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『シャザム!』は笑いあり涙ありのホームドラマに その魅力はスケールの小ささにあり!?

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2019年04月22日 12:01  リアルサウンド

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 結論から書くと『シャザム!』(2019)は非常に丁寧に作られたファミリー映画である。基本はコメディタッチだが、1人の傷ついた少年の成長譚であり、少年少女らの友情と冒険を描くアドベンチャー映画であり、家族とは何かを訴える作品だ。良い意味でスケールが小さく、同じDCコミックスを原作とする『アクアマン』(2018年)がスペクタクル・アクションなら、こちらは笑いあり涙ありのホームドラマだといえるだろう。本作は20年ほど前から増えてきたヒーロー映画の中でも際立って個性的な作品であり、人によってはスーパーヒーロー映画のベストになりうるかもしれない。それくらい本作は魅力的であり、その魅力は良い意味でのスケールの小ささにある。


参考:『シャザム!』はどんな作品に仕上がっているのか? デヴィッド・F・サンドバーグ監督に聞く


 ところで、あらすじは……あえて多くを語らないでおこう。個人的に、本作は事前情報を入れずに行った方が楽しめると思うからだ。いろいろとワケあって孤独な境遇にある少年ビリー(アッシャー・エンジェル)が、ひょんなことから筋骨隆々のスーパーヒーロー“シャザム”(ザッカリー・リーヴァイ)に変身する能力を得てしまう。この予告で示されているだけの情報だけで臨むことをオススメしたい。


 話が逸れたが、この映画は魔法やスーパーヒーローといった題材を扱いながら、非常に日常感があり、「もしかして自分にも起きるのではないか?」と思うような等身大の魅力がある。こうした印象を受けるのは、主人公であるシャザムことビリー少年が、何度も「家」に帰ること、何をするにも「家」が絡んでくること、その「家」がごくごく普通の家であることが理由だろう。


 たとえば同じDCスーパーヒーローでも、バットマンは秘密基地を持っているし、アクアマンやスーパーマンは育ちの家とは別に、極めて特殊な実家を持っている。また、家にいるシーンよりも外で戦っているシーンの方が長い。しかし、ビリーはどれだけスーパーパワーを手に入れようが、悪人と派手に一戦交えようが、必ず生活の場である家に帰る。家に帰れば育ての親がいて、気の合う友人がいて、夕食も食べる。もちろん学校もある。本作では、こうした日常の描写に重きが置かれている。しかし、そんな平凡な日常を徐々にスーパーヒーローという要素が壊し始める。つまり視点を変えれば、本作は日常の中心である「家」が“スーパーヒーロー”という非・日常的な要素に徐々に浸食されていく物語だともいえる。この構造はホラー映画的であり、近年なら『死霊館』(2013年)に代表される幽霊屋敷モノに近い。そして本作の監督を務めたデヴィッド・F・サンドバーグは、ほかならぬ『死霊館』の監督ジェームズ・ワンにプロデュースされて世に出た人物だ。


 サンドバーグ監督はYouTubeにアップした短編がワンの目に留まり、『ライト/オフ』(2016)として長編化が決定、デビューした人物だ。その後も『死霊館』シリーズのスピンオフ、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)を監督するなど、完全にワン一派の人間である。製作を担当したピーター・サフランも『死霊館』に、美術のジェニファー・スペンスも『ライト/オフ』『死霊館』、そして『インシディアス』(2010年)でワンと組んでいる。つまり本作は幽霊屋敷映画を何本も作り続けてきた、いわば幽霊屋敷映画の達人たちが手がけているのだ。悪い意味で「もしかして自分にも起きるのではないか?」な映画を作っていた人間たちが、そのノウハウを巧みに使い、良い意味で「もしかして自分にも起きるのではないか?」な映画を作ったともいえるだろう。


 実際、怖いシーンは本当に怖い。悪役のDr.シヴァナ(マーク・ストロング)が暴れるシーンは流血こそ少ないが、ホラー映画そのものだ。そして、サンドバーグ監督は「家族」というテーマに何かこだわりがあるようで、彼の監督作は『ライト/オフ』も『アナベル 死霊人形の誕生』も、孤独な少年少女が主人公だった(特に『アナベル〜』は『シャザム!』のダーク版のようだ)。それぞれ結末は異なるが、孤独を「恐怖」とすること、そして他人のために戦うことを「善」として描く姿勢は一貫している。


 『シャザム!』は紛れもないスーパーヒーロー映画だが、同時にワン一派の幽霊屋敷映画の流れを汲んでいるといえる。俗に「恐怖と笑いは紙一重」というが、本作は恐怖と笑いを同居させたうえ、さらに1人の少年が「孤独」という「恐怖」を乗り越えるヒューマン・ドラマとして完成されている。長年の経験で培われた確かな技術と、それを応用して新しいことに挑戦する姿勢は、最高の形で結実した。『シャザム!』は新たなスーパーヒーロー映画の傑作として、きっと末永く愛されることだろう。(加藤よしき)


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