The Vocodersとはどんな新バンドなのか? POLYSICSとの違いをライブから考察

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2019年04月04日 15:41  リアルサウンド

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 2019年のPOLYSICSは、POLYSICS(以下、ポリ)とThe Vocoders(以下、ヴォコ)の2つのバンドとして活動していくことがアナウンスされたのが2月3日。ニューシングル『Part of me』を、4月3日にポリとヴォコで同時に配信リリース。もともとヴォコは、2018年10月13日(TOISUの日)に、ポリが下北沢四会場で行った単独サーキットフェス『TOISU IN JAPAN FESTIVAL in下北』のうちの、風知空知ライブを行った時の形態、というか新バンドだったが、ハヤシ曰く「なんか意外と評判よかったから、じゃあちゃんとやろうかと思って」こうなった、とのこと。


(関連:The Vocodersライブ写真


 そしてポリは3月30日代々木Zher the ZOOから、ヴォコは3月24日名古屋のイベント『IMAIKE GO NOW 2019』への出演から、ツアーがスタート。同じハコで2日続けてそれぞれのユニットでやる、というのではなく、別日程・別会場でツアーが組まれており、ポリは通常のライブハウス、ヴォコは“世界唯一のカフェテクノグループ”と名乗っているだけあって名古屋BL cafeとか仙台カフェ・モーツァルトというような会場を7カ所回る。


 ただし、東京の3月29日Zher the ZOO YOYOGIはいわゆるライブハウス、そしてここだけ翌日にPOLYSICSがライブをやるスケジュールになっている。Zher the ZOOの14周年企画で何かやってほしいと依頼を受けたのでこうなったらしい。ともあれ、ツアー3本目で「TOISUの日」から数えると4回目になるヴォコのライブに足を運んだ。以下、どんなライブをやる新バンドなのか、この日のライブからわかったことを、箇条書きにしていきます。


■スタイル
 メンバーは写真のような出で立ちで横一列に着席してプレイ、お客さんも着席して鑑賞、というのがヴォコのライブのスタイル。この日は会場がライブハウスなので、フロアの3分の2くらいがイス席でその後ろは立ち見客でびっしり、という状態だった。


■MC
 この日演奏されたのはアンコール(1回、1曲)を含め全13曲。という少なめの曲数だったが、全体の尺は1時間40分くらいあった。そう、しゃべるのです、ポリと違って。ポリはもうとにかく立て続けに曲をやる(フェスなどでは頭から最後まで曲間なしのノンストップのこともある)のでライブでMCは少なめだが、ヴォコは1曲ごとに、あるいは2曲ごとにMCを入れる。アンコールでのしゃべりまで数えると全部で9回MCが入った。そんなに入れるとダレるんじゃないかと思うむきもあろうが、おもしろいのだ、これが。基本ハヤシ&フミがAMラジオ深夜放送ノリでしゃべりまくり、たまにヤノとナカムラリョウが振られる、という構成。ハヤシが天然ボケしてもヤノが会話を明後日の方向に持って行っても、軌道修正やツッコミ、ツッコミのフリした解説で、すべて笑いにつなげていくフミちゃんの巧みさに唸りました。


■セットリスト
 その13曲の内訳。ポリの曲をリアレンジしたものが10曲で、あとはDEVO「JERKIN’ BACK’N’ FORTH」のカバーとヴォコの配信シングルの「Part of me」と「Mandolin Girl」。まずポリの曲のリアレンジだが、1曲目がライブでやるのは2010年3月15日の日本武道館以来9年ぶりだという「BLACK OUT FALL OUT」だったことが象徴的なように、普段のポリのライブではなかなか舞台にかけられない曲がヴォコならできるんだな、ということがわかるセットリストになっている。ハヤシもそんな内容のMCをしていた。


■音楽性
 ハヤシがMCで「座って聴くテクノ、でもアンビエントとかではない」と言っていた。


 要はこれ、ほかのバンドで言うところの、アコースティックライブとかアンプラグドのポリ版なのだ。ポリがアコギでやるのは全然違う、どんな形ならやれるか、やりたいかと考えて、自然にこうなったのだと思う。


  で。それをポリがやると、どんないいことがあるのか。3つある、ということがわかった。


 まず、「ロックバンドがアコースティック編成でやりました」というのとは、普段との飛距離が違う。たしかに別バンドだと思うほど大きく異なる。BRAHMANはメンバー4人に2人加わった6人編成でOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDをやっているが、あれくらいの飛距離だと言っていいと思う。


 2つ目は、それをやることによって、普段ライブでなかなかセットリストに入れにくい、でも葬るには忍びない曲たちをリアレンジして再発掘できること。そして3つ目、普段のポリでは出ていない、というかきっと封じていたのであろう、いや単に必要ないから使わなかったのかもしれないが、とにかくそのような、これまでになかった新しい武器が表れていることだ。どんな武器か。メロディがいい、一緒に歌いたくなる、という武器だ。ポリのライブで死ぬほど盛り上がる鉄板曲には、「カジャカジャグー」や「URGE ON!!」のように歌メロがあるんだかないんだかわからない、というかほぼない名曲がいくつもあるが、ヴォコのセトリでそれ系の曲は「That’s Fantastic!」くらいであることにも「なるほど」と思う。


 というわけで、きっと当初は本人たちも予想していなかったであろう可能性をいろいろ秘めているThe Vocodersなのだった。


 なお、配信シングル『Part of me』は、オフィシャルサイトを見ると「配信第一弾リリース!」というコピーが付いている。ということはポリも含めて第二弾や第三弾もあるだろうし、その末にアルバムもありうる、というかここまで本気なんだからまず間違いなく考えているだろう。


 あと、今後、夏フェス等への出演も、「このフェスはこの時間帯でこのステージだからポリで出る、あのフェスはこの時間帯でこのステージだからヴォコで出る」というようなことが、2019年は可能だということですよね、きっとこれ。考えれば考えるほど、いろいろ楽しみになってきた。


 余談。フミちゃん、MCで「バイザーがないといつもと勝手が違う」と言っていたが、終演後に「お客さんの顔がすごいはっきり見えてすごい緊張する」「演奏中に目線をどこにやればいいのかわからなくて困る、ほかのバンドはどうしてるんだろうって思った」とおっしゃっていました。笑いました。でも、そりゃあたしかにそうなるわ、20年バイザーかけてライブやってたら、とも思いました。(兵庫慎司)


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