『きのう何食べた?』には期待しかない! 西島秀俊×内野聖陽、共通点は“色気”と”目”

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2019年04月05日 12:01  リアルサウンド

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 本日よりスタートするドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。期待せずにはいられないだろう。西島秀俊と内野聖陽の共演。更にまさかの恋人同士。よしながふみの原作コミック自体が、互いを思いやる40代同性カップルの穏やかで暖かい食卓を描きつつ、彼らを取り巻くシビアな現実をも内包する秀作である。さらにちゃんと料理を作ることの幸せと大切さを教えてくれる“食”の漫画でもある。テレビ東京深夜の飯テロドラマは『孤独のグルメ』以降ずいぶんお世話になってきたが、さらに西島秀俊と内野聖陽の組み合わせとなると、「盆と正月がいっぺんに……」と言うと大げさすぎるだろうか。


参考:山本耕史&磯村勇斗、西島秀俊×内野聖陽W主演『きのう何食べた?』で小日向&航のカップル役に


 情報が解禁されるごとに原作ファンの「ピッタリ!」という声が加速していったこの組み合わせ。全く違うタイプの同世代俳優ではあるが、共通点があるとすれば、それは、色気と茶目っ気のある、少年のような「目」だ。


 西島秀俊には、いくつかの変遷があるように思う。1月期のドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)、スペシャルドラマ『名探偵・明智小五郎』(テレビ朝日系)ときて、『きのう何食べた?』に至る今、大きなシフトチェンジの時期にあるのではないか。正直に言えば『メゾン・ド・ポリス』でおじさまたちの筆頭として一番若い設定とはいえ、西島の名前があった時は、妙にショックだった。それはこれまで年齢を感じさせる役柄があまりなかったために、彼の年齢に対してこちらが全く頓着してなかったからと言える。しかしそれは杞憂にすぎず、先輩のおじさまたちにイジられる可愛さあり、いざという時のかっこよさありと、実に魅力的だった。伊藤淳史とのおなじみのコンビ姿が愛おしい『名探偵・明智小五郎』もそうだ。


 『ダブルフェイス』『MOZU』(共にWOWOW、TBS)や『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ・カンテレ系)等、2012年から2017年あたりの主演ドラマは、演出の凄さ含めて日本のテレビドラマ史上これ以上ないのではないかという傑作アクションドラマ揃いだった。だが、内に秘めた筋肉を思わせるようなハードボイルドな役柄が多かっただけに、朝ドラ『純情きらり』(NHK総合)の杉冬吾役での照れたようなクシャクシャの笑顔と目をこするクセのような、もはや彼自身なのではないかと錯覚させる愛すべき姿を見ることができなくなってしまったのが少しばかり寂しかった。だから、そのキュートな魅力と、磨きがかかったアクションシーンの両方を楽しむことのできる「オジサマ」西島秀俊という新たな局面は最高なのではないか。


 もちろん、西島の魅力はそればかりではなく、『アンフェア』(フジテレビ・カンテレ系)や『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)などで描かれる「報われない男」ポジションも一興。映画『さよならみどりちゃん』の星野真里が恋焦がれるいい加減な男が彼女を凝視する定まった目の尋常じゃない色気もまた一興である。


 彼の目は時折動かなくなる。じっと何かを凝視する。『純情きらり』の冬吾が戦争を目の前にした時もそうだったし、『さよならみどりちゃん』も、黒沢清監督の『LOFT』の男もまたそうだった。狂気を孕んだ静かな目は、我々観客を少しばかり不安にさせると同時に虜にする魔力を持っている。だがその目は一方で、クルクルと少年のように笑い出す目でもあるのだ。


 西島秀俊が「静」であるならば、内野聖陽は「動」である。彼ほどハマリ役と言われる役が多い俳優もそういない。常に役そのものになる。時代劇では大河ドラマ『風林火山』(NHK総合)の山本勘助、『JIN-仁-』(TBS系) の坂本龍馬役、大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)の徳川家康役。どれも従来のイメージをガラッと変えつつ、これ以上ない勘助で、龍馬で、家康だった。豪快で、熱く優しく、時折ずるがしこかったり憎たらしかったり汚かったりするのも含めて誰もが愛さずにはいられない。特に勘助の、眼帯で終始片目を隠された状態の顔面、殊更その目の饒舌さと、死に様は、永久保存版で記憶に焼き付けている。そして『とんび』(TBS系)での昭和の不器用な父親役には何度も泣かされた。


 内野を語るにはワイルドな男臭さが魅力の近年とは真逆の、スマートさが眩しい1996年のドラマ、映画2本を忘れてはならない。朝ドラ『ふたりっ子』(NHK総合)と、森田芳光監督・深津絵里ヒロインの『(ハル)』である。『ふたりっ子』はヒロインの相手役である棋士を演じ、今のイメージとは違うすっきりとした眼鏡姿の好青年。『(ハル)』は「パソコン通信」で知り合った男女が互いの心を通わせ、恋に落ちるまでの過程を描いた物語。目印のフロッピーディスクが彼らの手元でカタカタと震えると共に観客の心も震える、しみじみとしたいい映画なのだが、優しく頼れるお兄ちゃんのような内野が実に魅力的なのだ。


 何本か挙げた近年の彼のハマリ役において、恋愛というものは主軸ではない。だが、私がなによりも内野聖陽という俳優に魅力を感じるのは、貫地谷しほりしかり、松下由樹しかり、ヒロインを前にした時の無遠慮に舐めるような、『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲイブルを思わせる、非常に濃厚な眼差しだったりする。そしてその眼差しは、ときおりお茶目に、楽しそうに輝いて、時代を変えたり、歴史を動かしたりするのである。


 料理上手な西島と、彼の作った料理を美味しそうに食べる内野。内野のイメージが髪型含めてガラリと変わりフワッとしていて予告を観るだけで新鮮だが、きっと新たなハマリ役になるのだろう。静と動、水と油、月と太陽といった感じの2人が、今までとは全く違った、テレビ東京深夜ドラマという新しいフィールドで出会い、その「目」が絡み合うのならば、期待しかあるまい。さて彼らはどんな世界を作り上げるのか。楽しみである。(藤原奈緒)


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