嵐会見の「無責任」質問記者と、ジャーナリスト池上彰との共通点

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2019年01月31日 01:00  citrus

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出典:「テレ東プラス あさま山荘事件とは何だったのか?〜山荘内部をスクープ取材!〜」より

 

1月27日の夜に放送されていた『池上ワールド あさま山荘事件とは何だったのか?〜山荘内部をスクープ取材〜』(テレビ東京系)が、じつに濃厚な内容で、ついついテレビの前に釘付け状態となってしまった。

 

事件から47年が経った本年(※ロケは去年だった可能性もある?)、山荘内部をスクープ撮影。事件に関わった警察関係者などの話を聞きながら、“現場”の軽井沢周辺を「案内人」の池上彰(68)と「旅人」の草刈民代(53)、森本智子(テレビ東京アナウンサー)が訪れ、当時は大学生で、事件に深い関心を持ち続ける池上を中心とし、多角的に検証する2時間におよぶ“力作”である。

 

さらに、同番組のクライマックスには、刑期を終えた元連合赤軍メンバーへの直撃も。山岳地帯で行っていた軍事訓練の一つである妙義(山)ベースに捜査の手が迫り、逃走──軽井沢駅で逮捕され(逃げのびた坂口弘ら5人があさま山荘事件を起こした)、1998年に出所した(懲役20年)植垣康博氏(70)への独占インタビューに成功している。

 

そこでの、とくに私の印象に強く残ったやりとり(録画していなかったので多少の記憶違いはあるけれど)の、おおよそを以下に記しておきたい。

 

池上:自分に非があるということを気づいたのはいつごろですか?

 

植垣氏:拘置所に入ってからかな? あのなかは独りでじっくり物事を見つめ直すにはもってこいの環境だから…。

 

池上:では、それまでは思考停止していたってことですね?

 

たちまちインタビューイが狼狽する。「すごいツッコミだなぁ…」と仰天した。いつもにこやかで好々爺然とした、あの池上サンが……だ。「やっぱ、このヒトって、骨の髄からジャーナリストなんだな…」と、これまでのテレビタレントとしての「わかりやすく政治経済について教えてくれる優しいおじさん」的なイメージが180度変わってしまった。そういえば、選挙特番とかでも首相や幹事長クラスの政治家に、けっこうグイグイと聞きづらいこと質問してたし……。

 

その同日、「活動休止」を報告する、嵐の記者会見を観た。そして、そこでの「(活動休止は)無責任じゃないかという指摘もあると思う」といった某記者による質問に多くの人たちが不快感を示し、ちょっとした炎上状態となっている。

 

私も、ライブでその言葉を聞いたとき、「なんだコイツは!?」と幾分かの違和感を覚えた。あえて例えるなら、結婚披露宴の余興で「捨てられた我が身が〜みじめに、なるだけ〜♪」と、内山田洋とクールファイブの『そして神戸』を熱唱する新郎の上司をヒヤヒヤしながら眺めているような心境だろうか。

 

ただ、あらためて頭を整理してみると、あの質問は、あの「お約束風になごやかな雰囲気で進行されつつあった出来レース的な会見」に案外必要だったのでは……って気もしなくはない。エコノミストの伊藤洋一氏も『直撃LIVEグッディ!』でこう指摘している。(※東スポより抜粋)

 

「記者会見に緊張感が走るのはいいことであって、それをきっかけに真実があぶり出されることもある」

 

実際、櫻井翔(37)は「2年近くの期間をかけて感謝の思いを伝えていく期間を設定した。これは我々の誠意です。たくさんのパフォーマンスを見てもらい、それが果たして無責任かどうかを判断していただければ」と冷静に返答し、いっそう好感度を高める結果をまねいた。その翌日には櫻井本人も、自身がニュースキャスターを務める『news zero』(日本テレビ系)で、「あの質問をいただいたおかげで、伝えられたことがある」と、その記者を擁護している。

 

あえて相手を怒らせて本音を引き出す手法は、インタビューにおける常套テクニックの一つだったりする。欧米をはじめとする海外のメディア記者は、会見中に極力相手が嫌がる、相手を困らせる質問を全身全霊で捻り出すらしい。それこそがジャーナリストとしての使命、存在意義……との理屈なのだという。

 

たしかに「無責任」という刺々しい言葉のチョイスは、いささか無神経・無遠慮だったかもしれない。が、この「無責任」発言を、また同様に池上サンの「思考停止」発言をきっかけとして場の空気はガラッと変わり、“その後”の展開が(控えめな表現をしても)「微妙に」方向転換されたのも、またたしかなのだ。

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