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誤解されたからこそ売れた? THE YELLOW MONKEYの根底にある“シリアスな表現衝動”

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2019年04月18日 17:03  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

写真『TRIAD YEARS actII』(日本コロムビア)
『TRIAD YEARS actII』(日本コロムビア)

平成が終わろうとしている今、90年代に始まったJ-POPの流れがひとつの節目を迎えている。あのアーティストの楽曲はなぜ、ヒットしたのか? 音楽ライターの青木優が徹底分析!

<過去記事はこちらから>

 平成の終わりとともに、実はこの連載の終了も接近中……カウントダウン!

 今回はその平成を彩ったロック・バンド、THE YELLOW MONKEYについて。19年ぶりになるオリジナル・アルバム『9999』がリリースされたばかりである。僕も、いま発売中の「音楽と人」で彼らにがっつりインタビューをし、原稿を書いているので、ぜひご一読を。

 と、本題の前に。このTHE YELLOW MONKEY、通称「イエモン」と呼ばれているが、実はこの言い方、90年代当時はあまり公には口にされなかった。ファンや関係者の間で使われていたところも少しあるものの、なんか違う気がして、僕も原稿で使った記憶がない(当時は彼らの記事をたくさんは書いてなかったが)。イエモンは、ほんとに非公式な呼び方で、しかもあまり腑に落ちないものだったというか……この感じ、古参のファンじゃないと、わかってもらえないか。

 ただ、2013年にファン投票によるベスト盤『イエモン』がリリースされてからは公認になった気がして、それからは安心して呼ぶようになった次第。なので、ここでもイエモンと呼ぶ。

 さて、最近よく目にするのはこのCM。

 いや、カッコいい。ただ、「吉井さんひとりじゃなくバンドで出してほしかった!」という意見を多数耳にしていて、そこは僕もまったく同感。わかりやすくしたいのはわかるが、メンバー4人がそろってたらもっとカッコ良かったと思う。

 で、ここで使われてるのは「天道虫」という曲。まさにライヴ映えするロック・ナンバーだ。

 これと、ドラマ『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)の主題歌だった「I don’t know」の2曲がアルバムからのリード曲的な存在と言えるだろうか。

 この歌のビターな感覚、実に今のイエモンのモードという感じだ。アルバムでも最後を締めくくる曲になっている。

 だが、こうした新曲たちを聴き、イエモンを「なんとなく知っている」レベルのリスナーだと、「ん〜?」という印象を受けるかもしれないな、と予想する。なぜなら90年代、音楽シーンを突っ走っていた時期の彼らとはイメージが異なるところもあるからだ。特にヒットシングルを連発していた頃を思うと。

 ではそうした楽曲を元に、当時をざっと振り返ってみよう。

 イエモンのCDセールス上の初のトップ10ヒットは、1995年の「太陽が燃えている」。それ以前から見ていた自分は、これで彼らの人気がお茶の間レベルに接近したのを実感したものだ。

 翌96年の夏リリースの「SPARK」も高いセールスを記録した曲。今もライヴで演奏されることが多い。

 バンドの表現力がさらにスケールアップした「楽園」。

 ポップなメロディが耳に残る「LOVE LOVE SHOW」。

 そして圧巻の「BURN」と、名曲が次々とリリースされていったのだった。

 これが97年までのこと。この数年間は彼ら自身がメジャー化を図り、それが見事にハマッた時期だった。立て続けに聴くと、音楽シーンの中で一時代を築いたバンドのすごみをあらためて感じる。

 4人のルックスも華やかで、すごくセクシーだ。そこには音も含め、グラムロックをはじめとしたクラシック・ロックの影を見ることができる。しかも、歌メロには歌謡曲的な匂いがあって、そこが多くの人に支持を得た理由のひとつだろう。当時は渋谷系的な、洗練された音楽が好まれる傾向にあったが、イエモンはその風潮に真っ向から立ち向かい、成功を収めたのだった。

 で、そう、こうした黄金期のシングル群と比べると、このところの楽曲には、ポップな感覚や突き抜けた音というより、空気感や質感、そしてそこに込められたものを味わう作品が主体になっている感がある。いわばシリアスめの傾向にある、というか。あくまでシングルやリード曲レベルでの印象に絞ると、だが(昔も今も、アルバムにはさまざまな方向性の楽曲がある)。

 ただ、あえて記しておこう。イエモンは出発点からシリアスな表現衝動を抱えていたバンドなのである。

 今回の新作『9999』での彼らも、大人に……50代になったイエモンの真摯なスタイルを貫いていて、素晴らしいと思う。そこには「I don’t know」で唄っているように、人生の残り少ない時間を必死に生きようとする男たちの姿があるのだ。

 そして「こんなにヒット曲を並べておきながら、あれが入ってないじゃん!」と思っている人の声が聞こえてきそうなので、そのリンクを張ることにする。このバンドにとって重要なナンバーであり、また日本のロック史上に残る名曲の「JAM」である。

 彼らは16年に再集結/再始動したのだが、その年末の『紅白』に出場した際にこの「JAM」を唄っている。元のシングルが出たのは96年2月で、先ほどの快進撃の序盤のあたりだ。飛行機事故を伝えるアナウンサーのくだりの歌詞が話題になった(そして今でもここについてあれこれ言われることの多い)楽曲である。

 で、当時、僕の知り合いで、後追いでこの「JAM」を知った人が、「ああいう歌を唄うバンドなんだね。かなり意外だった」と言っていたのを覚えている。

 その声を聞いて、あぁなるほど、と思った。なにせド派手で豪快なイメージの強かったであろうバンドだ。それが飛行機事故のあたりの表現を含みながら、自分と世界(社会)との距離を唄おうとしていたことが意外に思われるのは当然とも思った。この「JAM」を書いた背景についてヴォーカルの吉井和哉は、前年に阪神・淡路大震災やオウム関連の事件などがあって、あまりに不安定だった社会状況にも影響されたと話している。

 また、シングルに限っても、90年代後半に発表された「球根」や「離れるな」、それに「バラ色の日々」など、張りつめたトーンを持つ歌や、人がどうにか生きようとする姿が見える楽曲はある。

 思えばイエモンは、バンドの根本からして、非常にシリアスなところから始まっている。それは、メインのソングライターである吉井の資質に負うところが大きい。幼い頃に父親を亡くした彼は、そうした喪失感を埋める思いも抱えながら音楽に向かい、人生を捧げてきたのだから。

 また、僕はこの「JAM」について意外だったという声を聞いた一件から、イエモンは人によって評価やイメージが大きく異なることを認識した気がする。まあ「なんとなく知ってる」程度のリスナーとコアなファンとの認識の落差が大きいのは音楽ファンあるあるで、人気ロック・バンドは特にそういうものだが。イエモンの場合はこのギャップが特大だと感じてきた。で、あえて言い換えるなら、イエモンはそのイメージ的なギャップを引き受けたまま突っ走ってきたバンドである。

 これはメンバーが今でもよく話すことだが、インディからメジャー初期は、周囲から「ヘンなヴィジュアル系」「変わったヴィジュアル系」と呼ばれることが多かったのだという。イエモンはヴィジュアル系という場所にはいなかったバンドなのだが、メイクをしたりグラマラスな衣装を着たり、グラムやハードロックがベースだったり、あるいは前述のように歌謡曲的でポップなメロディもあったりして、共通する部分がなくはない。ただ、棲み分けとしては違う。

 だから、アングラでダークな作風が主体だった初期は、そうした「ヘンなヴィジュアル系」的なところがドロドロと流れていた。仮にメロディは明るめであっても、どうしても後ろ暗い、みたいな。

 参考までに93年、メジャー2枚目のシングル「アバンギャルドで行こうよ」のMVを。

 さらにこの前に出た「Romantist Taste」のMVもダークで、非常に良い。ただ、これは生まれたての両生類やらヌメッとした爬虫類やらがたくさん出てくる閲覧注意気味のやつなので、リンクを張るのはやめとく(大丈夫! 興味ある! という方は、ぜひ探してみてください)。

 ともかく、彼らがメジャーにのし上がる前夜には、こうした時代があった。そういう意味では、イエモンは常に変わりながら進んできたバンドなのだ。ただ、根っこのところは変わっていない。そしてそういう姿勢は、再集結後の今も続いている。

 だからこのバンドにとってイメージのギャップとか誤解なんて、ずっとつきまとってきたものなのだ。また、いい意味で誤解されたからこそ売れたという側面もあるだろう。ただ、現在の4人は、そうした誤解が生じないような状況で音楽を奏でていると思う。

 さて。イエモンが、特にロック・ファンに与えた影響は絶大で、それは01年の活動休止後に、身にしみてわかった。その頃たまたま知り合った人や仕事を一緒にした子、若いバンドマンとかで「イエモン、大好きなんです」「すごいファンなんですよ」という話をされることが多々あったのだ。

 しかもそれを言ってくるのは思った以上に男が多く、そのたびに彼らは「実は好きです」的な、隠れファンだったような言い方をしてきたものだ。そして共通するのは、ことごとく90年代のイエモンを生で見たことがない、という話である。

 これは当時のイエモンの女性人気のすごさを示している。あの頃の彼らのライヴのお客さんはほとんどが女性で、どんなに会場がデカくても、男なんて数パーセント程度。そんな状態が当たり前に感じつつ、僕は「男にも、もっとウケていいはずだよなー」と思っていたのだが、やはり男性ファンも多かったのだ。ただ、男だと一緒に行く友達がいるかどうかとか、チケットを取ろうにも女性の行動力のほうが上回ったりで、難しい面があったのだろう。

 それが16年の再集結後のコンサートには、大人の男性ファンも相当な割合で足を運んでいる。ちなみに、ライヴ中に吉井が女性ファンに向けて「みなさんの黄色かった声援が、今は茶色っぽくなってますよ」と言ってたことがあったな(笑)。また、親子連れのお客さんもいたりして、それもほほえましい。これはベテランのアーティストほどよくある光景ながら、イエモンは活動していない時期が長かっただけに、ちょっと感慨深い。

 そういえば俳優の山田孝之も、10代の頃にイエモンがすごく好きだったのにライヴが見られなかったと言っていた。テレビドラマの『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)の中で、カラオケで「カナリヤ」を唄っていたな……。

 01年に活動休止をしたのは、音楽の方向性も、またメンバー間の関係性も混沌としてしまったことが大きな要因だったが、今のバンド内の雰囲気は良好で、いい状態で音楽に臨めているようだ。ただ、現在の作品には、彼らなりの引き締まった思いが込められている。そして、それは生きることについてのものである。

 今度のアルバムを通じて、このバンドが一貫して表現してきた大切な何かが、聴く人たちに伝わることを願う。

●あおき・ゆう。
1966年、島根県生まれ。男。
94年、持ち込みをきっかけに音楽ジャーナリスト/ ライター業を開始。
洋邦のロック/ポップスを中心に執筆。
現在は雑誌『音楽と人』『テレビブロス』『コンフィデンス』『 ビートルズ・ストーリー』『昭和40年男』、
音楽情報サイト「リアルサウンド」「DI:GA online」等に寄稿。
阪神タイガース、ゲッターロボ、白バラコーヒー、ロミーナ、 出前一丁を愛し続ける。
妻子あり。
Twitterアカウントは、@you_aoki
 

このニュースに関するつぶやき

  • 今回のアルバムで…どれも良いのは当たり前での話になりますが、2枚目のDVDの『パンチドランカー』です。…圧巻でした。震えました。感動しました。バンドとして完成しちゃっました(つд;*)
    • イイネ!27
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