を冠したと共に、海外では一般的だという敬愛する監督の名を付ける慣習にならって小津安二郎監督の名からとられている。
国立映画アーカイブの独立の背景について東京国立近代美術館・館長の神代浩は「映画文化がこれほど国内外で認められているにもかかわらず、それを収集・保存・活用する国立の機関が独立した形で存在していなかった。これは諸外国を見ても体制としては弱いのではないかという思いがあった」と説明。
|
|
■4月からは開館記念の特集上映 黒澤明のポスター展も
同館では4月10日から開館記念として黒澤明監督『生きものの記録』や小津安二郎監督『彼岸花』などの作品を撮影風景映像などと共に上映する特集上映『国立映画アーカイブ開館記念 映画を残す、映画を活かす。』を開催。さらに無声映画の特集上映や黒澤作品のポスター展、『ロシア・ソビエト映画祭』などの海外作品の上映などを予定している。