DA PUMP、西川貴教、石崎ひゅーい、細野晴臣、TK……新たなフェーズに入ったアーティストの新作

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2019年03月05日 07:01  リアルサウンド

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 爆発的な再ブレイクを果たしたDA PUMPのニューシングル、本人名義によるプロジェクトをスタートさせた西川貴教の1stアルバムなど、新しいフェーズに入ったアーティストの新作を紹介。キャリアを重ねるなかで起きる刺激的な変化、そこで生まれる新たな表現の発露を実感してほしい。


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 「U.S.A.」の記録的大ヒットに続き、ベストアルバム『THANX!!!!!!! Neo Best of DA PUMP』がオリコン週間アルバムチャート2位を獲得、さらに16年ぶりに『第69回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出場を果たすなど、日本のポップス史上、類を見ないほどのカムバックを体現したDA PUMP。新たな勝負の年となる2019年の第1弾シングルの表題曲「桜」は、全盛期の彼らの雰囲気(たとえば「if…」)、「U.S.A.」に共通するユーロビートリバイバル系のダサかっこいいトラック、さらに和テイストのメロディを加えたミディアムチューン。いろんな要素をテンコ盛りにしたナンバーだが、決して散漫な印象はなく、ISSAの質の高いボーカルによって、新しくて懐かしい桜ソングとして成立している。


 西川貴教名義のソロ活動が本格スタートというニュースを聞いたときは、「その手があったか」という驚きがあったが、じつはこのプロジェクト、数年前から水面下で進行していたという。その基本となるテーマは、ボーカリスト・西川貴教の新たな可能性を模索すること。布袋寅泰、澤野弘之、Fear,and Loathing in Las Vegas、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)など幅広いジャンルのクリエイターが参加した新アルバム『SINGularity』を聴けば、どんな曲でも自分のモノにする強烈な個性、そして、「こんな曲も歌えるのか?!」という驚異的な表現力の広さ。作詞家、作曲家の「こんな歌を歌わせてみたい」という創作意欲を駆り立てる彼のボーカリゼーションはここから、さらに大きな飛躍を遂げることになりそうだ。


 生々しさを増したバンドのアンサンブル(ベースがデカめのミックスがカッコいい)とともに〈ひらひら舞って星屑になれ/あなたはどこにいるの?〉と恋人を想う女性の姿をエモーショナルに歌い上げた「あなたはどこにいるの」、切れ味のいいギターフレーズ、ファンキーなグルーヴをしっかり捉えながら、男女のセクシーなやりとりを映し出す「SEXY」、菅田将暉に提供した楽曲をさらに性急なサウンドに変貌させた「さよならエレジー」などを収めた石崎ひゅーいのミニアルバム『ゴールデンエイジ』。フォーク、歌謡のエッセンスを色濃く残した音作り、聴き手の感情に愚直に訴えかけるような歌詞を軸にした石崎ひゅーいの音楽は、ここにきて確実に求心力を上げている。あいみょん、菅田将暉との交流も注目を集めている彼だが、本格的なブレイクはすぐそこまで迫っている。


 1973年にリリースされたソロデビュー作『HOSONO HOUSE』の楽曲を自らリアレンジ、再レコーディングした細野晴臣の新作『HOCHONO HOUSE』。演奏、歌唱、エンジニアリングもすべて自身の手で行い、10年代以降に起きた世界的な音響の変革ともリンクした、独創的かつ革新的なサウンドが実現している。打ち込みをベースにした楽曲を中心に、アコースティックな弾き語りから1970年代の貴重なライブ音源、「CHOO CHOO ガタゴト・アメリカ編」「僕は一寸・夏編」など歌詞を変えたバージョンも収められ、まさに聴きどころ満載。さらに深みを増したボーカルも絶品だ。エレクトロへの回帰という文脈で捉えると、YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)散開後の最初のソロアルバム『S・F・X』(1984年)とのつながりも見えてくる。


 映画『スパイダーマン:スパイダーバース』日本語吹替版主題歌に起用されたTK from 凛として時雨の新シングル表題曲「P.S. RED I」。ファルセットを効果的に活かした鋭くて繊細なボーカル、緻密に積み上げられたトラックメイク、シャープな手触りのギターサウンド、起伏に富んだメロディラインなど、TK from 凛として時雨の個性を決定づけるファクターが刺激的なバランスで融合されたナンバー。エキゾチックなリズム、クラシカルな要素を取り入れた中間のパートを含め、構築美とダイナミズムを拮抗させる彼のスタイルは、作品を重ねるごとに確実に進化しているようだ。カップリングの「moving on」にはゲストボーカルとしてSalyuが参加している。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。


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