ISSA、RIDER CHIPS、上木彩矢 w TAKUYA、三浦大知……『平成ライダーシリーズ』主題歌の変遷

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2018年09月09日 08:02  リアルサウンド

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 平成仮面ライダーシリーズの総決算として、9月2日に放送開始した『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)。奥野荘が演じる主人公・常磐ソウゴの突飛な発言が目立つキャラクターとあわせ、Shuta Sueyoshi feat. ISSAによる主題歌「Over “Quartzer”」が話題となっている。かつてAAA DEN-O formの一員として『仮面ライダー電王』の主題歌「Climax Jump」を担当した末吉秀太と、『仮面ライダー555』の主題歌「Justiφ’s」を歌ったISSA(DA PUMP)によるユニットは、まさに平成最後のシリーズを担当するに相応しいタッグと言えるだろう。


 同シリーズの主題歌は、初作『仮面ライダークウガ』から16作目『ドライブ』まで一貫して、作詞家の藤林聖子が制作に参加していたが、近年はアーティストの持ち味を活かしたテイストに仕上がっている。本稿では、そんな主題歌の変遷やサウンドの魅力に迫りたい。


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■ISSA「Justiφ’s」


 2003年放送の『仮面ライダー555』では、ISSA(DA PUMP)が「Justiφ’s」で主題歌を担当。同楽曲では、平成仮面ライダーシリーズにおいて初めて、アニメ・特撮ソングを専門としない邦楽アーティストが歌唱した。この路線変更は、現在の『ジオウ』まで途切れておらず、同シリーズの重要なターニングポイントのひとつといえる。


 また、〈信じること疑うこと/Dilemmaはキリがない〉というサビの歌詞も印象深い。ドラマ本編では、人類の進化形態“オルフェノク”が敵として登場するが、彼らは人間と変わらぬ姿形や思考を持っており、時には信頼していた人間から裏切られるシーンも見られる。藤林の紡ぐ言葉には、そんな仮面ライダーとオルフェノクが抱く、“2つの正義”が反映されているようだ。


■RIDER CHIPS Featuring Ricky「ELEMENTS」


 翌年に放送された『仮面ライダー剣』では、2000年結成の仮面ライダー公式専属バンド・RIDER CHIPSが、ボーカルにRickyを迎えて「ELEMENTS」を演奏。同楽曲は、メンバーの野村義男による太いギターの音色が特徴的だ。また、〈心に剣(つるぎ) かがやく勇気 確かに閉じこめて〉という冒頭の一節は、子供にもやさしい端的な譜割りが施されており、サビに向かってサウンドに厚みが増していく、J-POP特有のドラマ性も含んでいる。


 さらに、「Justiφ’s」へのアンサーソングとしての一面も備えており、〈ジレンマに叫ぶ声は/不可能を壊してく〉や〈未来 悲しみが終わる場所〉といった箇所は、「Justiφ’s」と繋がる部分だ。シリーズを跨いでの視聴者を喜ばせる粋な演出があるのも、藤林が作品を超えて作詞に携わった結実だろう。


 そこから同シリーズは、『カブト』で主演を務めた水嶋ヒロ、『電王』では佐藤健、『キバ』からは瀬戸康史らを輩出。若手俳優にとっての登竜門となるに伴い、番組ターゲットも子供のみならず、彼らの母親世代へと裾野を広げた。そして、2009年放送の『仮面ライダーディケイド』でシリーズ10周年を迎え、一段落がついたのだろう。次作『仮面ライダーW』の主題歌からは、複数アーティストがコラボするなど、新たな試みも見られるようになった。


■上木彩矢 w TAKUYA「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」


 『仮面ライダーW』では、桐山漣がハードボイルドな探偵を目指す左翔太郎を演じ、現在はソロアーティストとしても活躍する菅田将暉が、青年・フィリップに扮する。彼らが2人で1人の仮面ライダーに変身することが取り上げられることの多い同作だが、その主題歌に対しても大きな反響があった。それが、上木彩矢と元JUDY AND MARYのTAKUYAがタッグを組んだ「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」だ。


 同楽曲では、『W』で提示された“2人で1人”という新たなライダー像を意識したのか、上木とTAKUYAが”W”ボーカルを担当。上木のメロディアスな歌声に、TAKUYAの力強いラップが挟まれる様子が、飄々としたフィリップと熱血漢な左の関係性を思い起こさせる。『W』にとって、これ以上に似合う楽曲はないだろう。


 そして近年の平成仮面ライダーシリーズは、『ジオウ』で主人公を務める奥野と同様、『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』やミュージカル『テニスの王子様』出身俳優を起用するなど、10代から20代の若年女性層もターゲット化しているようだ。あわせて、TwitterなどのSNSが発達したことで、ファン同士の交流も以前に増して盛んになっている。それに伴うように、2015年放送『仮面ライダーゴースト』の氣志團「我ら思う、故に我ら在り」以降、アーティスト自身が作詞作曲を担当するケースも見られるようになった。


■三浦大知「EXCITE」


 2016年放送の『仮面ライダーエグゼイド』では、三浦大知が「EXCITE」を提供した。その年の『日本レコード大賞』で優秀作品賞を受賞した同楽曲は、Kanata Okajima、UTA、Carpainterが作編曲を担当。なかでもCarpainterは、東京を拠点とするダンスミュージックレーベル<TREKKIE TRAX>を主宰しており、今年7月にはデモ音源公募企画を開くなど、国内ネットレーベルシーンを牽引する気鋭のトラックメイカーだ。


 そんな彼が当時、積極的に制作していた音楽ジャンルが、“フューチャーベース”だ。フューチャーベースは、クラブミュージックにおけるサブジャンルのひとつで、キラキラとしたシンセサイザーや、歌声を切り刻んだカットアップが特徴的だ。「EXCITE」において、同ジャンルの色味は前面に押し出されていないものの、近未来感のあるエレクトロサウンドは、ゲームをモチーフとした『エグゼイド』の世界観にうってつけだ。


 あわせて、三浦は同楽曲について「音楽を届ける側の人間として、作った曲が長く聴かれる環境に置かれるっていうのはすごく素敵なことだと思う」と語っている(参考:三浦大知「EXCITE」オフィシャルインタビュー)。多くの視聴者と長きにわたって寄り添う仮面ライダー作品の主題歌だからこそ、アーティストもとりわけ力を注ぐのかもしれない。


 かねてより平成仮面ライダーシリーズを楽しんできた若い世代も、まもなく家庭を築く時節に差し掛かる。そんな彼らにむけて、今後はさらにプログレッシブな主題歌が制作されると思われる。現在放送中の『ジオウ』、そして今後登場するであろう仮面ライダー作品からも目が離せなさそうだ。(青木皓太)


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