kolme×MATZが語る、世界で“普段聞き”されるための楽曲制作「音楽は言語を超える力を持ってる」

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2019年03月31日 18:01  リアルサウンド

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 KOUMI、RUUNA、MIMORIの3人からなるガールズユニット・kolme。2014年12月30日に結成され、リーダーのRUUNA、ダンスを得意とするKOUMI、作曲を得意とするMIMORI、3人それぞれの得意分野を活かし楽曲やパフォーマンスをセルフプロデュースする新しいスタイルのガールズユニットとして活動を行っている。


参考:kolmeの音楽的探求心が生む、固定概念に捉われない作品「3人のグルーヴ感を忘れずにいたい」


 リアルサウンドでは、kolmeがトラックメイカー/アーティストらと楽曲制作やパフォーマンスについて語り合う対談連載をスタート。第1回目のゲストは、3月1日にリリースされたkolmeのリミックスアルバム『Hello No Buddy Remix』に参加しているMATZ。15歳よりコンピューターを用いて楽曲制作をスタートし、これまでSKY-HIやRuby Prophetといった国内外のアーティストとコラボするほか、10代で『Ultra Japan』にも出演するなど、今後日本のダンスミュージック界を背負う次世代アーティストとして注目を集めている。


 今回の対談では、それぞれが楽曲制作を始めたきっかけから普段の制作プロセス、海外で聴かれるためのアプローチについてなど、デジタルネイティブ世代ならではのトークを繰り広げてもらった。(編集部)


■「Hello No Buddy」はとにかく原曲がすごく良いと思った(MATZ)


ーーMATZさんも参加しているkolmeのリミックスアルバム『Hello No Buddy Remix』が先日配信されましたが、実は皆さん今日が初対面なんですね。


MATZ:はい。これまではデータのやり取りだけでした。「Hello No Buddy」、すごい好きなんです。あとアルバムの他の曲だと「The liar」も良かったですね。コード感が気持ちいいし、アレンジもかっこいいです。


3人:ありがとうございます!


MATZ:作詞や作曲から歌とダンスまで、全部自分たちでやっているのがすごく新しいなと思っていました。今日は直接お会いできてとても嬉しいです。


ーーkolmeの皆さんはMATZさんに対してどんな印象をお持ちでしたか?


RUUNA:プロフィール見たときにみんなで「イケメンだね」って話してたんですけど……(笑)。


MATZ:MATZ:プロフィール写真はですね……(笑)。


RUUNA:実物もすごく爽やかでした(笑)。過去の作品もいろいろ聴かせていただいたんですけど、曲ごとに振れ幅が大きくて、こういう音楽を作る方が「Hello No Buddy」をどんなふうにリミックスするのかすごく楽しみでした。


KOUMI:私は2017年のEPの1曲目(『Composite』収録の「The Hybrid」)の、サビ前からサビにかけてグッとテンション上げるのかと思いきや低音に潜っていくような展開がすごく気に入っていて。発想がユニークだなと。


MATZ:ありがたいです。聴き方が完全に「作り手」ですね。


ーーMIMORIさんとしては、ご自身が中心になって作った「Hello No Buddy」がMATZさんの手によって形が変わったことについてどんな感想を持ちましたか?


MIMORI:こういう作り方もあるんだなってすごく勉強になりましたね。英語の歌詞とは対照的にちょっと和風な感じがトラックに入っていたり、自分にはない切り口がたくさんありました。衝撃を受けて何回も聴いちゃいましたし、「これは何を使ってこの音にしてるのかな?」とかって自分で研究したりもしましたね。


MATZ:リミックスっていろいろやり方がありますよね。原曲のディテールを残して踊れる感じにするくらいのいじり方もあれば、元の曲を完全にぶち壊して違うものにしちゃう方法もある。僕はどっちも好きなんですけど、「Hello No Buddy」に関してはとにかく原曲がすごく良いと思ったので、その色は残したうえでどうやって自分なりのスパイスを効かせることができるか考えました。


MIMORI:私たちは曲を作るときに「ダンスできるか」という点も重要なポイントなんですけど、MATZさんのリミックスは原曲のテイストを残してもらった分、「これにダンスをはめてみたいな」と思いました。


MATZ:ぜひ踊ってほしいです。ちなみに、曲の方向性はグループとしてどうやって決めてるんですか?


RUUNA:最初にやるのは、各自の最近好きな音楽をそれぞれ挙げていくことですね。メンバーとスタッフさんの間でそれぞれのApple Musicのプレイリストを共有しているのでそれを見れば「今は誰がどういうのを聴いているか」がわかるんですけど、曲作りの際には改めてスタジオに集まって「最近はこんな感じのものを聴いています」というようなことを話し合います。


KOUMI:その中で「こういう雰囲気のものをやりたい」ってアイデアを出すんですけど、「それってちょっと前に海外で同じようなのが出ちゃってるよね」と却下されたり……。


MATZ:そんな厳しいやりとりが行われてるんですか。


RUUNA:そうですね、なかなか厳しいです(笑)。「次くるのはこういうのじゃない?」ってみんなで吟味します。どんなに急いで作ってもリリースするのは数カ月先になっちゃうので、「出したらもう遅かった」というものにならないようにしたいなと。


KOUMI:去年はそれで失敗というか、微妙に遅い感じのものを出さざるを得なかったこともあるので、より慎重にやらないといけないなと思っています。


MIMORI:あとはライブをやっていく中で、ちょっとテンポの速い曲が足りないなと思ったら次の曲でそういうのを作ったりもしますね。やっぱりダンスが前提にあるので、踊りやすいテンポ感が大体限られていて。その中で私たちの振り幅をどう出していくのかは、課題のひとつでもあります。


MATZ:めちゃくちゃ考えてやってますし、自分たちのほしい部分をメンバーの中で作れてしまうのは今っぽいというか、新しいですね。僕もトレンドを意識したり自分たちが持っている曲を分析したりするのはすごく重要だと思うんですけど、一方で何も考えずに自分にとって面白いものを作ることで新しい方向性が見えてきたりもするので、そういう遊び心というか「これやりたい!」っていうシンプルな感情も同時に大事にしていきたいと考えてます。


■同世代の音楽制作トーク


ーー皆さんはすごく世代が近いですよね。音楽的なルーツも似たようなところがありそうですね。


MATZ:もしかして同い年ですかね?


RUUNA:私たちは3人とも22です。


MATZ:じゃあ一つ違いですね。僕が一つ下。


MIMORI:もともとどういうきっかけで音楽を作り始めたんですか?


MATZ:中学から高校に上がるくらいの時、ちょうどbanvoxさんやTeddyLoidさん、あとtofubeatsさんとか、パソコン1台で何でも完結させちゃう人たちのことを知ったんですよね。それまで「音楽を作る」っていうのは大きなスタジオで高い機材を使ってやるものだと思っていたんですけど、「そんなことができるのか!」とびっくりしてどういうソフトがあるのか調べてみたら学生向けの安いバージョンがあったので、それを買ってみてそこからどっぷりって感じですね。軽音楽部に入ろうかと思っていたこともあったんですけど、結局それ以来1人で音楽を作っています。皆さんはどういういきさつだったんですか?


RUUNA:最初はスタッフさんの丸投げだったんですよ(笑)。


KOUMI:ちょうど3人が高校を卒業するタイミングで、「卒業制作」みたいな感じで何か作ったらどうかと提案されたんですよね。


RUUNA:「せっかくだから1から全部作ってみたら?」と言われて、「そんなことできるのかな……」と思ったんですけど、MIMORIが以前からピアノをやっていたこともあって、とりあえずトライしてみようかということになりました。歌詞の書き方もほんとに何もわからない状態からのスタートでしたね。


MIMORI:私はもともとボーカロイドの曲を動画サイトでよく聴いていて、「ピアノで弾いてみた」とかもいろいろ見ていたんですけど、そこから掘っているうちにボカロPにつながっていって。


MATZ:ボカロPの人気がすごい時期でしたよね。


MIMORI:そうですね。それで「自分も作ってみたいな」と思ったんですけど最初はもちろん何もわからなかったので「ボカロP 作り方」で検索して、それでDTMの世界を知りました。初めに使ったのはDominoっていうソフトです。


MATZ:なるほど。こういう言い方は失礼かもしれないですけど、見た目からは想像できないオタクっぷりですね(笑)。


RUUNA:MIMORIは根暗なんです(笑)。


MIMORI:さっき軽音楽部の話がありましたけど、部活も入れなかったんですよね。何か空気が合わないような気がして……。


MATZ:わかる(笑)。「音楽を作る」のと「バンドを組む」のってちょっと違いますよね。僕も1人で作ってる方が楽しいなと思っていました。


MIMORI:私も同じです。「ひきこもる」ってこういうことなんだな、と思いながら黙々とやってました(笑)。kolmeを始めてからは「無料ソフトじゃないので作ってみたら?」と言われて、CubaseとPro Toolsで迷ったんですけど、そのまま持っていってレコーディングに使えるからというのと、制作についていろいろ教えてくれているアレンジャーの師匠が使っていたということもあって、Pro Toolsを使うようになりました。Studio OneとかLogicを最近触ることもあるんですけど、やっぱりPro Toolsが一番落ち着きます。


MATZ:Pro Tools使ってるんですか。すごいな……僕はPro Tools全然わからなくて。今はAbleton Liveをメインに使っています。僕がやり始めた頃もGoogleとYouTubeが先生みたいな感じでしたけど、今はソフトの使い方に関する動画がたくさん上がっているから、昔よりも最初のハードルは下がってるかもしれないですね。いい時代になったなと思ってます。


MIMORI:私もPro Toolsの説明が全部英語だったので、最初はYouTubeの動画から地道に勉強しました。あと、最近はMPCでトラックを作ってる人も多いですよね。私も普段からMPCを持ち歩いていて、暇があればビートを考えたりしてるんですけど。そっちも勉強し出すとなかなか奥が深くて……。


MATZ:MPCも使ってるんですね。Ableton LiveもMPCと似てるところがあって、MPCからAbleton Liveに移る人もいますよね。今は少し古い型のMPCの質感を再現するプラグインもあるし、リバイバル的な意味でもかっこいいと思います。これまで自分で曲を作る時はビートやリズムをクオンタイズするのが当たり前だと思っていたんですけど、最近はMPCで手打ちしたビートをあえてそのまま使って、より生のグルーヴ感を出すような楽曲もすごく好きです。


ーー制作の観点から話し合っていただきましたが、普段の音楽との関わり方でも共通点がありそうですね。


KOUMI:カラオケに行ったりはしますか?


MATZ:たまに行きますね。マネージャーとかと長時間行って歌いまくりますよ(笑)。聴いている音楽はもともと洋楽の方が多かったんですけど、カラオケで歌うのはJポップがメインですね。サザン(オールスターズ)の曲とか、あと「今夜はブギー・バック」(小沢健二feauturingスチャダラパー)とか。英語喋る人がいるとガンガンラップしてくれたり、パーティーっぽい感じになります。皆さん行きますか?


KOUMI:それぞれの誕生日会のときに、毎回朝5時までカラオケをするんですよ。みんな好き勝手な曲を歌いますね(笑)。私は洋楽メインで。


RUUNA:英語の方が得意だよね。「kolmeの曲より上手くない?」って思う時もあります(笑)。私は80年代とか90年代の日本のポップスですね。MIMORIはアニソンとかも。


MIMORI:盛り上げようと思って、ニコニコ動画で流行ったダンスを踊ったりもします(笑)。


RUUNA:曲間の合の手とかも覚えさせられるんですよ。


MATZ:やばそうなカラオケ……(笑)。


MIMORI:みんながカラオケで歌ってるのを聴くと、どの辺のキーが得意かわかったりするんですよね。遊んでるだけじゃなくて、ちゃんと制作にも生かしてます(笑)。


■「海外の人に自分たちの音楽を聴いてもらいたい」(KOUMI)


ーーkolmeの曲作りにおいて「ダンスできるか」が大事という話が先ほどありましたが、MATZさんの場合「フロアで人をどうダンスさせるか」みたいな視点を意識することはありますか?


MATZ:ちょっと前までDJ活動を頻繁にやっていたのでその時にはフロアのお客さんについて気にしていたんですけど、最近はそういう人よりもイヤホンで聴いている人たちについて考えることの方が多いですね。「普段聴きで人が感動する曲」を作る、というのが今一番やりたいことです。


MIMORI:私たちも普段聴きを意識するという点では同じですね。


KOUMI:「ライブでどう映えるか」という部分に関してはダンスで補うことが多いです。


ーー「普段聴き」という話でいうと、MATZさんもkolmeのみなさんも、日本だけじゃなくて世界でも「普段聴き」されてほしいという気持ちで活動されているのかなと思いますが、そのあたり特別に意識していることなどはありますか?


MIMORI:「世界で聴かれる」っていうのはグループとして目指していることの一つですね。


RUUNA:グループ名の表記を変えたのも、これまでずっと曲名を英語縛りでやってきているのも、海外で聴いてもらえるためにどうすればいいかを考えてのことです。やっぱり音楽は世界共通のものなんだな、というのをこの前フランスでやったライブでもすごく感じて。


KOUMI:言葉がわからなくても私たちの音楽で自由に遊んでくれてるのが伝わってきて、そういうのを体感するのが本当に楽しかったです。これからも、「海外の人に自分たちの音楽を聴いてもらいたい」という気持ちは変わらないと思います。


MATZ:日本に住んでいる人でもそうじゃなくても、結局はみんな同じ人間なんですよね。音楽は言語を超えて伝わる力を持っていると思うし、世界中の人に聴いてもらいたいという気持ちは僕もあります。


ーーありがとうございました。今後、もしリミックスではなくて新たに曲を共作するとなったら、どういうのをやってみたいですか?


MIMORI:共作! ぜひお願いしたいです。もし共作するなら……今回の「Hello No Buddy」がどっちかというとBPMが結構遅めのものだったので、また機会があるならもっと速い曲がいいですね。MATZさんはやっぱりダンストラックが得意だと思うので、そういうバリバリのやつを一緒に作ってみたいです。


MATZ:kolmeの歌の良さを生かせる曲にしたいですね。「Hello No Buddy」のアカペラのデータをいただいたときに、ほんとに声がいいな、ずっと再生していたいなって思ったんです。そういう歌がしっかり映える、モダンなダンスミュージックをやってみたいと思います。


ーーいいですね。じゃあぜひスケジュールを調整いただいて……(笑)。


MATZ:作り終わったらカラオケ行きましょう(笑)。


3人:ぜひ!(笑)。(レジー)


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