「令和」の野球〜イチローの悲鳴が聞こえる〜

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2019年05月17日 11:44  ベースボールキング

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ベースボールキング

5月15日の日本ハム戦、楽天のブラッシュが左越えにこの試合2本目の本塁打となる2ランを放つ=楽天生命パーク
◆ 短期連載:「令和」の野球 第7回

 5月15日のプロ野球は、各球場でホームランが乱れ飛んだ。

 「令和」最初の伝統の一戦は、阪神打線が巨人のエース・菅野に5本のアーチを見舞って乱打戦を制す。楽天は球団史上最大となる8点のビハインドを追いつき逆転勝ち。内容を見れば、新外国人・ブラッシュが満塁を含む2発6打点に嶋、浅村にも一発が飛び出して9得点中8点は本塁打によるもの。西武は自慢の強力打線でソフトバンクに競り勝って3連勝。相手がデスパイネの2発で優位に立てば、負けじと主砲・山川の2発に外崎の逆転弾でアーチ合戦を制している。広島も鈴木のサヨナラホーマーで完全に勢いを取り戻した。この日は6球場で実に24本の本塁打が記録された。それにしても、ホームランが出過ぎていないか?

 平成最後の昨年あたりから、現場では「打球が異常に飛ぶ」という会話が多く聞かれるようになった。いわゆる「飛ぶボール」問題だ。NPBでは2011年から統一球の使用を決定、ボールの反発係数の規定値を定めている。ただし規定をクリアしたボールでも、係数の上限と下限では差が生まれるため15年にはその目標値を定め、均一化を図ろうとしている。しかし、業者が仮に上限一杯で統一球を供給してもお咎めはない。

 昨今のアーチ量産は飛ぶボールがすべてかと言えばそうとも言えない。大きな要因に球場の改造もあるだろう。

 今季からロッテの本拠地であるZOZOマリン球場では外野を最大4メートルグラウンド側に狭める改良工事を行った。昨年のチーム本塁打は両リーグワースト78本というピストル打線はどうなったか? 16日終了時点で38試合を消化し、42本の本塁打が生まれている。日本ハムから元本塁打王のレアードを獲得した事情も多分にあるが、このペースを維持するとシーズンでは158本のペースとなる。何と昨年より80本も増える計算だ。加えて、近年はグラウンドにより近い「エキサイトシート」を作り、野球の醍醐味を味わってもらおうとの改修も増えている。この結果、従来よりもファールゾーンが狭くなったために、ファールによるアウトが減っているのも打撃戦を色濃くする一因だろう。


◆ 連日のハラハラドキドキ!?

 打者のパワーアップも目覚ましい。筋力トレーニングの進歩により、フルスウィングの選手が増えて、ソフトバンクの今宮のような中距離打者が長距離砲に変貌を遂げている。そこにメジャーから「フライボール革命」がもたらされた。2017年にアストロズが本格導入した理論は打球の角度とバットスピードによって飛躍的に本塁打が量産できる、というもの。同年にワールドシリーズを制覇したことで、今ではメジャーばかりか、日本球界でも挑戦している選手は少なくない。

 投手にとっては、受難の時代。こうした風潮を踏まえると7〜8点のリードが安全圏とは言えないハラハラドキドキの戦いが令和の野球になる可能性は高い。

 守る側の対抗策と言えば、投手も筋トレを重ねて、160キロ台の快速球で抑える。データを駆使して打球方向を調べ上げ、メジャー流の極端な守備シフトで対抗するか。いずれにせよ、野球そのものが大きく変質しているのは間違いない。

 今春、不世出の大打者・イチローが現役を引退した。数々の心に残る言葉を残した会見で、現状の野球についてこんな風に語っている。

「頭を使わなくても出来てしまう野球はどうなんですかね?」

 投手の配球を読み、野手のすき間を抜く安打を放ち、レーザービームをかいくぐって盗塁を決める。こんなイチロー流のち密なプレーも、打球が外野手の遥か頭上を越していく時代には貴重がられない。平成のスーパースターの嘆きはともかく、しばらくはパワー全盛の時が続くのかもしれない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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