開幕戦でギリギリの戦い制したヤマハ中須賀、故 近藤湧也に勝利捧ぐ。「最後は湧也が力をくれた」/全日本ロード

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2019年04月18日 16:11  AUTOSPORT web

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左腕に喪章をつけ、ヤマハのテストライダーも務めた近藤湧也を表彰台で追悼する中須賀克行
全日本ロードレース選手権JSB1000の開幕戦もてぎでダブルウインを決めたYAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行。その翌日、千葉県船橋市にその姿があった。先日、不慮のアクシデントで亡くなった近藤湧也(GBSレーシングYAMAHA)の葬儀に出るためだった。

 正確には、フライトの予定もあり、中須賀は葬儀に参列することはできなかったが、早めに斎場を訪れて優勝カップを湧也の父・淳さんに手渡して祭壇に飾られた。

「ギリギリだった。ただでさえプレッシャーがあるのに、レース前に家族で何ができるか話し合って、湧也に優勝カップを届けたいと決めていた。それが、さらにプレッシャーを自分自身にかける結果になっていた。だからこそなおさら、うれしい優勝だった」と中須賀。

 2月にマレーシア・セパンで行われたテストに近藤は、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの一員として耐久仕様のヤマハYZF-R1をテストしていた。初めて走るセパンだが、耐久性のテストもあり、とにかく有無も言わず走ることが仕事だった。

「ST600クラスで優勝してJSB1000クラスに上がって来てからは、荒削りだけれど速くなる要素は持っているライダーだと思っていた。最近、一緒に仕事をするようになっても、お互いシャイなんで、あまり積極的に話しはしなかったけれど“もっともっと頑張らないと”って言っていたし、これからだったので本当に残念。すごくおいしそうに、ご飯を食べるのが印象的だった。岡山のテストのときも“久しぶりに自分のマシンだからちょっとずつ行けよ”って吉川監督と話していたんだけど……」

■ホンダの速さに対抗するために新マシンセットを模索
 開幕戦の前週に行われた事前テストでは、Team HRCの高橋巧が驚異的なアベレージスピードを見せていた。Team HRCは2年目を迎え、昨年の問題点を洗い出し、マシンをまとめてきており、それが高橋の好調につながっていた。

 高橋の速さを見た中須賀は、このままでは勝つことができないと思ったと言う。レースウイークに入ってからも新たなマシンセットを模索し、これなら勝負できるという状態になったのは金曜日のことだった。

 そして公式予選では、セッション序盤で、高橋とたまたま一緒になったが、お互いけん制することなく最初のアタックを行っていた。そしてリアタイヤを交換しセッション終盤にタイムを出しに行くと1分46秒878という、とてつもないタイムを記録。それでもアベレージでは互角というのがレース前の予想だった。

 決勝は、中須賀と高橋が1分47秒台から48秒台という驚異的なラップタイムでの一騎打ちとなり、両レースとも僅差で中須賀が制した。レースの結果だけ見れば中須賀の強さが際立ったが、ホンダと高橋のレベルがヤマハと中須賀をついに捕らえたレースとなったと言えるだろう。

「巧くんもホンダのマシンも本当に速かった。タイムを見れば分かると思うけれど、本当にレベルの高いレースだった。2レースとも勝つことができてよかったし、最後は、湧也が力をくれました」

 チェッカーを受けた中須賀は、何度も拳を振り上げ喜びを表した。そして左腕に巻いた喪章に手をかざし、天を突き刺し、湧也に優勝を報告したのだった。

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