私の妹は“子宮系女子”でした――「子宮委員長はる」との出会いから「家庭崩壊」までの記録【前編】

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2019年05月02日 00:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 子宮の声に従って生きる――そんな触れ込みで、ここ3年ほどスピリチュアル系自己啓発界隈を席巻した「子宮委員長はる」をご存じですか。彼女は風俗嬢の過去を公言し、子宮筋腫、子宮頸がん、摂食障害などは「性エネルギーの循環(マスターベーションとセックス)で完治した」と豪語。不倫を“推奨”し、婦人科専門の霊能者として、「あなたの女性器の性質&気質」「あなたの女性器の可能性」などが書かれた“御まん託鑑定書”を高額で販売しました。現在では、「八木さや」と名前を変え、化粧品プロデュースなどの活動にシフトしています。

 「抑圧感情が溜まると子宮筋腫になる」「旦那さんの出世や昇給は子宮(女性器)の力」という“子宮メソッド”や、「股が冷えて固かったら、良質なお金は稼げないよ。諭吉って男なんだよ」などのブログの文言に影響され、子宮委員長はるを崇拝する女性は次第に増え、いつしか「子宮系女子」と呼ばれるように。彼女たちが膣にパワーストーン・ジェムリンガを挿入すると「体調がよくなる」「人間関係が良好になる」という教えをもてはやしたことで、子宮系女子のカルトぶりは世に知れ渡ることとなりました。

 さて、近年に誕生したスピリチュアル代表とも言える「子宮系」。この思想に染まった女性がどうなってしまうのか、実は私は間近で目撃しました。なぜならば、私の妹が“信者”だったからです。

子宮系と妹の出会いは“SNS”だった

 3年ほど前のこと。当時妹は30代前半で、サラリーマンの夫と2歳の息子が1人、自身も外資系のOLとして働いていました。妹は副業として、ハンドメイドのバッグなどをネット通販で売って稼ごうと思い立ち、SNSを開始。そこで子宮系女子の“キラキラ”な投稿が目に留まり、1人、また1人とつながっていきました。ネット上で偶然出会った子宮系女子と交流するうちに、「よくわからないけれど、不思議な世界でみんな楽しそうにしている」と興味を持った妹は、彼女たちに誘われて、子宮委員長はるのセミナーに参加。著書を買い、ブログを読み、「子宮の声に従って生きる」奔放な生き方にグイグイと引き込まれていきました。

 今振り返れば、電話口で「子宮委員長はるちゃんは自分を生きている」「妊娠しても、タバコを吸ってお酒も飲んでいたらしい」などと言っていた妹。私は「本当かな……」と疑いつつ、熱中することがあるのは悪くないし、その時は妹の生活に大きな変化が見られなかったこともあって、完全に楽観視していました。“小説家のファン”になった、くらいのことだろうと。あとで悔やむことになるのですが……。

 子宮委員長はるには、活動を後押しする“友人”がたくさんいます。その一人が、心理カウンセラー・心屋仁之助氏。彼のブログには「僕はこのブログでは恥ずかしくて セクシャルなことはほぼ書いてないのですが その真逆をあかるくアッケラカンとやってのける彼女に もう、ほんとただ尊敬の眼差しです」(2017年3月9日更新)と子宮委員長はるを称賛する記述もあり、スピリチュアル系のイベントでもよく共演しています。

 元アナウンサーの小林麻耶さんも、心屋氏の支持者だと言われています。麻耶さんのブログには、「心屋仁之助さんに出逢い 試行錯誤し、挑戦を繰り返し、頑張ることをやめられましたーーー!! 無理をすることをやめられましたーーー!! いい子でいることをやめられましたーー!!」(18年12月10日更新)という文章も。ちなみに、子宮委員長はるも麻耶さんも、心屋氏のことを「ぢんさん」と呼んで慕っています。

 「好きなことだけして生きていく」「ゲスな女が愛される」「いい人をやめてスッキリする」……心屋氏の著書には、タイトルからしてこんな言葉が並びます。これは子宮委員長はるが「子宮の声に従う」と言うのと同じようなことで、要するに「自分勝手に生きる」「嫌なことはやらなくていい」ということ。前述した麻耶さんのブログも、この教えの影響を受けているのでしょう。そして私の妹もまた、彼らの思想に脳天を撃ち抜かれたようでした。イヤイヤ期真っ盛りの子を抱え、仕事と家庭を両立する苦労から解放されたい。麻耶さんのように、「頑張ることをやめたい」と思ったのかもしれません。

 子宮系と心屋氏の教えを守った結果、「やりたくないことをすると、子宮にカルマ粒(膣や子宮、卵巣に負や業が溜まってできる血液の塊……らしい)ができる」と言って家事を一切やめ、「好きなように生きれば、旦那に貢がれる」と会社を退職。「母親は子どもを生んだら終了。女性は子育てに向いていない」などと言い、分担していた育児を夫に押し付け、1回5,000円以上もする“スピリチュアル系お茶会”や数万円のセミナーに通い、「お金は使えば入ってくる。使わないから消えていく」などと……あの〜すみません、全部意味不明です(お手上げ)!

 家族旅行のために貯めていたお金を下ろし、学資保険の解約を画策しているのが明らかになった時、妹の夫はついに「もう限界。“宗教のようなところ”に出入りしてから変わってしまった」と、私に連絡してきました。その電話を受けた私は、妹がしていた怪しい話のことを思い出し、彼女のSNSを恐る恐るのぞきました。すると、子宮系セミナーに参加している妹と、子宮系女子たちが満面の笑みを浮かべている写真が……。「これが原因だ」と直感でわかり、青ざめました。子宮委員長はるのセミナーに行き始めてからここまで、たった半年。家族思いで友人もたくさんいた妹が、なぜこうなってしまったのか。おかしな電話をもらった時に、一言「やめておきな」と止めていれば……後悔してもしきれません。

 ここで私が言っておきたいのは、これはあくまで“妹のケース”だということ。今も子宮系女子として、心屋氏のファンとして、明るい人生を送っている人もいることでしょう。根拠のない教えや宗教的なものでも、“信じること”自体は人それぞれであって、やみくもに否定はできません。ただ、人によって合う・合わないは必ずあります。何事にも良い面だけでなく悪い面があるということを念頭に置いて、よく観察し、突き進む前にいったん立ち止まって考えてほしい。影響されやすかった私の妹のように、スピリチュアルとの距離感を誤って、自分の人生も家族の人生も壊した人が、本当にいるのです。

 子宮系女子だと発覚したあと、家族会議で私たちと口論になった妹は、自殺をほのめかすなど、さらに自暴自棄に陥ります。そのことは、また次回に。

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。

Twitter/ブログ「黒猫ドラネコのブログ(仮)

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  • カルト宗教が不滅なのはカルト宗教を社会が完全には否定せず需要があるからだ。何が“スピリチュアル”だ。私の妹は“子宮系女子”でした——「子宮委員長はる」との出会いから「家庭崩壊」までの記録【前編】
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