HELLHOUND新譜リリースインタビュー!徹頭徹尾オールドスクール・メタル!!「老害と言われようと、誰かが続けなくてはならない。その決意表明だ」

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2018年08月04日 19:02  おたぽる

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おたぽる

HELLHOUND(写真/Michele Marcolin)

 徹頭徹尾“M・E・T・A・L”な4人組、HELLHOUNDがニュー・アルバムをリリース! ドラマー交代後、初作品となるその『THE OATH OF ALLEGIANCE TO THE KINGS OF HEAVY METAL』は、'02年結成の彼等にとって通算4枚目のフル・アルバムとなる。例によって、世のトレンドなど全くお構いなし──全編にオールドスクールなメタルの王道が貫き通され、それでいて過去最高に多彩な仕上がりとなった新作について、金切りハイ・トーンの絶対的フロントマン、Crossfireにガッツリ暑苦しく語りまくってもらった…!!



──まずは、ドラマーの交代について。DragonblasterはどうしてHELLHOUNDから脱退したのですか?



Crossfire(以下CF):まぁ簡単に言えば、モチベーションやバイオリズムの波長が、バンドの活動と上手くリンクしなくなってしまった……ってトコかな。当然ながら俺達にも、音楽以外の生活や人生、環境というモノがあって、それらとウマく折り合いを付けながら、これまで一緒にやってきたんだが、それが機能しなくなったのさ。



 バンド活動ってのにはタイミングがあって、それを逃すと、全てが終わってしまう危険もある。本来なら、全てが整うまで待てればイイんだけど、今回はそうもいかなかった……ってことだな。



──後任のMountain Kingは、どんなキッカケでHELLHOUNDに加わることに?



CF:彼はこれまでにも、Dragonblasterが不在の時、ライヴやリハーサルでバンドをサポートしてくれていてね。言わば“第5のメンバー”的な存在だったんだ。だから、HELLHOUNDの持つヴァイブやフィーリングを最も理解してくれている彼にオファーするのは、必然かつ自然な流れだったよ。HELLHOUNDのドラマーとして求められるのは、ただひとつ──何よりもHEAVY METALを愛するスピリット。



 当然、技術的な面でクリアしなければならないレヴェルはあるけど、それがなくては始まらないよ。今どき、ただ黙って正確にビートを刻むだけなら、機械にだって出来るだろ? ちょこまかと小賢しいテクニックも必要ない。必要なのは、バンドの強力なバッテリーとなって俺達のケツを蹴り上げてくれるパワーとフィーリングさ。その点、Mountain Kingは最高な男だ。もちろん、テクニックも素晴らしいけどね!



──新作『THE OATH OF ALLEGIANCE TO THE KINGS OF HEAVY METAL』の曲作りはいつ頃から始めましたか?



CF:“いつ”とはハッキリと言えないかな。俺はいつだって、人生における様々な経験から音楽的にインスパイアされている。ギターを持って、椅子に座って、「よし……やるか!」ってタイプではないんだ。ただ、前作から今回に到るまでに、バンドとして、そして個人として、良いことも悪いことも──これまでの人生を全否定されるような酷いことまで──たくさん経験した。それで俺は“心の旅”に出たのさ。



 その旅を通じて、これまで俺個人として、またバンドとして、知らないうちに囚われていた既成概念を全てデストロイし、よりピュアなHEAVY METALスピリットを得ることが出来たよ。それを確信した時が、全ての始まりと言えるかな。すると、頭の中にぼんやりとあったイメージが全てクリアに浮かび上がってきたんだ。暗闇に浮かび上がる一本の道の様に……ね。それでスタジオに入り、メンバーとジャムりながら一気に仕上げていった。それが今年の3月初旬ぐらいだったかな。



──レコーディングはどのようにして進めましたか?



CF:ジャムったアイデアを元に、ドラム・トラックを録り始めたのが3月中旬で、最終的に完パケたのは5月の中頃だったね。今回は、各自が自宅スタジオでレコーディングした音源を、馴染みのレコーディング・スタジオ──(東京の)西荻窪にあるStudio Akseliでミックスからマスタリングまで行なう……って手法を採ったんだ。だから、各メンバーが自分のプレイとじっくり向き合う時間があって、それがすごく良い結果をもたらしたと思う。これまでのHELLHOUNDは、パッと作ってパッと録る……って感じだったからね。



──制作中のエピソードなどありましたら。



CF:そうだな──1曲目のインスト「鋼鉄軍団のテーマ(Theme)」は、レコーディングが全て終わって、全体的な曲順が決まってから、「何か欲しい!」と思って作ったんだ。外出中、俺の頭にホルストの「火星」をモチーフにしたあの曲が降りてきたから、速攻で自分の車に積んであったギターで弾いてみて、iPhoneのボイスメモに録音し、すぐメンバーにLineで送った。その時、Mountain Kingには「古いディズニー映画みたいなティンパニーを入れたい」って言ったんだけど、参考になる音源として聴いてもらったのは、水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」のイントロだったよ。だから、たった1分のあの曲は、クラシックとディズニーと演歌のエッセンスを詰め込んでHEAVY METALに仕上げたのさ!



 後日──レコーディングも完了したある日に、徹夜明けでヘロヘロになったスタジオのスタッフが、無性にこの曲が聴きたくなり、エンジニアに頼んでプレイバックしてもらった…ってハナシを聞いてさ。「最高の褒め言葉だな!」って思ったよ。また同時に、この短い曲の持つパワーと可能性も確信したね!!



──新作ではどんな音楽性、方向性を目指しましたか?



CF:最近の俺達は“徹頭徹尾HEAVY METAL”ってスローガンを掲げているんだけどさ。とにかく、HEAVY METALそのものであることを意識しているんだ。最近は“フォーマットとしてのメタル”的なモノが流行していて、BABY METALの大ブレークあたりから、上澄みだけかすめ取ろうとすりよってくるヤカラが湧いてきているよね? またその逆も然りで、売れるためにメタルを蔑ろにしようとするヤツも出てきている。いやいや、そんなの違うんだよ。他のジャンルは知らないけど、HEAVY METALはそうじゃない。単なる音楽のジャンルではなく、生き方なんだからな。



 最近、「メタルじゃなかったらモテたのに」みたいなのを見かけたけど、人生にタラレバはない。もし俺がHEAVY METALを愛していなかったら、それって俺という人間じゃなくなる。そういうモノなんだよ。だから、HEAVY METAL以外の何者でもない音に誇りを持って、世の中に提示していくことが大切だ。まぁ、「ただの懐古厨じゃないの?」って思われるかもしれないけど──何かのキッカケでHEAVY METALに興味を持った人に、HEAVY METALそのものを提示している存在が同時代にある……ってことが、新しいHEAVY METALの息吹をサポートすることにつながるんだからさ! 実は、俺達の活動と視線は(懐古ではなく)未来に向かっている。それを強く意識したよ!!



──'15年にデジタル・シングルとしてリリースされた「Sign Of Heavy Metal」が新作にも収められていますが、あれは今回、新たに録り直したのでしょうか?



CF:その曲と「Kill With Metal」に関しては、前任のDragonbalster在籍時にレコーディングしたテイクをそのまま使用しているよ。彼のこれまでのバンドへの貢献に対するリスペクトの意味を込めてね。あと「Sign Of Heavy Metal」は、KING DIAMONDのギタリストでエンジニア/プロデューサーでもあるアンディ・ラロックにマスタリングを依頼したんだ。素晴らしい仕上がりだったから、それをそのまま活かすことにしたよ。



──『THE OATH OF ALLEGIANCE TO THE KINGS OF HEAVY METAL』とは長いタイトルですが、どんな意味が込められているのでしょう?



CF:直訳すれば「鋼鉄王達への忠誠の誓い」で、正にそのままだよ。さっきも話したけど、カタチだけのメタルのオイシイ部分を盗もうとした場合、関わってくるミュージシャンにも、当然メタルへの敬意もクソもないポーザー以下のヤカラがよってきやがる。百歩譲って、メタルをより広い層にアピールするため、他の音楽を採り入れていくっていうのなら分かるんだけど、「手っ取り早くチヤホヤされたい」とか「なんだか売れたような気分を味わいたい」とか、程度の低い目的で、よりターゲットを絞り易い限定的なジャンルにすりよるなんてさ──マジ醜いよね。それに、なぜか大体そういうバカって、自分達よりメタルを低く見てたりするんだよ。



 もし、大手ファミレス・チェーンがラーメン・フェアをやって、「ラーメンでとりあえず一番を狙います」ってドヤったところで、みんなポカーンとして、「はぁ……そっすか」ぐらいしか言えないだろ? でも、実際にはそんなこと言わないよね? 大手チェーンには、それに携わる者としてのプライドと矜持があって、だからこそ迂闊なことは言わないし、言えない。それは同じ世界に携わる者としての礼儀、自重互敬ってヤツで、その程度の礼儀すら身に付いていないようなヤツらは、心の底から軽蔑するし、哀れにすら思うね。そいつらが恐らく手本にしているであろうBABY METALは、作り手のメタル愛が伝わってくるからこそ成功したんであってさ。それすら感じることの出来ない、低レヴェルのバカ以下とは関わる気も起きないし、ヘンに近付くと周りに迷惑をかけちゃうから、そうしないようにすることにした。



 ハナシが逸れちゃったけど、HEAVY METALに限らず、芸術ってモノには歴史があり、先人達の素晴らしい才能と血の滲むような努力があって、そういったモノの上に今の俺達が成り立っている。それを大切に出来ないなんてありえないし、そうなったらこの世は無情の世界になってしまう。だから、たとえ「老害乙」と言われようと、誰かがそれを言い続けなくてはならないんだ。このタイトルは、そういう決意表明でもあるんだよ!



──今作のジャケの元ネタは、MANOWARの『FIGHTING THE WORLD』('87)だと思いますが、裏ジャケの火山から今は亡きメタル・レジェンドの魂が昇っていく様子は、SAVATAGEの『HALL OF THE MOUNTAIN KING』('87)の裏ジャケを想起させます。これは新ドラマーとしてMountain Kingが加入したのに引っ掛けているのでしょうか?



CF:ジャケを描いてくれたアーティストと打ち合わせをしていく中で、「レジェンドはどういったタッチでいきましょうか?」ってハナシになってさ。その時、「こんな感じで」と見せたのが、まさにSAVATAGEのソレだったよ。その際、一瞬「お…? Mountain Kingつながりだな!」って思ったんだけど、それに気付いてくれるなんてうれしいなぁ。



──メタル・レジェンドの魂は8人分描かれていますが、それぞれ解説して頂けますか?



CF:前列は左から、コージー・パウエル(RAINBOW、MSG他)、ロニー・ジェイムズ・ディオ(RAINBOW、DIO他)、レミー・キルミスター(MOTORHEAD)で、真ん中の3人は、クリフ・バートン(METALLICA)、スコット・コロンバス(MANOWAR)、マーク・リアリ(RIOT)だ。後列はゲイリー・ムーア(THIN LIZZY他)とフィル・ライノット(THIN LIZZY)。やっぱりこの2人のコンビは最高だからさ! 本当なら、他にもジョン・ロード(DEEP PURPLE他)やランディ・ローズ(OZZY OSBOURNE)、カール・アルバート(VICIOUS RUMORS)、クリス・オリヴァ(SAVATAGE)…などなど、もっともっと描きたかった。でも、いかんせんスペースの都合もあるからな。ここに描ききれなかったレジェンド達の姿は、みんなのイマジネーションで補ってくれるとうれしいよ。



──ちなみに、歌詞ブックレットに掲載されている“師”“侍”“撃”“源”という漢字は、それぞれ曲名と呼応しているのですか? “師”は表題曲、“侍”は「Requiem For Warrior」でしょうか…?



CF:へ〜そういう見方も出来るんだ! でも、これは各メンバーの“HEAVY METALパート・ネーム”を表している。俺──Crossfire(vo,g)は“Hystericpreacher”だから“師”、Lucifer's Heritage(g)は“666 Strings Samurai”だから“侍”、Blackwind(b)は“Bleeding Sniper”だから“撃”、そしてMountain Kingは“The Battery”だから“源”ってね。このアイデアはLED ZEPPELINが4枚目のアルバム('71年『LED ZEPPELIN IV』)でそれぞれのメンバーをシンボル・マークで表していたのにインスピレーションを得たんだ。ガキの頃から、それって凄くクールなアイデアだと思っていたし、自分達のバンドだとしたら「どうすれば良いかな?」って考えた時に、漢字を使おう……って閃いたのさ。そうすることで、自分達が日本人であるというアイデンティティも同時に表現することが出来るからね。



──今作には、女性コーラスやピアノなどが導入されていて、アルバム全体として楽曲スタイルがさらにヴァラエティ豊かになっていますね?



CF:そうだな……それについては、さっきも言った“心の旅”について話さなければいけないな。前作から今回に到るまでに、俺は人生で様々なことを経験した。プライヴェートでも音楽面でも、最高なことや最悪なことを、本当に色々とね。でも、俺の人生は常にHEAVY METALと共にあり、勿論それは“バンド活動”ってのと密接に結び付いている。ただね──何でもそうだろうけど、“バンド活動”だって長く続けていればいるほど、色々と困難に直面するんだ。これまでの人生を全否定されるような、心をズタズタにされるようなことにも……ね。



 そうなって思い悩んでいる時、偶然、PUBLIC IMAGE LTDの『METAL BOX』('79)ってアルバムを耳にする機会があってさ。それまでにも何回か聴いたことがあったんだけど、今ひとつピンとこなくて、「ジョン・ライドンって、SEX PISTOLSのあとに何でこんなガラっと違う音楽をやったんだろう?」って思っていたんだ。でも──きっと彼は、ジョニー・ロットンとしてのそれまでのSEX PISTOLSのイメージや固定概念を全て叩き潰し、自分が真に求める音楽を追求したかったんだろうなぁ…って、急にスッと心の中へ入ってきた。きっとそれって、SEX PISTOLSや他のパンク・ロッカーが声高に叫んでいた“デストロイ”って思想そのものだな……って気付いた時は、本当に衝撃を受けたよ。パンク・ロックの象徴的な思想を貫くために、自分の中にあるそのパンク・ロック自体を叩き潰すなんて──凄い事だな……ってね!



 そして、それを自分に置き換えた時に思ったんだ。「俺はこれまでのHELLHOUNDや“ミュージシャン=Crossfire”としてのイメージに囚われ過ぎていたんじゃないか?」ってね。だとしたら、俺が“デストロイ”すべきは、これまで自分が囚われていたイメージや固定概念だ! バンド活動を通じて経験したことを、自分達の“実績”って言葉に置き換えちゃうとさ──短絡的には達成感を感じることが出来たりするんだろうけど、それって実は、自分達の伸びしろや可能性を自分達で狭めてしまうことになるんだよ。だって、“実績”としてあることを、また繰り返すのは停滞なワケだから。



 でも、それを単なる“思い出”だと考えたら、またその素晴らしい思い出に向かって頑張れるだろ? だから、俺はそう思うことにしたんだ。HEAVY METALは俺の人生そのものであって、それを捨てて生きることは出来ない。だからもう一度、自分の愛するHEAVY METALという芸術にピュアな心で向き合おう…って決めたのさ。それが今回の作品の豊かさにつながったと思う。音楽的なヴァリエーションは広がったけど、実はHEAVY METALとしてさらに一歩深い領域へ踏み込めた……と実感しているよ。



──そういえば、ベースのBlackwindが「Heavy Metal Never Dies」について、「ピアノなんかメタルじゃねぇ! これを(新作に)入れたら俺は脱退する!!」と発言していたそうで……。ということは、彼は既に脱退してしまったのでしょうか?



CF:あはは……!! その話にはいささか誇張が含まれているな(笑) 



 コトの真相はこうさ。俺が「次のアルバムにはピアノ・バラードを入れる」と言ったところ、ヤツを含むメンバー全員が、「コイツ……何言ってんだ?」という反応を示してね。でも、俺が「あのMANOWARにだって“Heart Of Steel”や“Courage”っていう(ピアノを使った)名曲があるだろ?」と、ジャムりながら曲全体の構想や構成を説明したんだ。すると、レコーディングが全て終わった時、「この曲の素晴らしさを瞬時に理解出来なかった俺が間違っていた…」とBlackwindが言うなり、「俺はHELLHOUNDの一員である資格がない」と自分のベースに火を点けて燃やそうとしたんだよ。そこで俺はこう言ってやった。「間違っていると気付いたのなら、この曲の素晴らしさを伝えることこそ、お前がやるべきことなんじゃないのか!」とね。そして、その場にいたメンバー全員が固い握手を交わし、俺達の結束はより強固になった。正にHEAVY METALの絆さ……!!



──では最後に、今後のライヴ予定を教えてください。



CF:この間、東京でニュー・アルバムのリリース記念イヴェントを終えたばかりだけど、7月28日(土)に大阪・心斎橋 BIG TWIN DINER SHOVELで、翌日の29日(日)には名古屋・上前津 CLUB ZIONでもショウを行なったよ。これはどちらもスウェーデンのメタル・バンド、LECHERYの来日公演のサポートだったんだ。8月18日(土)に、埼玉・浦和の埼玉会館小ホールで行なわれるフェスティヴァルも出演するよ。これはノン・ジャンルで色々な音楽を集めたイヴェントだから、俺達はHEAVY METAL代表としてぶちカマす! みんなのHEAVY METALパワーも併せて炸裂させてくれるとうれしいな!!



 ところで──今この記事を読んでくれているキミには、大切なモノってあるかい? 俺がガキの頃に持っていたグローブも、オモチャも、もうどこかにいっちまったけど、小遣いをためて買ったHEAVY METALのレコードは、今でも大事に持っている。それは俺にとって、かけがえのない宝物だよ。もし、キミがこの先の人生でどんな困難に直面しても、心の中にHEAVY METALがあれば絶対に大丈夫だ!



 だから、このインタビューがキミのHEAVY METALの入り口になれたとしたらうれしいな。そして…もうHEAVY METALのトリコなキミ! 宝物はもうキミ達の心の中にある! この先、俺達HELLHOUNDと最高の鋼鉄人生を歩んでいこう!! 「いざ行かん! 導(しるべ)は此処にあり」…さ!!!!!!!
(文/構成/撮影=奥村裕司)


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