稲垣吾郎、“主演小説”『ロストマン ロンリーハート』連載開始 通常の逆をいく新たな読書体験に

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2019年03月11日 09:11  リアルサウンド

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 稲垣吾郎・主演の小説『ロストマン ロンリーハート』が、雑誌『週刊女性』にて連載を開始した。小説なのに“主演”とは? そんな少しの違和感と期待を胸にページをめくると、目に飛び込んできたのは、小説から抜き出てきたようなバスローブ姿の稲垣が。さらに「僕のすべてを見透かされているような気がして、ちょっと怖かったんです。それぐらい僕と主人公の“新開タカオ”との共通点がいっぱいありました」との感想コメントも。


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 この小説の著者は、映画『らせん』や、ドラマ『沙粧妙子-最後の事件-』『ギフト』など数々のヒット作品を手がけてきた、映画監督・小説家の飯田譲治。本作は、稲垣吾郎をモデルに主人公をあて書きする、という新たな試みだ。飯田はTwitterで「必ず映像化します。そのために書いている小説。主演、稲垣吾郎」と断言し、「普通は? なんにも決まってないとかいって、実はどこかで制作して誰をキャスティングするかしっかり決まってたりするんですが、これはほんとになんにも決まってないんです。そういう意味で、まったく新しい挑戦。笑える」とも。


 私たちが知っているのは、小説→映像化決定→主演の発表の流れ。だが、この小説は、まず主演の発表→映像化宣言→小説の連載スタート……と、見事に逆をいく。既成概念にとらわれず、これまでになかった何かが創られていく。常に時代の開拓者であった稲垣が、また新しい“小説の楽しみ方”を見せてくれるようだ。


 早速、読み進めてみると、この読書体験はちょっと癖になりそうだ。予め「モデルは稲垣だ」と言われているからこそ、主人公・新開タカオの言葉が、自然とそして鮮明に稲垣の声で脳内再生される。新開タカオが車を運転すれば、稲垣が注意深く安全を確認して、ハンドルを回す仕草が想像できる。女性とキスを交わそうとすれば、顔を近づけるときの伏し目がちな表情、影を落とすまつ毛、色気を帯びた唇……いわば読者1人ひとりが演出家と言わんばかりに、稲垣が頭の中で動き出す。そして、いつか映像化された暁には、飯田ver.の想像を目の当たりにして「そう来たか!」と、盛り上がる違いない。


 稲垣が草なぎ剛、香取慎吾と共に、新しい地図をスタートさせて以来、彼らの作品は作り手もファンも同じ“NAKAMA”という、限りなく対等に近い関係性が強く感じられるようになった。飯田も「報告できることが起きたらツイッターでお知らせしていくようにしますね」とつぶやいており、この小説は“発信する著者と受信する読者”という一方通行の構図では収まらない連帯感を楽しむことができそうだ。


 物語は、ぜひ誌面にて楽しんでいただきたいが、稲垣の中にある新開タカオとの共通点についてひとことだけ言わせてほしい。少々ネタバレになるので、まだ読まれていないという方はここでUターンを……。


 新開タカオは決して清廉潔白な人ではない。完全無欠なヒーローでもない。むしろ直感的で、弱さもあり、ガシャポンが好きというどこか少年性も感じさせるわかりやすいキャラクターだ。一方、アイドル稲垣吾郎は、プライベートがミステリアスだと長年言われてきた。だが、最近の稲垣は、その素顔を惜しげもなく披露している。特に、毎月1回7.2時間の生放送『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)ではスタッフの段取りの悪さにやきもきする“イラチ”な部分を隠すことなく出していく。『星のドラゴンクエスト』とのタッグでは独特なこだわりを主張して周囲を翻弄し、TikTokではあざといほどのキュートな表情を見せている。コレクション趣味もガシャポンかワインかだけの違いと考えればかなり近い。


 一般的なアイドルが若さゆえに幼さと危うさを含んだ魅力を放ち、徐々に素性の見えない大人へと成長していくのに対して、最近の稲垣は特に年齢を重ねるごとに人間味に溢れ、ほっておけない存在になっているように思う。つまり稲垣吾郎自身が、通常の逆をいく楽しさを体現しているのかもしれない。そう、まるでこの小説のように。


 ますます稲垣以上に、この新しい小説の主演にふさわしい俳優はいなかったと思えてくる。そしてNAKAMA以上に、この小説を映像化まで見守ってくれる応援団もいないのではないか。そう思うと俄然、この新しい取り組みに参加する面白さが増してくる。他の誰もが実現していない、新しい何かに参加するワクワク感を、存分に味わっていきたい。(文=佐藤結衣)


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