濱田岳あってこその『フルーツ宅配便』 白石和彌&沖田修一、両極端な作風が好評

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2019年02月22日 17:21  リアルサウンド

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 独創的な作品セレクトで人気を得ているテレビ東京系の深夜ドラマ枠「ドラマ24」。現在放送されている『フルーツ宅配便』でも、地上波の連続ドラマでは異例といえるデリヘルの世界を描いている。その主演を務めるのは、『釣りバカ日誌 〜新入社員 浜崎伝助〜』(テレビ東京系)の“二代目ハマちゃん”としても知られる濱田岳だ。


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 濱田演じる咲田真一は、地元のラーメン屋で再会した謎多き男・ミスジ(松尾スズキ)に勧められ、流されるままにデリヘルの雇われ店長になってしまった男。つまり咲田はその世界のことを何も知らないド素人。ゆえに店の女の子への接し方もごく普通なうえに、このうえなく優しい。その人間味にあふれたキャラクターは、濱田が演じることによりとぼけた味わいがプラスされ、一般的にはあまり知られていないデリヘルという異世界と視聴者の架け橋になっている。


 濱田といえば、コメディからシリアスまで、さらには主役から脇役まで、オールマイティにこなせる俳優。この『フルーツ宅配便』でもさまざまな表情を見せている。とくに第1話でDV夫の借金を返すためにデリヘルで働き始めたシングルマザーの“ゆず”(内山理名)を哀れに思い、自分のお金を差し出すものの、借金の保証人になってほしいと頼まれ、血相をかけて家を飛び出すシーンで見せた演技は、咲田の優しさと小心者なところが絶妙に表現されていて、濱田の芸達者ぶりに改めて感嘆した。


 原作者の鈴木良雄氏もオフィシャルコメントで「濱田岳さんはシリアスもコミカルも自然に演じられる数少ない俳優さん」と絶賛しているが、濱田が『フルーツ宅配便』で主演を務める意味は、まさにそこにある。というのも、映画監督の白石和彌と沖田修一という両極端な作風を持つ二人がこのドラマの演出を手掛けているから。


 白石監督といえば、実際に起きた殺人事件を基にした『凶悪』で注目され、北海道警の闇を暴いた『日本で一番悪い奴ら』、暴力団の抗争とそれに巻き込まれる刑事の姿を描いた『孤狼の血』など、激しいバイオレンス描写で知られる監督。一方、沖田監督は、南極観測隊の料理人を務めた男性のエッセイを映画化した『南極料理人』、お人よし大学生の青春ドラマ『横道世之介』、画家・熊谷守一と妻の日常を描いた『モリのいる場所』など、どちらかといえばほのぼのとした作風を持つ監督である。


 ゆえに、この二人が同じドラマで演出を手掛けると最初に聞いたときは驚いたが、その作風の違いは『フルーツ宅配便』にも表れている。白石監督が演出を務めた回(第1、2、3話)は、デリヘル界のシビアな現実を見つめたストーリーが多く、沖田監督の回(第4、5、6話)はデリヘルの内情よりも人間にクローズアップし、人情噺に近いものが多い。つまり、このドラマにはシリアスもコミカルも両方が存在し、それを体現できるのは濱田しかいなかったということ。白石監督がオフィシャルコメントで濱田のことを“最高のパートナー”と表現しているとおり、濱田あってこそのドラマ『フルーツ宅配便』と言っても過言ではないだろう。


(馬場英美)


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