トランプ弾劾に向けて、いよいよ共和党の保守本流が動き出す? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

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2018年08月23日 12:12  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<元側近2人が「有罪」になったことで秋の中間選挙への影響が注目されるが、株式市場が平静を保っているのはあるシナリオが想定されているからという見方が>


今週21日、一日のうちにトランプ大統領の元側近2人が「有罪」になるというニュースが駆け回りました。1人は2015年にトランプ陣営の選対委員長を務めていたポール・マナフォート、もう1人はトランプの個人弁護士だったマイケル・コーエンです。


この2人については、それぞれ別の事件として捜査され、刑事事件として審理されていました。それが、同じ日に2人それぞれが「有罪」となったということで、ニュース性は非常にあるわけで、その日から翌日にかけて、アメリカのメディアは大きく取り上げていました。


ですが、大変な衝撃が走ったとか、大統領の地位がこれで一気に揺らいだということではないようです。その証拠に、翌日のニューヨーク株式市場は平静でした。報道の量は多かったのに受け止めが冷静だった理由としては、色々と挙げることができます。


まず、マナフォートの事件は、トランプ選対に入る前、ウクライナの親ロシア派の政治顧問をしていた時代にできたロシアとの関係が問われました。ただ、今回は外国に秘密口座を持ったり、資金洗浄や脱税を行なったりしたことが有罪になっただけで、ロシアに買収されていたとか、トランプ選対の中でロシアとの癒着行為を行ったことはではありません。ですから今回の「有罪判決」は本丸へのプロセスのようなもので、それ自体のインパクトは弱いのです。


一方で、コーエンの問題は、2人の女性に対して「トランプ大統領との情事」について「口止め料」を払ったというもので、選挙資金の不正な支出等の罪状です。マナフォートの事件と違って、同じ「有罪」と言っても判決が出たのではなく、コーエン本人が「有罪」を認めて司法取引に応じた形になっています。ちなみに、コーエンは有罪を認める中で、大統領自身が「口止め料支払い」に関与したと明言しています。ですが、こちらも全てが予想された範囲であって衝撃度は限られていました。


社会的な受け止め方、あるいは市場の反応が平静だった理由としては、それ以上に「アメリカの分裂」があります。もちろん、民主党支持者などトランプ政権への反対派にしてみれば、今回の「2つの有罪」のことはトランプ政権の腐敗や癒着が暴かれたものとして評価しています。


ですが、トランプ支持者にしてみれば、マナフォートへの捜査も、コーエンの証言も「民主党などワシントンの権力者たちがFBIを使ってやっている陰謀」だということになり、今回の「有罪」というニュースにも全く動じる気配はありません。ですから、「元側近が有罪」という報道が全米にショックを与え、支持者の中に「大統領には裏切られた」という印象が広がるようなことは、ほぼ皆無であると言っていいでしょう。それだけ分裂は激しいのです。


ただ、2つの有罪報道のショックは少なくても、全米の中間層に「トランプ離れ」を起こさせるという意味では、今回のニュースが「ジワジワと効いてくる」可能性を指摘する声は大きいようです。そこで言われ始めているのは、2つのシナリオです。


1つ目は、11月の中間選挙で、連邦下院の過半数を民主党が奪い返す可能性が、今回の「ダブル有罪」でさらに現実味を増したというものです。仮にそうなれば、民主党は大統領弾劾に進むでしょう。実際に、民主党の下院議員候補の中には「トランプ弾劾」を公約に掲げている例が増えています。


ですが、仮に民主党主導で「大統領弾劾」が行われるようでは、政局は空転することになり世相としては一気に不透明感が漂うことになります。市場は、そのような動きは嫌うはずです。それにも関わらず、「ダブル有罪」を受けた株式市場が平静であったということは、どういう意味なのか、今週あたりから囁かれているのは2つ目のシナリオです。


それは、中間選挙の結果に関わらず、中間選挙後には、共和党の本流なども「大統領弾劾」の動きに合流するという見方です。どうせ、この政権が持たないのであれば、この際「民主党が主導ではない」格好で、しかも時間をかけずに一気にトランプを弾劾し罷免に追い込んでしまおう、共和党の内部にもそうした動きがあるというのです。


その中には、今回の「ダブル有罪」を受けて社会も市場も動揺しなかったのは、ペンス副大統領が昇任するとして、「ペンス大統領」の登場が「信認された」意味として受け止めるべきだ、そんな声まで出て来ているのです。


今回の「ダブル有罪」を受けても、特にコーエン証言が大統領の違法行為加担を暴露した格好になっているのにも関わらず、「コーエンの指摘は虚偽」だと突っぱねるなど大統領は強気です。ですが、その背後では、静かに「トランプ降ろし」の動きが始まっているのかもしれません。2016年初頭の大統領予備選においては、「トランプ降ろし」に失敗した共和党の保守本流ですが、「メチャクチャな政治の弊害」が全米に、そして全世界に及ぶなか、今度という今度は本気だという見方もあります。


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  • アメリカに代わる世界のリーダーの出現に期待するならアメリカも変わるね。そこ手放せるの?
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