RADWIMPS、SKY-HI、ぼくりり……キャリアのターニングポイントとなる傑作新譜5選

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2018年12月11日 08:02  リアルサウンド

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 ジャンルの枠を完全に超えたRADWIMPSの約2年ぶりのニューアルバム、アーティスト活動の終了を宣言したぼくのりりっくのぼうよみのラストアルバム、まさかの再ブレイクを果たしたDA PUMPの新作など、キャリアを左右する5作品を紹介。大きなターニングポイントを迎えたアーティストたちの新たな傑作を、たっぷりと堪能してほしい。


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 「前前前世 [original ver.]」を含む大ヒットアルバム『人間開花』以来、約2年ぶりとなるRADWIMPS待望のフルアルバム『ANTI ANTI GENERATION』。シングル曲「サイハテアイニ」「洗脳」「カタルシスト」のほか、「IKIJIBIKI feat.Taka」「泣き出しそうだよ feat.あいみょん」といったコラボ楽曲、衝撃的な映像表現を含むMVが話題を集めている「PAPARAZZI〜*この物語はフィクションです〜」などを収めた本作は、ジャンルの融合がさらに加速。オルタナ、R&B、ヒップホップ、ジャズ、ネオソウルなどのテイストを貪欲に取り入れることで、もはや完全にロックバンドの枠を逸脱した作品に仕上がっている。サウンドメイク、リリック、映像などすべての領域において、賛否両論を巻き起こしながら新たな表現へ突き進むスタンス、それ自体がおどろくほどに刺激的だ。


 タイトルの『JAPRISON』は“JAPAN +PRISON”と“JAPanese Rap IS ON”を意味する造語、つまりは“日本という名の監獄”と“日本のラップの現在地”を同時に示したアルバムというわけだ。あまりにもSKY-HIらしい問題意識を含んだ題名だが、実際に本作は、現在の日本にはびこる閉鎖的な雰囲気をリアルに反映させながら、著しい進化を遂げている日本語のラップミュージックの現在地を提示する作品としても成立している。K-HIPHOPアーティスト・Ja Mezzや<Hi-Lite Records>所属のプロデューサー・Yosiが参加しているのも本作の大きな意義。彼はいま、“アジア発のラッパー”としての存在感をさらに強めつつあるようだ。空気を読まないでガンガン突き進んでほしいと、切に願う。


 2019年1月でアーティスト活動を終了するぼくのりりっくのぼうよみのラストアルバム『没落』から感じられるのは、音楽業界に対する嫌悪感でも“どうせ自分なんて”というニヒリズムでもなく、これまで積み重ねてきたキャリアと価値観を破壊し、揺るぎない独自の意志を備えた人間として生まれ変わりたいという切実な願いだ。最後に収録されている「超克」に象徴されるように、哲学者のニーチェが提唱した超人思想に通じる本作の在り方は、奥深いメッセージと最新鋭のヒップホップを融合させたぼくりりの音楽の最終形態であると同時に、「どんな形にせよ、この人は表現を続けるはずだ」という確信につながる。デビューから本作に至るプロセスを追体験できるベスト盤『人間』もぜひチェックしてほしい。


 2018年の音楽シーンを象徴するヒットチューン「U.S.A.」を含むDA PUMPのベストアルバム『THANX!!!!!!! Neo Best of DA PUMP』。デビュー曲「Feelin’ Good 〜It’s PARADISE〜」(1997年)、代表曲「if…」(2000年)といった代表曲のボーカルトラックをリレコーディングした本作は、20年を超えるキャリアを総括しつつ、現在のDA PUMPの勢いを強くアピールするアイテムだ。軸を担っているのはもちろん、ISSAのボーカル。90年代後半のR&B、ヒップホップとわかりやすいJ-POPに結びつけたトラックを完璧に乗りこなし、匂い立つような色気と正確無比なピッチを同時に体現する彼の歌は、やはり唯一無二。こんなにもグルーヴィな日本語の歌を歌えるシンガーは、ISSA以外には思い当たらない。


 “生まれ育った場所を離れ、沖縄、アフリカ、宇宙へ旅する少年と犬”をテーマにした、まるでロードムービーのような七尾旅人のニューアルバム『Stray Dogs』には、モザンビーク内戦をモチーフにした「Across Africa」、沖縄の高江ヘリパッド問題とリンクした「蒼い魚」、デビッド・ボウイ逝去の日に作曲された「DAVID BOWIE ON THE MOON」、3.11の震災直後にモチーフが生まれ、大切な人の自死をきっかけに再構築されたという「きみはうつくしい」など、リアルな現実を直視しながら、時空を超えるような普遍的ポップソングへと昇華した12曲を収録。20年のキャリアのなかで積み重ねられた思考、音像、歌が導く77分7秒の旅を(できればWi-Fiのつながらない場所で)ゆったりと堪能してほしい。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。


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