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第3次Queenブームの今読みたい、時空を超えた盗作スペクタクル 『僕はビートルズ』

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2019年03月12日 17:02  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

写真『僕はビートルズ』(モーニング KC)
『僕はビートルズ』(モーニング KC)

 皆さんビートルズ好きですか? とりあえず、嫌いってことはないですよね? 昔から、ほとんどの日本人はビートルズとQueenのことが好きだって決まっているんです。いわば、国民総にわかビートルズファン状態です。そんな、ビートルズがほどほどに好きな皆さんに今回ご紹介するのは『僕はビートルズ』(モーニング KC)。作品のタイトルを見て「いや違うだろ…って即刻否定したくなるマンガってそうそうないと思うのですが、これがまさしくそれでした。

 表紙に描かれているキャラクターはどう見ても日本人だし、特にビートルズに似てもいないし。100%「お前はビートルズじゃない」って言い切れます。ところが読んでみると、「やべえ、こいつら本当にビートルズかもしれない……」と思えてしまう、そんな作品だったのです。ちょっと何言ってるかわからないと思いますので、これから説明しましょう。

 本作は、凡人にはまず思い浮かばない大変トリッキーなストーリーです。ビートルズを愛しすぎる日本のビートルズコピーバンド「ファブ・フォー」のメンバーたちが、2010年の現代から、なぜかビートルズがこの世にデビューする前年の1961年(昭和36年)に突然タイムスリップ。それをいいことに、ビートルズの曲を自分たちのオリジナル曲として世間に出したら世界的に大人気となってしまい、本家のビートルズが消滅の危機に……というお話です。

 要するに、ビートルズを盗作した日本人バンドの物語なんですけど、そのスケールがデカすぎるのです。なにせ、本物が生まれる前の時代にタイムスリップしてるんですから。そりゃあ、盗作ぐらい余裕でできますよね。

 というわけで、まずは時空を超えたビートルズのパクリをやらかしたファブ・フォーのメンバーを紹介しましょう。

●蜂矢翔(はちや・しょう)

 愛称・ショウ。ビートルズのギター、ジョージ・ハリスンのパートを担当。ジョージと同じく、他のメンバーに比べてキャラが薄いのですが、一応本作の主人公です。ビートルズの曲をパクった罪悪感で一番苦しんでいるのがこのショウ。まだ良心が残っているあたり、メンバー中で一番マトモといえるキャラクターです。

●鳩村真琴(はとむら・まこと)

 愛称・マコト。ビートルズにおけるポール・マッカートニーのパートで、ベーシスト兼ヴォーカル。ポールに合わせてギターを左利きに矯正するほど、狂信的なまでにビートルズの完コピにこだわる男。この男がタイムスリップ後の日本で、まだ世に生まれてないはずのビートルズの名曲「イエスタデイ」を世間に披露し、真顔で「俺が書いた曲です」と言い放ったことがすべての混乱の始まり。

●鷹津礼(たかつ・れい) 

 愛称・レイ。ビートルズにおけるジョン・レノンのパートで、ギター兼ヴォーカル。ただのビートルズの完コピバンドで終わりたくない、オリジナルの精神こそビートルズだ! という主張のため、完コピ主義のマコトとしょっちゅうぶつかり、ついには脱退。ビートルズでも、ジョンが脱退するエピソードがあるので、それになぞらえている感じですね。

●鶴野コンタ(つるの・コンタ)

 愛称・コンタ。その昔「リンゴすったー!」と缶チューハイのCMでダジャレをかましたことで有名なリンゴ・スターのドラムパートを担当。一見、温厚で一番マトモそうなのですが、1961年にタイムスリップした直後に、速攻でストリップ嬢のヒモに収まるという、ダメな意味で順応性の高さを見せつけてくれます。

 テクニックなら本物よりも上を自任する、自称日本一のビートルズコピーバンド「ファブ・フォー」。そんな彼らに、すごいチャンスが巡ってきました。聖地英・リバプールで開催される世界一のビートルズバンドを決めるイベント、ビートルズ・コンベンションへの出演が決まったのです。

 しかし、世界一のビートルズバンドになり、二代目ビートルズになろうとする野望を持つマコトと、コピーバンドからの脱却をしたがっていたレイの意見が対立。コンベンションを目の前にして、レイが脱退を告げるのです。

 地下鉄六本木のホームで押し問答になるマコトとレイ、それを静止しようとするショウ。もみ合いになってホームから落ち、あわや地下鉄に轢かれる……というところで、まさかのタイムスリップ。そこはビートルズデビューの前年・61年の吉祥寺でした。

「コピーバンドのくせに、二代目ビートルズって……」「ビートルズのデビュー前年に、都合よくタイムスリップするって……」などなど、この時点でとにかく突っ込みたくなる要素満載です。

盗作のおかげで一躍超人気バンドに

 1961年にタイムスリップしたファブ・フォーのメンバーたちですが、マコトとショウがたまたま同じ場所に飛ばされ、一緒に行動することに。この時点で、ほかの2名はどこに飛ばされたのかはまだ不明です。

 マコトとショウはラーメン屋でラーメンを食べるも、支払った硬貨に「平成」と入っていたため、偽金疑惑でラーメン屋の大将に警察に突き出されそうになります。そこを助けてくれたのが、流しの演歌ギタリスト「竜さん」。エルビスに憧れて上京したものの、夢破れて流しで演歌を歌う日々の竜さんですが、マコトとショウが歌いだした自称オリジナル曲「イエスタデイ」を聴き、その才能に惚れ込み、俺がビッグにしてやるとばかりにいろいろと世話をし始めます。

 ライブの前座で「オール・マイ・ラヴィング」を披露したところ、新進気鋭の芸能プロ・マキプロダクションの社長の目に留まり、プロデビューすることになるのです。

 英語の歌詞が敬遠され、大手レコード会社には相手にされず、メンバーも2人だけだったため、当時誰も思いつかなかった自主制作&オーバーダブ録音の手法をマコトが提案。そして完成したレコード「抱きしめたい」はラジオでかかった途端に大ヒット、自主制作のレコードは品切れ。あっという間に謎のバンド、ファブ・フォーの存在は日本中に知れわたります。

 その後はストリップ嬢のヒモをやっていたコンタと、工事現場で働いていたレイもバンドに再合流。パワーアップして完全体となり、日本人のミュージシャンながらイギリスのUKチャートで1位と2位を独占するなど、世界を股にかけるモンスターバンドに成長。しかし、その裏で、本家ビートルズはというと……ファブ・フォーの楽曲を聴いたジョン・レノンが自信喪失し、解散状態に陥ってしまうのです。

 ビートルズに成り代わって着々と歴史を変えていくファブ・フォーを待っているのは、天国のような世界的スターへの道なのか、それとも地獄のような贖罪の日々なのか……そんな思いが交錯するストーリーとなっています。

 このマンガのクレイジーな面白さを支えているのは、ビートルズ愛が強すぎるゆえに、いろいろとありえない行動を取るマコトの存在です。ファブ・フォーのデビューレコードでは不足しているレイとコンタのパートの代わりにプロのセッションミュージシャンを入れるのですが、完璧主義のマコトが、ビートルズのレコードとまったく同じように演奏することを要求します。

「譜面どおりに弾くのは当たり前だ、俺はそれ以上を求めてるんだ」

「あなたはこの曲を理解していない」

「譜面に縛られて全然グルーヴが伝わってこない」

 それはもうボロックソに言います。当然ながら、ビートルズのレコードはこの世に存在していないので、聴いたことがない人にとってはむちゃな要求です。そのため、参加したセッションミュージシャンたちがついていけず、次々と辞めていきます。

 そのほかにも、このマンガの設定だからこそ成立するマコトのビートルズ盗作名言の数々が、マジでサイコ野郎。

「なぜ英語の歌詞をつけたの?」

「最初から世界を視野に入れてるからですよ」

 英語の曲しか書こうとしない理由について質問するマキ社長に対し、平然と答えるマコト。言うまでもなく、ビートルズのパクリだから、というのが本当の理由です。

「俺たちは動き出したんだ…俺たちこそがビートルズになるために、ビートルズは歴史に一つしか存在してはいけないんだ」

 ビートルズの曲を自分たちの曲だとかたってデビューしてしまったファブ・フォー。大人気となり、もはや後に引けなくなった後のマコトの決意です。誰よりもビートルズを愛しているはずなのに……。結果としてビートルズを乗っ取ろうとしているその発想が狂ってますよね。

「俺たちは、悪魔に魂を売ってビートルズの曲を奪った。許されない罪を犯してでも、なれるのなら、ビートルズになりたかったんだ」

 ビートルズが解散してしまったという報告を受け、自分たちがビートルズの曲を歌い継ぐしかない……と完全に開き直っているこのセリフ。単なるモノマネじゃなく、あくまで本物のビートルズに成り代わることにこだわってきたのです。まさしく悪魔の所業といえましょう。

本家ビートルズとの直接対決へ

 実は本作の終盤では、デビューできずに解散したかと思われていたビートルズが、実は解散しておらず、満を持して新曲でデビューし、ファブ・フォーのメンバーと直接対決するシーンが出てきます。このシーンこそが真の作品のクライマックス。

 本物のビートルズの演奏を間近で見て、本物との格の違いを思い知り、子どものように膝を抱えて号泣するファブ・フォーのメンバーたち、そして自分たちがビートルズの曲をパクってきたことを全世界に告白しようと決意します。その後、とんでもないラストへ……という展開になっています。

 S村河内氏もビックリな稀代のパクりバンドが果たしてどんな最期を迎えるのか、皆さんにもぜひ読んでいただきたいです。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

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