祭nine.、新時代にてっぺん掴むか 独自性が開花した令和初の武道館公演を振り返る

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2019年05月09日 18:01  リアルサウンド

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 名古屋を拠点に活動し、現在は兄貴分であるBOYS AND MEN(以下、ボイメン)の背中を追うように、全国区でその名を知られる存在になりつつあるエンターテイメント集団・祭nine.。元号が平成から令和に変わった5月1日、彼らが初の日本武道館公演『祭元年〜新しい挑戦〜』を行った。ここでは“令和初の武道館アーティスト”となった彼らのステージがどのようなものだったか、振り返っていきたい。


(関連:祭nine.、“令和初の武道館”への誓いと今後の目標「ボイメンのように夢を掴む瞬間を見せたい」


 1曲目はリーダーの寺坂頼我を筆頭に全員が得意のアクロバットを炸裂させる「HARE晴れカーニバル」。ライブでの斬り込み隊長役といえる野々田奏が花道を走り、清水天規が「武道館、ぶち上げようぜー!」と会場を煽るなか、祭っ子(祭nine.ファン)たちもテンション高くペンライトで応戦。先日のインタビューでは「ライブ序盤から飛ばしすぎだとよく怒られる」と語っていた彼らだが、奏のハーモニカ演奏が響くロックンロール「魁!祭OTOKO」、観客も巻き込んでパラパラを踊る「がってんShake!」と続き、序盤から清々しいほどフルスロットルだった。


 メンバー紹介ソング「I’m On Fire!」で、最年少・横山統威の「お前の心、奪ってやるぜ」、おっとりキャラの浦上拓也の「俺らの熱いライブについてこいよ!」、優等生キャラの神田陸人の「今日くらい、バカになろうぜ!」といった、この日のためにアレンジされたキメ台詞に湧きまくった会場。デビュー前からのレパートリーである「ドドンコ Don’t worry」では観客のレスポンスも大きく、早くも会場に一体感が生まれていた。


 続く「バッシャーン!!!」からは、カラッと明るい夏ソングが続く。ここからは再びBOYS AND MEN研究生(以下BMK)、エリア研究生も参加して、いっそうにぎやかに盛り上げていった。「オマエもかっ!?」では、奏が天規にキスするシーンも。祭nine.といえばにぎやかなステージが売りだが、「太陽ZAN-MAI」で見せるダンスリーダーの天規を中心としたストイックなパフォーマンスも見逃せないポイントだ。


 ステージが中盤にさしかかると、「宿命の対決」と銘打たれた殺陣パフォーマンスがスタート。かつて同じグループでしのぎを削りあった仲間である祭nine.とBMKの面々が、ここで激しくぶつかり合った。刀を持ったままのアクロバットなど丁々発止のバトルの末にBMK・米谷恭輔との一騎打ちを制した頼我が勝利の旗を手にし、勢いのある最新シングル曲「有超天シューター」へとステージを進めていく。


 歌番組風の企画コーナー「祭ベストテン」では、“辻柳徹子”(ボイメン・辻本達規)と“米宏”(ボイメン・水野勝)の仕切りで、観客投票による人気楽曲をランキング順にパフォーマンス。天規がハットにラメのジャケットなどマイケル・ジャクソン風、統威がミリタリーテイストなど、それぞれの個性を反映した赤い衣装に着替え、ボイメンや研究生のおなじみの楽曲も含めて歌い上げた。ここではBMKも、この日初披露となるキャッチーな振りの新曲「バリガチタッチダウン」(発売日未定)を披露。そして全国から参加したエリア研究生たちも「VIVA!サマーウォーズ」(5月10日発売のシングル『無敵のOne Way Road』収録)で、フレッシュかつキレのあるパフォーマンスを見せる。「なんで祭nine.の曲が1位じゃないの?」というボヤきも交えつつ、1位のBOYS AND MEN 誠(以下、誠)の代表曲「READY×READY!」では、誠の面々と祭nine.がコラボする形でにぎやかにコーナーを締めくくった。


 終盤MCでは最年長の天規が「武道館が決まったときには俺たち本当に不安だったし、周囲にも『無理でしょ』って言われて。でも今、目の前にはこうやって応援してくれる方々がいて、横を見たら一緒に歩んでくれるメンバーがいます。本当に俺たちって幸せだなあって」と話しながら、後ろを向いて涙をぬぐうひと幕も。改めてステージに呼び込まれたボイメンファミリーからは「これからも切磋琢磨していきましょう。俺たちもここでライブしたいって本気で思ってるから!」(BMK・米谷)、「僕らも今日のステージからすごく刺激と元気をもらいました」(ボイメン・水野)と、激励のコメントが贈られた。


 兄貴分のボイメンがロックテイストの新曲「頭の中のフィルム」(5月29日リリース)で貫録を見せつけたあと、頼我がこのライブを総括する形で話し始める。「僕たち祭nine.のテーマは“夢”です。これからもみんなといろんな夢を見ていけるように活動に取り組んでいきたいと思うし……僕は泣かないよ?」と前振りしつつ、結局大粒の涙をこぼしながらも「夢は諦めなければ必ず叶う、その諦めない姿を見せることでこれからも多くの方についてきてもらえるように、どんな挑戦だって乗り越えていきたいと思っています。今日のことをこれからも忘れずに、僕たち祭nine.は祭を興し続けます!」と熱く語った。続く「39S」の曲振りでやはり泣きすぎてうまく言葉が出てこない奏を陸人がぎゅっとハグしたり、本編ラストの「みらい結び」で、最年少の高崎寿希也が頼我の肩を抱き、統威や拓也はステージの端まで出て笑顔でファンに手を振り続けていた姿も印象深かった。


 アンコールでは空気をガラッと変えて、頼我が先生、奏&陸人が優等生、拓也&寿希也&統威が不良、天規が“40年ダブってる”おっさん番長役で、ゆるい学園コントをスタート。そこからの名古屋リスペクトソング「NAGOYA’N’イングリッシュ」へのくだりでは、おっさん設定なのにダンスがキレッキレな天規や、スケバン姿がかなりラブリーな拓也、「おみゃーのことが、でら好きだがや!」とキザにキメる頼我といった濃いキャラのオンパレードに会場が爆発的に盛り上がり、まさに祭nine.の独擅場といえる空気感が漂っていた。


 祭りはまだまだ終わらない。『musicるTV』(テレビ朝日系)の企画「トップライナーをさがせ!」で、“新しい時代を歩き始めるみなさんを熱く応援する”というコンセプトのもと制作された新曲「ゴールデンジパングソウル」をここで初披露。和楽器バンドの神永大輔(尺八)が参加するなど、祭nine.らしい和の要素を盛り込んだ元気印の同曲では、彼らのお家芸であるアクロバットが再び炸裂!〈今日も今日とて生きててよかった〉という頼我のセリフなど、この日の空気も相まって感動的に響くような佳曲に仕上がっていた。


 「令和元年1日目が僕らのステージで始まったということで、これからは祭nine.の時代なので。みなさん、ついてきてくれますか?」(統威)、「令和の僕らはみなさんをつれて、もっともっと上に行きたい。一人でもたくさんの方と最高の景色を見たいと思っています」(寿希也)という年下組のコメントに、「言いたいこと全部言われた……」(頼我)、「おっきくなったなぁ」(天規)とボヤく年上組の様子も笑いを誘う。ラストナンバーはファミリー全員とのコラボで披露した、ボイメンの名曲「Chance for Change」。ボイメン小林が祭nine.の面々をハグして回ったり、祭nine.とBMKが一人ずつハイタッチを交わしたりと、最後までステージには温かな空気が流れていた。


 この日を振り返ると、ボイメン譲りのエンタメスピリットを持ちつつもダンスやアクロバット、殺陣などのパフォーマンス面に重点を置いた見せ方に、彼らの独自性が開花しつつあることを感じた。「祭nine.の夢はてっぺんをつかむこと」(頼我)と語っていた彼らは、新時代の令和でどんな活躍を見せてくれるのだろうか。


※高崎寿希也の「高」は「ハシゴ高」が正式表記。


■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。


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