大橋彩香のニューシングル『ハイライト』が11月21日に発売される。表題曲はTVアニメ『叛逆性ミリオンアーサー』(TOKYO MXほか)オープニング主題歌となっており、透明感のあるボーカルの中に、これまで以上の感情表現や芯の強さを受け取れるような彩り豊かな一曲だ。2ndアルバムの発売と初ワンマンホールライブを終えた後の彼女は、この楽曲を発表するまでにどのような心境を迎えたのか。ライブの振り返りから、シングルの話題を中心に話を聞いた。(編集部)
(関連:大橋彩香、シングル『ハイライト』で迎えた表現者としての覚醒「自分の色も出せた手応えがある」)
■よりエンターテインメントなライブを
――半年ほど前の話になりますが、5月にパシフィコ横浜国立大ホールでの初ワンマンライブ「大橋彩香 Special Live 2018 〜 PROGRESS 〜 」を大成功させた大橋さん。ソロアーティストとして初のホールワンマンはいかがでしたか?
大橋彩香(以下、大橋):無事に終わってよかったなっていうのがまずひとつと、時間が経って改めて思うのは、本当にすごいところでライブをやらせていただいたんだなって。大人数で立つのと1人で立つのは全然違ったし、ステージもすごく広く感じました。あと先日、普通にお客さんとして別のアーティストのライブをパシフィコに見に行ったんです。そしたら「人、めっちゃ多くない?」ってビックリして(笑)。「ここでライブやったんだなー」ってしみじみつぶやいたら、一緒に行ってたお母さんが「やったのよ。すごいのよ」って。それが妙にうれしかったです。
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――時間の経過とともに、「すごいことをやったんだ!」って実感が湧いてきた感じですか?
大橋:そうですね。ライブタイトルにも「Special Live」って付いてたんですけど、本当に特別な1日になったなって思います。
――ワンマンを具体的に振り返ると、冒頭からいきなりのドラムパフォーマンス。会場の度肝を抜きましたね。
大橋:最初は中盤くらいでやろうかなと思ってたんですけど、まわりの方たちに「いや、ド頭でいこう」って提案されて。それでやることになったんですけど……でも、まさかあんなに高い場所でやるとは思ってなかったんですよ!
――メインステージの高くリフトアップした場所にドラムセットがスタンバイ。正直、あれは怖かったですか?
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大橋:私、高所が苦手なんです。だからリハで初めてあの高さを知った時は「殺す気か!」ってビックリしました(笑)。しかも(ドラムを)叩くと揺れるし、開演早々ここから落ちちゃったらどうしようとか考えてましたね。無事にドラムパフォーマンスを終えて、下に降りて1曲目「NOISY LOVE POWER☆」を歌えた時はホッとしました(笑)。
――あはははは。
大橋:客席で見ていたお母さんも、最初、幕が落ちてドラムの位置を見た時に「今回の(バックバンドの)ドラムの方はあんな高いところで叩くのね」って思ったらしいんですよ。でもよく見たら「あれ? うちの娘だ!!」って。ビックリしたらしいです(笑)。でも冒頭がドラムでよかったこともあって。あれで緊張が一気にほぐれた分、1曲目がすごく歌いやすかったんです。いつもは1曲目でめちゃめちゃ緊張して、2曲目から軌道に乗るって感じなので、1曲目からフルパワーで行けたのはありたがかったです。
――本格的なダンスにも今回初めて挑戦しましたが、手応えはいかがでしたか?
大橋:すごく難しかったです。今振り返っても「あれは不格好だったな」って思うし、まだまだ練習が必要ですね。ダンスは好きなんですけど、その想いにスキルが追い付いていかないというか。パシフィコは「ダンスがやりたい!」って衝動的に思って、5カ月くらいの練習期間でパッと出ちゃったので、次はもっとトレーニングを重ねたステージを見ていただきたいです。
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――達成感もありつつ、次への課題も見つかったということですね。新たな目標やアイデアも湧いてきたりしました?
大橋:会場が全てではないっていうのはもちろん分かってるんですけど、パシフィコを経て、徐々にまた大きな会場に行けたらいいなって。私がプライベートでライブを見に行くのって、アリーナやドームの会場が多いんですよ。そんなアーティストばかり見ちゃってるので、「私だって気球乗りたい!」「爆発みたいな特効をやりたい!」って(笑)。
――ド派手な演出に憧れちゃうわけですね。
大橋:よりエンターテインメントなライブがしたいなって気持ちはどんどん膨らんでいると思います。会場に関わらず面白いことができるのが真のエンターテイナーだと思うんですけど、もっともっとスケールの大きな景色が見たいなって。
――あと初のホールという大舞台を経て、“歌”に対する気持ちに変化はありましたか?
大橋:ああ、昔よりも難しく感じるようになりましたね。何回歌っても満足できなくて、何が正解なんだろう? どういうニュアンスを入れるのがいいんだろう? とか、いろいろ考えるようになっちゃって。
――そうなんですね。
大橋:今まではバンドの曲を聴くことが多かったんですが、最近はダンス系のアーティストを好んで聴いていて。ダンスを踊るような人たちの新しいパフォーマンススタイルみたいなものも気になって、それぞれのよいところを自分に取り入れるには……みたいなことは結構悩んでますね。かといって自分らしさをなくしてしまうのも絶対嫌だし、レコーディングの前もライブの時も「うーん、歌って難しいなぁ」って。
――それは表現に対する欲が出てきたということ?
大橋:それはあると思います。昔よりアニソンのフェスに出させていただく機会も増えて、他のアーティストの表現力の豊かさに「悔しいな」って思うことも多いし。
――トンネルを抜ける時期はいつかやってくるんでしょうか。
大橋:これを乗り越えたら何かが変わる気はするんですけど、なかなか答えが見つからない。声量だってもっと上げたいし、声質もパワフルになったらいいなーとか思うんですけど、体づくりが違うのか、発声が違うのか、そもそも歌い方が違うのか……とか、そのへんも深く考えちゃって。
――悶々としていますね。
大橋:そうなんですよー。で、実は今、ボイトレに通ってみたいなと思っていて。
――今まで1回も受けたことないんですか?
大橋:ないんです。今さらですけど、ボイトレで基礎から改めて教わったら何か変わるんじゃないかなって。……今、すごく歌を教わりたいです。
■昔より確実に表現力は上がってる
――ニューシングル「ハイライト」は、テレビアニメ『叛逆性ミリオンアーサー』のオープニング主題歌。どんな楽曲になっていますか?
大橋:メロディがスッと入ってくるような、明るくキャッチーな1曲です。カッコよさや大人っぽさもあるし、また新しい大橋彩香を見せられるんじゃないかなって。バトル系のアニメということで、歌詞からは「仲間と力を合わせて頑張っていこう」というメッセージが感じ取れるし、そういう曲は歌ってても力が湧いてきますね。
――楽曲選びには大橋さんも参加したんですか?
大橋:はい。いくつかの候補の中から選ばせていただきました。その後も、曲調に関してスタッフさんといろいろ話をさせてもらって。「歌詞はちょっと切なめで」っていうのと、「2段階のサビにしたい」、「のびのび歌えるように言葉数をあまり詰めないように」っていうのは言わせていただきました。
――2段階のサビはご自身からの意見だったんですね。圧倒的なグルーブ感を持ったフレーズがとても爽快で、グッと引き込まれました。
大橋:ありがとうございます。特にラストサビ前はこだわりたくて、直前のDメロは「エモい感じにしたいです」って言ったらだいぶ熱い感じに仕上がって。私、Dメロ厨なんですよ(笑)。Dメロ〜ラスサビの展開はすごく気に入ってます。
――確かにDメロからラスサビのアガり方は圧巻。ライブでも盛り上がりそうですね。
大橋:そうなんです。でもDメロにたどり着くまでに体力を失っちゃいそうで怖いです(笑)。私の楽曲って体力が必要な作品が本当に多くて、バランスを見ながらセトリを組むのが大変なんですよ。この「ハイライト」も間違いなくそういう曲になっていきそう。頑張って歌えるようにトレーニングしたいと思います。
――ストーリー仕立てのMVは、どんな仕上がりになっていますか?
大橋:2人の登場人物を私が演じているんですが、ストーリー仕立てのMVは初めてということもあり、表情の演技が難しかったです。今までたくさんやってきてるんですけど、リップシンクとか、実は自分の顔が出るものがすごく苦手なんです……。だから相当苦戦したんですけど、その分、表情で魅せるお芝居の勉強になったなって。
――ストーリーは、簡単にどんな内容ですか?
大橋:アーティストとして輝いている大橋彩香と、内気で前に踏み出せず、ずっと何か物足りない感を抱えている大橋彩香が出てきて。内気なほうが家のベッドでアーティスト・大橋彩香の動画を見てたと思ったら、途中で部屋を飛び出して……というストーリーで、最終的に2人は1人だった、どんな人にも「ハイライト」な部分がある、という感じですね。イヤリングが同じだったり、いろいろ伏線は散りばめられてるんですけど、何度見ても楽しめるようなギミックの効いた作品になったと思います。
――内気な方のシーンは、大橋さんのプライベートを覗き見しているような気持ちになりました。
大橋:あはははは。確かに家で動画を見てる時は私もあんな感じです(笑)。ゴロゴロしながら、最近は好きなダンス系アーティストのライブ映像やメイク動画を見てますね。
――ところで、この曲はダンスがついたらすごくカッコいいと思うんです。その予定ってあるんですか?
大橋:はい! むしろダンスをつけるつもりでこの曲は作りました。振り入れはこれからだし、まだ披露するタイミングも決まってないんですけど、早めに練習を始めて完成度を上げたいなと思います。
――今回のシングルは「彩香盤」と「輝夜盤」があって、「輝夜盤」のカップリングには「いとうつくしき光の中で」を収録。スマートフォンゲーム「拡散性ミリオンアーサー」で大橋さんが声優を務めるキャラクター・輝夜として歌う1曲ですね。
大橋:輝夜としては4年前くらいに一度キャラソンを出していて、それ以来なんですけど、前作とは雰囲気がだいぶ違います。前は和風メタルな曲で激しい感じだったんですけど今回は壮大なバラード。輝夜ちゃんも大人になったんだなーって感じてもらえるナンバーになっています。あとこの曲はコブシがいっぱい効いてて。「ここにコブシ入れてください」って、レコーディングの前に歌詞を見たらめちゃめちゃ線が引いてあったんですよ。こんなにもコブシを入れる曲は初めてだったし、普段なかなかやらないので難しかったんですけど、歌っていくうちにコブシの操り方みたいなものが掴めてすごく勉強になりました。皆さんもきっとこれを歌えばコブシが上手になると思いますよ。ぜひ、コブシ練習曲にどうぞ(笑)。
――最後に改めて、今回のシングルが完成してみていかがですか?
大橋:タイアップソングってなると、どうしても作品に寄り添った世界観になりがちですけど、作品に寄り添った世界観がまず大事だと思うんですけど、今回はそれプラス自分の色もちゃんと出せたなって手応えがあって。ジャケットもシンプルでアーティスティックな感じに変化を遂げているので、ぜひ手に取っていただけたらうれしいです。
――ジャケットは、今年5月にリリースしたアルバム『PROGRESS』からイメージがガラッと変わりましたよね。
大橋:来年でもう25歳なので、ビジュアルも少しずつ大人っぽくしていけたらなと。もちろん、これまでの元気で明るい大橋彩香を完全に卒業するわけではないんですけど、年相応な感じも見せて行けたらいいなって思うし、現にそういう楽曲も少しずつ増えてきています。
――今は幅広くいろんな畑を耕してる感じなんですね。
大橋:はい。そしたらライブもきっとつらくないんじゃないかなって。私はファンの方から多幸感みたいなものを求められることが多くて、曲も明るくハッピーなものが多いんですけど、実際の性格は真逆なんですよ。切ない失恋ソングだったり、ちょっと沈んだ曲だったり、これからはそういう作品も増やしていって幅広い層に寄り添える歌を歌いたいなと思います。
――未来の明確なビジョンもいろいろ描けているし、2019年の大橋さんも勢いたっぷりに突っ走っていきそうですね。
大橋:来年はさらなるスキルアップを目標に、歌やパフォーマンスでもっとお客さんに説得力を届けられる人になりたいです。例えば、圧倒的なステージングにみんな黙って見入っちゃうみたいな……。
――実際そういうライブを目撃したことがあるんですか?
大橋:そうですね。つい最近行ったアーティストのライブで、全員がじっと見入っちゃうシーンがあったんです。他の曲では掛け声とかガンガン湧き起こるような方なんですけど、そこだけみんな声も出ない感じでじっと見つめてて。私もそうやって、場を完全に掌握できるようパフォーマンスができたらいいなって。
――そのためには先ほどから大橋さんもおっしゃっていますが、やはり「表現力の向上」が鍵ですかね?
大橋:自分で言うのも変なんですけど、昔より確実に表現力は上がってると思うんです。以前は0か100かみたいな歌い方しかできなかったけど、楽曲ごとにいろんなパーセンテージで歌えるようになってきたし、歌詞により感情を乗せられるようにもなったのかなって。声優のお芝居と歌は、表現という部分では近しいものだなとずっと思っているので、これからも両方やらせていただく中で互いに影響しあったり、向上させていけるものがあればいいなと思っています。(川倉由起子)
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