東方神起は再び“前人未到”の地へと向かうーー雨も味方につけた日産スタジアム公演レポ

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2018年06月24日 01:11  リアルサウンド

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「東方神起にとって、みなさんがプライドです」


参考:東方神起の物語が再び動き出すーーファンに「ただいま」伝えた東京ドーム公演レポ


 東方神起には、“前人未到”という言葉がよく似合う。国内最大収容人数を誇る日産スタジアムに、海外アーティストとして初めて立ったのが東方神起だった。思い出の地に5年ぶりに帰ってきた彼らは、またもや偉業を成し遂げた。それは、日産スタジアム史上初となる3DAYS公演。この最終日をもって『Begin Again』ツアーは総動員数100万人を達成。単一ツアーでは海外アーティスト史上最多観客記録を打ち立てた。


 「東方神起にできないことはない」とは、彼らのステージ演出を担当してきたTRFのSAMの言葉だ(参考:サンスポ・コム)。東方神起は私たちの期待を、そして彼ら自身の限界を何度でも超えてくる。6月10日、雨が降り注ぐ中で迎えた圧巻のフィナーレを、記憶にとどめておきたい。


■雨の中で激しく燃える双頭の火の鳥


 朝から生憎の雨に見舞われた日産スタジアム。野外ライブで最も懸念されるのが天候だ。客席での傘の使用は禁止。観客はカッパに身をつつみ、ペンライトをビニール袋に入れて開演時間を待つ。花道もずぶ濡れで、強くなる雨足が水面を叩く。バッドコンディションのステージを見つめ、まずはケガがなく終わってほしいとだけ願っていた。だが、その不安はすぐに彼らが打ち破る。


 赤と青に輝く2頭の火の鳥が重なったセット。その両サイドから「Reboot」のイントロと共に白いボックスが浮上し、ふたりのシルエットが浮き上がると会場から大歓声が沸き起こる。姿を現した2人は、さらに引き締まった印象だ。復帰後、彼らがいかに充実した日々を過ごしているかを感じさせる。ビショビショのステージに降り立ち、一歩進むごとに水しぶきが上がる。だが、それも計算された演出かのように画になってしまうから不思議だ。


 ワイルドにセットされた2人の髪も、雨であっという間に落ちてしまう。チャンミンがその濡れた前髪をかき上げる姿がスクリーンに映し出されると、まるでシャワーシーンを彷彿とさせるセクシーさに会場が息を飲み、次の瞬間悲鳴にも近い黄色い声が上がった。また、ステージキングの異名を持つユンホだが、前髪が下がるとどこか可愛らしい印象に。雨の中で遊びまわる男の子のように、ダンサーと肩を突き合わせて、この逆境を楽しんでいるようだった。悪天候にも関わらず彼らのダンスはむしろ大きくキレが増す。鍛え上げられたフィジカルと、どんな状況にも屈しないアツいメンタル。再始動した2人はより一層、強く美しくなった。


■想いの連鎖が生む愛情溢れる演出たち


 前半はドーム公演同様、激しいダンスナンバーが続く。「ANDROID」では2人が客席の間にある花道を闊歩。巨大プロペラステージが、観客の頭上をぐるりと回転するなど、360度からパフォーマンスを楽しめる演出が続く。そしてユンホの「盛り上がろう!」に合わせて、爆音の特効が鳴り響いた。


 威風堂々としたパフォーマンスに、つい天候を忘れてしまいそうになるが、ライトに照らされた彼らの頭上には滝のように雨が降り注いでいるのがわかる。「Humanoids」では、そんな2人にファンも「TVXQ!」「東方神起!」と精一杯の声援を贈る。その想いを受け取ったユンホは「日産スタジアム楽しんでますか? 盛り上がっていくぜー!」と返し、チャンミンが「Everybody makes some noise!」と絶叫すると、客席からも大喝采が起こった。


 「One More Thing」ではメンバーの手の動きに合わせてペンライトを掲げ、「Superstar」でも掛け声で盛り上げていく観客たち。「B.U.T(BU-AU-TY)」で見せた高さ15メートル・距離130メートルのフライング、スタンド席まで近づいた「Duet」の空中ブランコなど、パワーアップした演出が披露されるたびに、大きな歓声が上がる。そのエネルギーが、ステージに立つ2人、そしてダンサーやミュージシャンたちを奮い立たせているようだった。この場にいる全員が東方神起の前人未到の挑戦を成功に導こうとしている、そんな一体感が生まれていた。


 今年1月の5大ドームツアーの最終日には、裏方のスタッフ全員が場内に呼び出され、大スクリーンに映し出された。先のインタビューで、SAMから「あれは“画面にスタッフを映したい”という2人からの発案だった。2人は“スタッフあっての自分たち”と常に意識している」と語っている。東方神起はファンそしてスタッフに。スタッフもファンも東方神起に。お互いの愛情と感謝が交わされるのが、彼らのライブの魅力だ。スタッフから配布されたライトが映し出した“WE LOVE TOHOSHINKI”の文字は、全員の心が投影されたものに違いない。(Instagram tvxq.official)


■老若男女が楽しめるステージへ


 「なかなかないですよ、こんなライブ会場で雨……。東方神起の野外ライブって、あまりないので。はい、前向きに考えましょう(笑)」MCでは相変わらずのチャンミン節が笑いを誘う。そして2人は、日本デビューした当時ライブ会場にひとりもいなかった男性ファンが、年々増えていることを喜ぶ。男性ファンの声を聞かせてほしいとチャンミンがおねだりしたコールアンドレスポンスは、「風邪引かないように?」(東方神起)、「気をつけましょー!」(男性ファン)というユニークなもの。「今日いちばん伝えたい2人のメッセージですよ」とチャンミンが説明すると、ユンホも「大事だね」と納得し猛々しい掛け合いが繰り広げられる。そして、「頼もしい声で全然風邪引かなさそ♡」と満足げなチャンミンに、みんなが頬を緩めた。


 ユンホは、性別も世代も超えて多くのファンが応援してくれることに感謝しながら、「最近、覚えた日本語なんだっけ、それ。ろーにゃくなど? あ、ろーにゃーくなんにょ(老若男女)! 誰でも楽しめるステージをこれからも作っていきますので、どうぞよろしくお願いします」と相変わらずの勉強熱心な一面を覗かせる。さらに「そだねー! みんな好きだねー、そだねー!」「マジ卍」と、流行語のチェックにも余念がないところも微笑ましい。


 「今日は全力でいくからね、ちゃんとついてきてくださいよ」ほのぼのとしたMCを経て、後半に披露されたのはドームツアーにはなかった楽曲たち。初の5大ドームツアーを開催したアルバム『TIME』のボーナストラック「Rat Tat Tat」、初めてオリコンチャート1位を獲得した「Purple Line」など思い出深い曲も。さらに、ユンホは除隊後初の楽曲参加となったソロ曲「Drop」で観客を圧倒。大勢のダンサーを引き連れる姿は、まさにキングの帰還といった重厚感溢れるパフォーマンスだ。


 一方、チャンミンは観客の誰もが知っているであろう、X JAPANの「Forever Love」を披露。持ち前のハイトーンボイスが聞く側の想定している音に気持ちよく届き、丁寧に歌い上げる。過去にもX JAPANの「Rusty Nail」をカバーしたことがあるチャンミンの楽曲へのリスペクトが感じられる完璧なカバーに、7万3000人が息を呑んだ。


■初心を忘れずに、一緒に歩いて……


 クライマックスには、7月25日にリリースされる新曲「Road」も披露された。チャンミンが「大切な人がいるからこそ次のステップに踏み出せるし、その一歩一歩が素敵な未来に続く道になる、というメッセージの曲です」と紹介すると、観客の持つライトはブルーに輝き、まるで日産スタジアムだけ青空が顔をのぞかせたかのようだった。<君がくれた優しさで 今 僕は踏み出せるさ>と歌う「Road」は、激しいダンスチューンや、甘いバラードとはまた異なる、爽やかな東方神起の魅力を引き出していく。


 ユンホの「最近“おかげさまで”という言葉をよく使うんですけども、考えてみるといつも“かげ”のようにそばにいてくれて支えてくださっている、ここにいるみなさんに一番ぴったりな言葉だと思います。そんなみなさんのことを、僕ユンホは大切に思っております。これからも初心忘れずに一緒に歩いていきたいなと思います」という男気溢れる決意表明に心が熱くなり、チャンミンの「こんなにたくさんの方たちとうれしい瞬間を共にすることができました。絶対忘れないと思います。人と人の間で成立する人間なので、これからもみなさんと関係で成り立つことを誇りに思っています。また、忘れられない思い出をもう一度いつか作りたいなと思うんですけど、できるかできないかはですね、東方神起のみなさん次第じゃないですか(笑)?」という愛くるしい挨拶に思わず笑顔になった。


 2人がステージを後にしてエンドロール映像が流れても、会場からは“東方神起”コールが鳴り止まない。すると「みんな、風邪引いちゃうからね」(ユンホ)、と2人が再び登場。ユンホが「本当に僕たちにとって、みなさんがプライドです。知ってますか? これからもみんなが期待している以上に、頑張っていきたいと思いますので、これからも2人の大きな力になってください」と愛情たっぷりのコメントでファンを喜ばせたかと思うと、チャンミンが「健康が何よりです。さあ、みなさん……帰りましょう(笑)。また、9月からのライブで会いましょう」とユーモラスたっぷりに締めくくった。


 「またね」と再会を約束できる喜び。約2年の会えなかった日々も、この過酷な状況でのライブも、まさに雨降って地固まる。<伸びていく足跡が きっと輝けるMy Road>それは強い絆で結ばれた東方神起とファンそしてスタッフが切り開く、新たな伝説へと続く道。さあ、東方神起を信じて歩いていこう。いざ、“前人未到”の地へ。(佐藤結衣)


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