渋谷シネパレスが70年の歴史に幕。支配人に閉館理由と思い出を訊く

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2018年05月22日 22:31  CINRA.NET

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渋谷シネパレス外観
渋谷シネパレスが5月27日をもって閉館する。同館は1948年に渋谷パレス座として誕生し、70年間にわたって運営されてきた。戦後間もない時期から脈々と続いてきた長い歴史に、幕を下ろすことになった。

映画館の閉館が各地で相次いでいる。2月に閉館した東京・TOHOシネマズ日劇、3月末に閉館した京都の京都みなみ会館、5月31日で閉館する千葉・イオンシネマ ユーカリが丘、6月1日に閉館する神奈川・横浜ニューテアトルなど枚挙にいとまがない。

中でも渋谷シネパレスはエンターテイメント密集地帯の渋谷にあって、独自の存在感を放つ映画館だ。レトロで清潔感のあるロビー、落ち着いた雰囲気が漂う場内は、密やかな娯楽としての映画の魅力を豊かに伝える。

このたびCINRA.NETでは渋谷シネパレスの支配人・飯田氏にメール取材を行なった。「長い歴史の中で記憶を辿りながらの回答となり、全てを語ることはできない」としながらも、以下のご回答をいただいた。

■閉館理由は「コストパフォーマンスに見合わなくなった」から。再オープンするシネクイントへのエールも

閉館にいたった経緯や理由について単刀直入に質問すると、以下のご回答。

<90年代中盤からシネマコンプレックスの普及とその後のチケットのインターネット販売の普及によりコストパフォーマンスに見合わなくなった。>

渋谷シネパレスと入れ替わるかたちで、2016年に渋谷パルコ建て替えの影響から一時閉館となっていたシネクイントが新たに入居。7月6日にオープンする予定だ。シネクイントに期待している点を問うと、

<渋谷地区の映画文化が過去の輝きを取り戻す布石となってもらえればと思います。>

シネパレスは今後、渋谷もしくはそれ以外の場所で復活する可能性があるのか、という問いには、「あったらいいですね」とのこと。

■長い歴史。思い出の映画は?

これまで数々の作品を上映してきた渋谷シネパレス。特に思い出深い作品を伺うと、懐かしい作品を3つ挙げられた。

<『ライフ・イズ・ビューティフル』1999年4月17日〜
『NIGHT HEAD』1994年11月3日〜
『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』2009年10月30日〜
この3作品は興行的に大成功したのはもちろんですが、劇場の熱気が凄かったです。>

同館のオフィシャルサイトでは「閉館のお知らせ」として、前身の渋谷パレス座からのこれまでを振り返ったページを公開中。これまでの主なヒット作品として、上記3作品に加えて2003年の『座頭市』、2011年の『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』、2006年の『武士の一分』、2005年の『チャーリーとチョコレート工場』、2003年の『ファインディング・ニモ』、2006年の『DEATH NOTE 後編』、1992年の『ゆりかごを揺らす手』、2014年の『あと1センチの恋』が挙げられている。

■劇場がパニックになった、忘れられない出来事。
日々、様々な人が訪れる映画館。思い出深い出来事を伺った。

<過去に当館がパニックに至ったことが2度あり、83年上映のフランシス・フォード・コッポラ監督作品『アウトサイダー』にデビュー前の少年隊が来場して、一帯が少女で溢れ返り、スタッフは訳も分からずパニックに。
94年11月3日『NIGHT HEAD』公開初日に豊川悦司さんと武田真治さんの舞台挨拶があり、一帯は人で埋め尽くされ警察が出動した。>

■「名前が変わっても、また続いて参ります」

取材の最後に、閉館にあたって来場者に伝えたい言葉があればお教えください、と向けると、以下のコメントをいただくことができた。

<「渋谷パレス座」及び「渋谷シネパレス」で観たことを忘れている映画でも、それらの作品がお客様の人生のエッセンスになっていることが願いです。 70年間で1千万程のお客様をお迎えできたスクリーンは名前が変わっても、また続いて参ります。>

来場者との思い出は数えきれないほどあったのでは? と問うと、

<お客様との思い出は私共の心に大切にファイルしております。>

■5月27日まで営業

現在、最終営業日となる5月27日まで特別興行『70年に感謝ワンコイン(500円)でお別れです』を実施中。500円という破格な料金で、角川映画の名作が上映されている。特別興行外の最終上映作品は、『ダンガル きっと、つよくなる』応援上映になる模様だ。この機会にぜひ駆けつけてほしい。
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