佐野岳の叫びは吉岡里帆に届くのか 『健康で文化的な最低限度の生活』受給者に寄り添うことの困難

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2018年08月15日 06:02  リアルサウンド

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 生活保護を受けたいという島岡光(佐野岳)が区役所を訪れる。彼は自分がうつ病であること以外は何も話そうとしないのだが、えみる(吉岡里帆)たちは、親族による援助が可能かどうかを確認する“扶養照会”をしなければならない。しかし彼は、それを頑なに拒否するのである。


【画像】『健康で文化的な最低限度の生活』に出演した佐野岳


 8月14日に放送された火曜ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)第5話では、ケースワーカーは受給者に“寄り添う”ことが必要でありながら、またもそこに至るまでの困難が垣間見える回となった。


 光を担当することとなったえみるが、家族関係のことを本人に聞くと、彼は「無理なんで」「(僕は)鬱なんで」といった返答しかせず、満足のいく答えは得られない。そのうえ彼は非常に落ち着きがなく、終始貧乏揺すりをし、挙動不審で声も震えている。しかし、彼の父親・島岡雷(小市慢太郎)が医者であることが判明。恐らく、息子ひとり養えるだけの収入はあるはずで、ここは何としてでも扶養照会をせねばならない。


 時同じくして、えみると同期の新人ケースワーカーたちの活動を通し、それぞれの受給者の家族の関係性が見えてくる。えみると栗橋千奈(川栄李奈)、桃浜都(水上京香)らは「だって家族なんだもん。会いたいに決まっている」と口にしていたが、本当にそうなのだろうか。えみるの場合はであるが、自身の良好な家族関係があるからこその、傲慢な思い違いなのではないだろうか。やはり外側からでは分からないことというものがある。


 そんな今回のメインゲストの佐野岳は、『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』(フジテレビ系)第3話にゲストとして登場していたことも記憶に新しいが、今作ではまた違った顔を覗かせた。佐野といえば、身体能力の高い俳優として広く認知されているのではないだろうか。主演を務めた『仮面ライダー鎧武/ガイム』(テレビ朝日系)や、彼と同じように高い身体能力を誇る若手俳優が総集結した『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズなどに登場し、その才能を遺憾なく発揮している。


 そんな彼のスポーティな魅力は、ここ最近の作品では、アクションがなくとも演じる役と結びついてきたように思う。今作での光役は、スポーツマンとは程遠いキャラクター。佐野が多く演じる、男気あふれる快活な印象は微塵もなく、若くして心身ともに疲れ果ててしまった青年像を、目配せ一つといった細部で体現してみせた。その姿は痛ましいほどである。


 光の父である雷が、えみるたちの前に姿を現す。しかし、それを知った光は全力で逃げ出してしまう。父・雷は見る限り、まっとうそうな、好人物とも思える人物だが、時おり見せる表情はどこか怪しい。やがて父子の関係のシビアな真実が明るみになることだろう。となれば、えみるは彼らの、よりプライベートな領域に足を踏み入れることとなるはずである。


 受給者に寄り添うことの困難。それはこのケースワーカーと受給者との関係にとどまらず、あらゆる場での人間関係にも当てはまるものだとも思える。本作は、改めて他者との関わり方を見つめ直す契機を与えてくれる作品でもあるのだ。次週、この父子の関係はどういった展開を迎えるのか。そして彼らに対して、えみるはどういった動きを見せるのか。ヒリヒリとした緊張感を抱えたまま、これから1週間を待つことになりそうだ。


(折田侑駿)


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