『ラブライブ!』キャストが示す声優音楽の多様さ 三森すずこ、内田彩、久保ユリカ作品から考察

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2019年04月09日 18:01  リアルサウンド

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 2010年にスタート以来、マンガ・アニメ・ゲームと様々な形で日本を席巻している『ラブライブ!』シリーズ。同作品から登場したグループμ’sとAqoursは、音楽番組にも多数出演し、東京ドームでのライブを達成するなど、大きな足跡を残した。


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 また、3月14日に、Aqoursから『ラブライブ!サンシャイン!!』で桜内梨子役を演じていた逢田梨香子が、DMM music/Astro Voiceからデビューすることが発表された。今夏に1st EPをリリースする予定であるが、Aqoursのメンバーの中からは、初めてのソロデビューとなる。


 一方、Aqoursの先輩グループ・μ’sのメンバー、三森すずこ、内田彩、久保ユリカのソロ最新曲も2月から3月にかけてリリースされた。どれも幅広いサウンドメイクが施された快作だ。今回は逢田梨香子のソロデビューへの期待も込めて、この3名の最新曲にスポットを当てたい。


・三森すずこ『holiday mode』
 まずは、三森すずこから。中学時代からミュージカル女優に憧れていた三森は、2017年4月発売のシングル『サキワフハナ』に収録された「恋はイリュージョン」から音楽性が変化。ソロ活動初期はチアフルな楽曲、『ラブライブ!』のキャラクターソング(園田海未)ではロックテイストな楽曲を展開していた彼女だが、同曲ではビッグバンドジャズ系のスウィンギンなナンバーを披露。そしてミニアルバム『holiday mode』でも、「恋はイリュージョン」同様のジャズナンバー「Swing of Love」が収録されている。緩い出だしから、一気にブラスホーンが入りこみ、ランニングベースとスウィングのグルーヴが小気味よく噛み合っていく1曲。かねてからビッグバンドジャズを取り入れてきた彼女による真骨頂となっている。


・内田彩『Sign/Candy Flavor』
 内田彩の音楽にも驚かされた。まず、アニメ作品とのタイアップがほとんどなく、「So Happy」「Bright way」、そして最新曲「Sign」のわずか3曲だけということ。彼女の知名度や立場を考えると恐ろしく少なく、ほぼ全ての楽曲が彼女のために作られているという徹底ぶりだ。コンセプトミニアルバムも2作制作されていることもあり、声優業に対する思いの強さと同じくらい、彼女が音楽に対しても妥協なく貫こうとする意志が見える。


 最新シングル『Sign/Candy Flavor』を見てみよう。「Sign」は、キックドラムとベースラインが強調されたR&Bテイスト。シンセサイザーと打ち込みサウンドが施され、メロディラインも上下動が少なく、チルテイストなダンスナンバーとなっている。また、内田彩の歌声にも注目したい。もともと彼女の声は、軽やかなソプラノの声色で、ハイトーンになると絶妙に掠れ気味になるのが特徴的だ。同曲では、そんな彼女の歌声とオートチューンが施された変声との2種類が絶妙に併用されており、楽曲の魅力をより引き立てている。


 また、エレクトロサウンドが全開になった「Candy Flavor」では、『ICECREAM GIRL』でも成功したサウンドメイキングで、ベースサウンドとキックドラムがグルーヴィに絡む1曲に仕上がっている。


・久保ユリカ『VIVID VIVID』
 続いては、2月に発売された久保ユリカによるミニアルバム『VIVID VIVID』だ。彼女は、μ’sが活動を休止した2016年の2月に先んじてソロデビューを果たしたものの、2017年5月に歌手活動を休止した。その後、2018年5月31日に音楽活動を再開を宣言した。


 活動再開一発目となる今作『VIVID VIVID』では、5曲中4曲がEDM系〜エレクトロサウンドへ変化し、1stアルバム『すべてが大切な出会い 〜Meeting with you creates myself〜』で感じられた“ナチュラルな空気感”とはまた異なる一面を見せている。これは久保本人が「EDMっぽい曲で歌ってみたい」というリクエストしたのだという(参照)。例えば、「Instant@Heart」は、フレンチハウス楽曲となっていて、Daft Punk「Harder, Better, Faster, Stronger」を彷彿とさせるボイスネタも取り入れている。また、ヒゲドライバーが作詞、烏屋茶房が作曲を手がけた「しかししかじか」は、久保ユリカのニックネーム「しかこ」をモジった電波系ソング。ヒゲドライバーのお株を奪う8ビットサウンドを思わせるようなエレクトロ曲だ。


 そして何よりも、本作の顔はタイトル曲の「VIVID VIVID」である。EDM系のダンスナンバーとして仕上がったこの曲。MVでは、カジュアルなストリート系ファッションを身に纏い、4人のダンサーを引き連れて歌い踊っている。EDM系のカラフルなダンスミュージックや、ファッション、メイクなど……TWICEをはじめとする現行K-POPの影響が感じられる。


 三森はこれまで注力してきたビックバンドジャズをさらに進化させ、内田はチルテイストなダンスミュージックアレンジに挑戦。久保はEDM系〜エレクトロサウンドを取り入れつつ、K-POPの要素も取り入れた音楽性へと変化を遂げている。三森らがリリースした楽曲は、声優音楽シーンの“多様さ”を示しているのではないだろうか。この3名のような活躍を、逢田ら『ラブライブ!サンシャイン!!』出演声優にも期待したい。(草野虹)


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