沢口靖子は“ご長寿アニメキャラ”のよう? 『科捜研の女』シリーズ長期化支えるマリコの変化

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2018年11月29日 06:02  リアルサウンド

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 現在、シリーズ第18弾を放送中の人気ドラマ『科捜研の女 season18』(テレビ朝日系)。1999年のスタートから現在まで続く同作の根強い人気を支えているのは、他でもない、主人公で京都府警科学捜査研究所の法医研究員・榊マリコを演じる沢口靖子だろう。


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 沢口靖子の女優としての評価には、どうしても「棒読み」「無表情」という意見がいつも挙げられる。だが、榊マリコを、もし他の女優が演じていたら、こんなにもキュートで魅力的なキャラクターは生まれなかっただろう。榊マリコは、そのまんま沢口靖子の素材としての魅力が存分に詰まったキャラクターだからだ。


 沢口靖子の連ドラデビューは、朝ドラ『澪つくし』(1985年/NHK)のヒロイン・かをる役。パッチリした大きな瞳と小さく上品な口元、美形すぎる顔立ちと、棒読みすぎる演技は、話題になった。あれから30数年。驚くほどに沢口靖子は、顔も体型も老けていない。それどころか、大人の女優になってから、年々若返っているという声すらある。まるでご長寿アニメのキャラクターのようだ。


 そして、演技もまた、年輪を重ねた渋みなどとは無縁。人形のように美しく、乱れることない表情と発声は、「科学を愛するリケジョ(理系女子)」のキャラクターに見事にハマっている。また、時折、目を見開き、妙な「間」でハキハキと大きな声で話す、空気が読めない感じも、愛らしい。どこまで演技なのか天然なのかわからない、周りが見えなくなる集中力の高さと真面目さは、ズッコケ感を生み、事件の真相解決というシリアスなテーマにコメディ要素をもたらしている。


 実に見事なキャスティングとキャラクター設定・演出だが、実はこのマリコ、最初からこういうキャラクターだったわけではない。スタート時から見ている、古くからのファンは知っていることだが、初期のマリコは「科学オタク」ではあるものの、明るく元気で、一生懸命で、ちょっとドジなヒロインだった。典型的な「朝ドラヒロイン」像を引きずっていたのだろう。


 だが、シリーズが長期化し、クールで無表情で上品かつ知性的なキャラに変わっていった。その理由は明らかにされていないが、おそらく殉職する刑事などもいる環境と、マリコ自身の加齢と経験、さらに共演者が入れ替わることによる関係性の変化によるシフトチェンジなのではないか。


 そして、このキャラクターチェンジこそが、実はシリーズ長期化を支える肝だったと思う。そもそも事件解決の糸口となるわずかな証拠や、かすかな違和感などを描く作品の性質上、情感たっぷりな演技や、繊細でリアルな感情表現などは、本筋にとって邪魔になることがある。


 また、極力表情の変化を抑えた演技と、冷静で淡々とした喋りのヒロインだからこそ、意外にも情に脆く、不意に涙をこぼしたり、名コンビである土門(内藤剛志)に嫉妬したり、動揺したりする感情のかすかな表出に、視聴者はドキッとさせられ、可愛いと思ってしまう。


 さらに、シーズン16からは、「老けないご長寿アニメキャラ」のような安定感抜群のビジュアル特性を存分に生かし、「衝撃的なマリコのワンカット」も導入。動物の着ぐるみを着たり、新選組になったり、「マリコ姫」になったり、シャーロック・ホームズになったり、肉と一緒に吊るされたり、遊びまくっている。まるで人気キャラ同士のコラボを見るような贅沢感があるから、不思議だ。


 年齢を重ねても渋みや深みに移行していくのではなく、少女のような可憐さと透明感、猪突猛進の真っすぐさを維持し続け、雑味を落とし、純度の高さを極めている女優・沢口靖子。制作サイドの創作意欲を刺激し、視聴者を常にワクワクさせてくれる存在として、いつまでも変わらず、キュートであり続けてほしい。


(田幸和歌子)


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  • 部下の土門(内藤剛志)と上司の藤倉(金田明夫)。同枠で4月になると上司部下の関係が入れ替わるものだから、ご老人の視聴者がいつも軽く混乱している…(笑)
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