『イノセンス』市川実日子が出ていれば間違いない!? 役者に寄せられる“信頼感”が視聴者を動かす

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2019年02月23日 06:11  リアルサウンド

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 坂口健太郎が身近に潜む冤罪の恐怖と向き合い、犠牲となった人々を救うドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系、以下『イノセンス』)。内容に関しては、放送開始当初より「『99.9-刑事専門弁護士-』に似ている」「『ガリレオ』や『アンナチュラル』みたい」など、「既視感がある」と感じる視聴者の声が多数あがっていた。にもかかわらず、興味深いのは、一部に見られる「市川実日子が出てるから見る!」という声だ。


【写真】『アンナチュラル』で東海林を演じた市川実日子


 市川実日子が『イノセンス』で演じているのは、テレビ日本の報道局社会部ディレクターで、冤罪事件を取材している有馬聡子。正直、出番は決して多いとはいえない。しかし、いや、だからこそ、Twitter上では以下のようなコメントが見られる。


「市川実日子さん目当てで見てます〜市川実日子をもっとくれ〜」
「市川実日子の出番は少ないのにイノセンスというドラマは市川実日子のドラマなのではないかという程の存在感」
「市川実日子さんが『イノセンス〜冤罪弁護士〜』というドラマに出演されています。市川さんが出演されているだけで、このドラマを見る気になってしまいます」
「市川実日子さんがいれば大丈夫な気がするから勝手に心強い」


 市川実日子というと、まず視聴者の中に『アンナチュラル』(TBS系)で演じた主人公・ミコトの同僚の臨床検査技師・東海林夕子の印象が今も残っている面はあるのだろう。それにしても、メインキャストではなく、出番も多くない脇役でありながら「この人が出ていると面白そう」と思わせるのは、すごい存在だ。


 同様に、出演者の中に名前が出ているだけで「この人が出るなら観てみたい」と思わせる役者といえば、1月クールのドラマでは『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)の西島秀俊や、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の菅田将暉、昨年放送では『dele』(テレビ朝日系)で菅田とW主演だった山田孝之、『獣になれない私たち』(日本テレビ系、以下『けもなれ』)の黒木華、『半分、青い。』(NHK)や『義母と娘のブルース』(TBS系)の佐藤健、『anone』(日本テレビ系)の田中裕子や小林聡美、一昨年放送の『リバース』(TBS系)の藤原竜也などがいるだろう。


 田中裕子などの大御所や主演は別として、脇にいるだけで「間違いない」印象を与える役者とは何なのだろうか。


 一つには、藤原竜也や佐藤健のように、活動の主軸を舞台や映画に置き、連ドラでなかなかお目にかかれない稀少性があるだろう。


 市川の場合は、『シン・ゴジラ』などの大ヒット映画で強烈な印象のリケジョを演じていたほか、荻上直子監督の『めがね』や、行定勲監督の『ナラタージュ』、石井裕也監督の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、吉田大八の『羊の木』など、様々な監督の作品で、いずれも強い個性を放っている。


 また、前述の『けもなれ』など、野木亜紀子作品に多数出演している黒木華のように、市川は『すいか』などの木皿泉作品の印象も強く、「人気脚本家とのタッグ」ということもあるだろう。


 加えて、『メゾン・ド・ポリス』でおっさんワチャワチャチームの中にいながら、アイロンがけによって一人集中力を発揮する別ポジションの西島、『けもなれ』で引きこもっていた黒木華のように、作品の中で他者と交わらない隔絶された存在であることも、存在感を高める一つの要因になっているのではないだろうか。


 市川の淡々とした表情と、凛とした佇まいには、「群れない」「媚びない」「交わらない」「おもねない」空気が漂っている。そんな数々の役柄から結び付けてイメージされる本人像と、出演作の傾向から勝手に想像する「作品・役柄選びに対するこだわり」に対して、視聴者は安心感・信頼感を抱く。


 今は、ドラマが視聴率をとりにくい時代。スター俳優・女優が出ているだけでドラマを見るような人は少なくなっているし、SNSなどですぐに感想・評判を共有し合える状況もあり、「確かな作品を観たい」と考える視聴者が多くなっているのだろう。その「確かさ」の基準の一つに、脚本家や演出家があるように、市川のような役者個人に寄せられる「信頼感」が一種の「お墨付き」になっているのではないだろうか。


(田幸和歌子)


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