METガラも話題 メトロポリタン美術館で「宗教とファッション」探る展覧会

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2018年05月29日 21:41  CINRA.NET

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美術館内展示風景 Gallery View, Medieval Sculpture Hall. Image: ©The Metropolitan Museum of Art
世界最大規模のファッションの祭典『METガラ』。ニューヨークのメトロポリタン美術館に豪華絢爛なファッションに身を包んだセレブが集う毎年恒例のお祭りは、同美術館のコスチューム・インスティチュートの資金集めイベントであり、コスチューム・インスティチュートが手掛けるその年の展覧会が装いのテーマになっている。

昨年は「川久保玲とコム デ ギャルソン」、2016年は「テクノロジー時代のファッション」。そして現地時間5月7日に行なわれた今年の『METガラ』のテーマは「ファッションとカトリック」である。

まるで法王のような荘厳な出で立ちで視線を集めたRihannaや、天使のような羽をつけたケイティ・ペリー、ジャンヌ・ダルク風のZendaya、ポーズまでオリジナリティ溢れるフランシス・マクードマンドなど、今年も個性的で煌びやかな装いがレッドカーペットを賑わせた。

5月10日に開幕した展覧会『Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination』は、メトロポリタン美術館が持つファッションと中世の美術品のコレクションとの対話を通して、現在まで続くファッションとカトリシズムの関わりを検証するという試みだ。ローマ・カトリック教会の総本山であるバチカンからローブや装飾品も出品され、宗教における装飾文化がファッションデザイナーに与えた影響を考察する。

■扱いづらいテーマである「宗教」「カトリック」

「宗教」「カトリック」は、宗教の対立に起因する紛争や暴力の連鎖が多発している現代においては一筋縄ではいかないテーマだ。事実、昨年の発表時から「物議を醸すテーマ」として受け止められていた。

これに対して同展のキュレーターであるアンドリュー・ボルトンは、昨年にニューヨーク・タイムズのインタビューで今回のテーマが刺激的で議論を呼ぶものであることは認めつつ、この展覧会の焦点は「私たちが『カトリックイマジネーション』と呼ぶものにまつわる共有された仮説と、それが芸術家やデザイナーをどのように駆り立て、彼らのクリエイティビティーに対するアプローチを形作ったのかというところにある」とし、「神学や社会学にフォーカスしているのではない」と強調。

事実、ジョン・ガリアーノやココ・シャネル、トム・ブラウンらカトリックの環境で育った西洋のデザイナーは多く、メトロポリタン美術館CEOのダニエル・ウェイスも「カトリックのイメージは芸術的な実践に根ざしており、またその実践によって維持されている。そしてファッションが聖的なイメージやオブジェ、慣習を取り入れていることは、絶え間なく進化する芸術と宗教の間の関係性を維持させてきた」と述べている。

■バチカン不出の作品も多数。礼服や指輪、ティアラなどが一堂に

25の展示室を使って行なわれる本展は、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートが手掛ける過去最大規模の展覧会となる。

展示のハイライトは、システィーナ礼拝堂が保管している40を超える品々。18世紀から21世紀初頭にかけての礼服や指輪、ティアラなどの装飾品が並び、その多くはこれまでバチカンの外に持ち出されたことがないものだという。


バチカンがこれだけの規模の展示品をメトロポリタン美術館に貸し出すのは、1983年に行なわれた『バチカンコレクション展』以来。同展はメトロポリタン美術館の歴代3位の集客を記録しているとあって、今回の展覧会の動員にも期待がかかる。

■シャネル、ヴェルサーチ、ディオール、サン=ローラン...150以上のアンサブルを中世の美術品と共に展示

さらに女性服を中心に、20世紀初頭から現代までの150点以上のアンサンブルを、美術館が所蔵する中世の美術品のコレクションと共に展示。

ビザンチン建築の内装にインスピレーションを受けたデザイナーに光を当てる展示室では、イタリア・ラヴェンナの聖堂のマイクロモザイクに影響を受けたジャンニ・ヴェルサーチ最後のコレクションを紹介。

キリスト教カトリック教会の叙階に焦点を当てた展示室には、ジョン・ガリアーノがクリスチャン・ディオールで手掛けた架空の法王のようなルックなどが並ぶ。

そのほかに紹介されるデザイナーは、アズディン・アライア、クリストバル・バレンシアガ、トム・ブラウン、ドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナ、クリスチャン・ラクロワ、カール・ラガーフェルド、ジャンヌ・ランバン、リック・オウエンス、マリア・グラツィア・キウリ、ピエールパオロ・ピッチョーリ、ステファノ・ピラーティ、イヴ・サン=ローラン、ラフ・シモンズ、ヴィクター・ホスティンとロルフ・スノラン、リカルド・ティッシ、高橋盾、ドナテラ・ヴェルサーチら。ヴェルサーチは本展のスポンサーになっている。

バチカン秘蔵の装飾品から世界のデザイナーたちによる絢爛豪華な衣装までが、メトロポリタン美術館の静謐な空間に一堂に会す本展。宗教と装飾文化の長い歴史を感じられる特別な鑑賞体験ができそうだ。

『Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination』は10月8日までメトロポリタン美術館で開催中。
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